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新東京ビル/アーティストインタビュー(椿野成身)

こんにちは!YOMAFIG.です。

新東京ビルオフィスフロアにおいては、誰もが気軽にアートを楽しめる空間として、2024年5月にリニューアルがなされました。
アートに関心はあったけれど、あまり触れる機会のなかった方もより一層アート鑑賞をお楽しみいただけるよう、館内のアートをご制作くださったアーティストご本人に作品の見どころやアートの楽しみ方を伺ってみました!

椿野成身

1995年 大阪府生まれ
2020年 京都造形芸術大学大学院ペインティング領域油画 修了

近年の作品は、自身が撮影した写真からコラージュを作り、そのコラージュを元に絵画などを制作している。椿野の作品は、「視覚と記憶の揺らぎや曖昧さ」をテーマとし風景を描いている。

主な活動は、2024 What Cafe「東 京都展」、2023 MtK +「mtk+ vol.15 椿野 成身」2023 日本橋三越本店「five」、2023 haku kyoto「conversation」、2023 EUKARYOTE 「echo chamber」、2022 GALLERY KOYANAGI「6 Artists」

ー新東京ビルにかけられている作品について、どのような作品なのか教えてください!

今回、新東京ビルに展示させていただいている作品は、「visions diagram #36」です。視覚の図式化という意味で、あくまで図としてなので個別に意味合いがある訳ではありません。

この作品は、過去に見たことのある場所や物、あるいは個人的経験を通じて目の前の視覚情報を認識するときに起こる脳内のバグやデジャブだったり勘違いのような「視覚と記憶の揺らぎや曖昧さ」をテーマに絵画を制作しています。

visions diagram #36

もう少し詳しく説明すると、風景を見たときに頭の中で誤った結節点みたいなものができ、何年も前の記憶と眼前の風景は無意識に繋がってしまう。それは他でもなく、あなたが見ている現実の風景とリンクしてしまっている。その状況を絵画でも作れないかなということで、自身の意思がうまく反映されないまたは、自身の感覚器官から切り離されたカメラという目を使用し、記憶としての写真をもとにコラージュを作り、それを見ながら、絵画を制作しています。
コラージュというものの性質上、全く異なるAとBというものが、隣同士になるときに作っている私でも、予期しないぶつかりだったりとか、発想の外に立たされることがあります。それはまさに、私自身が作っているんだけれども、無意識に発生しているような、…その面白みがコラージュにはあって制作プロセスにいれています。

ー作品をどのように眺め、どのように楽しめば良いでしょうか

コラージュの中で様々な場所が組み合わさるように作るのですが、これは特定の場所でありながらどこでもない場所ということにもなるわけです。あと、コラージュを見ながら描く工程の中で、そのまま転写したりだとか、デジタル的な何か手法を使って描いているわけではないので、コラージュのイメージとは微妙に変わっているところだったり、全く異なっている部分があります。
これは、頭の中に浮かぶフワフワとしたどこか抽象化されたどこでもない風景イメージの再現ということでもあります。つまり、私たちが風景を見るまたは認識しようとする狭間の風景を描いています。
たくさんの人が行き交う新東京ビルで、物を見るということや認識するということは何なのかを考えるきっかけになるかなと思い、今回の作品を展示させていただきました。

「どこでもないどこか」を描き出すことで、新東京ビルを行き交う無数の鑑賞者の体験や記憶との間に固有の繋がりや回路を生み出す椿野さんの作品。コラージュというプロセスを経ることで抽象的でありながらも具体的な何かを想起させる作品に仕上がっていたのですね!
アートの特徴のなかでも、鑑賞者それぞれの固有性が浮き上がり 作品と結節するという点に特化した、無機物でありながらも有機的な作品で、まさにオフィスビルのようだなと感じました。

YOMAFIG.

ーすこしアートに興味が出てきたけれど、どこで作品を見たり買ったりすれば良いかわからない…そんな方におすすめのアートの楽しみ方やアドバイスがあれば教えてください!

近年、日本でもアートフェアやコレクターだった方が、ギャラリーを運営されているということもあって、非常に作品を鑑賞しやすい状態になっていると思います。

あとは、美術館やパブリックアートなど出会うところはたくさんあると思うので、購入するしない置いといたとして、作品を鑑賞して作家がどういう考えなのか、そういった情報はSNS等で簡単に見られる状況なので、作品鑑賞をできる場に足を運んでいただくことが重要だと思います。
また作品を鑑賞していくことや美術に関する本などを読むことで系統立てて作品を見ることができたり、話す言語ではない視覚言語や造形言語などを徐々に読み解けてきたり、そういうのがアートの面白さでもあると思います。

椿野さんにオススメの書籍をお伺いしたところ、『建築と触覚 空間と五感をめぐる哲学』(ユニス・パッラスマー / 著 小合田香織 / 訳)をご紹介してくださいました。
「装丁も格好良いことさることながら、本のタイトルの無骨さにしては大変読みやすく一日で読み終えることができます。直接的に絵画に関連する話がなされている訳ではありませんが、全ての芸術が建築に集約されるように読んでおいて損はない一冊だと思います。」とのこと。私たちも読んでみようと思います!

椿野さん、有難うございました!

YOMAFIG.

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