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新東京ビル/アーティストインタビュー(平野泰子)

こんにちは!YOMAFIG.です。

新東京ビルオフィスフロアにおいては、誰もが気軽にアートを楽しめる空間として、2024年5月にリニューアルがなされました。
アートに関心はあったけれど、あまり触れる機会のなかった方もより一層アート鑑賞をお楽しみいただけるよう、館内のアートをご制作くださったアーティストご本人に作品の見どころやアートの楽しみ方を伺ってみました!

平野泰子
1985年、富山県生まれ、神奈川県在住。京都精華大学芸術学部造形学科洋画専攻を卒業。作品の根底には「風景」があるが、絵の具を幾層にも塗り重ねる行為によって生まれる空間や現象に注目するようになる。
制作の中から生まれる眼差しや不確かなものに強度を持たせるために制作している。

ー新東京ビルにかけられている作品について、どのような作品なのか教えてください!

この作品では、風景を通して私たちの視点や記憶について考察しています。まず黄、赤、青の絵の具を幾層にも塗り重ねることで、単なる視覚的な風景以上の深さと空間を創り出しています。ここで描かれている風景は、日常的に目にする空や木々、夜の闇、そして私の幼少期を過ごした富山の山々など、身体的に感じた風景です。

筆跡や絵の具の擦れは、時間の経過や私たちの知覚の一時性を考察するよう促します。「知覚の一時性」とは、描くことで過去の特定の瞬間が蘇り、その瞬間に再び想いを馳せることを意味しています。絵を描くことで、過去の瞬間を再び体験し、その時の感情や記憶に触れることができると考えています。

制作過程で生じる絵の具のムラや奥行きに焦点を当てることで、私は作品に不確かさと見えないものに内在する力を強調しています。「不確かさ」とは、絵の具のムラや生じる奥行き、筆跡のランダムな動きなど、制作過程で意図的にコントロールされない要素を含んでおり、「見えないものに内在する力」とは、作品の表面には現れないが、潜在的に感じられる感情や記憶、時間の流れ、私の意図などを指しています。最終的なイメージだけでなく、絵を描くという行為そのものにも重きを置き、これらの手法や意識で制作しています。

ー作品をどのように眺め、どのように楽しめば良いでしょうか

風景をぼーっと眺めるように鑑賞していただければと思います。見る人によって興味の持ち方はそれぞれですので、強制はしませんが、絵画はただそこにあり、絵の具の物質から鑑賞者それぞれのイメージに繋がることを望みます。

Fragments 2401

「絵を描くことで、過去の瞬間を再び体験し、その時の感情や記憶に触れることができる」と言いましたが、普遍的な体験を作品に込めようとしています。見る人にとって鏡のような作品であれば幸いです。

一見、黄・赤・青の塗り重ねで描かれたとは思えない平野さんの作品。
基本的な色の層の重なりだからこそ、静的でありながらも迫力があり、いつか心の奥で体験したことのあるような感触や、重力が作品の奥に生じているような深淵さを生み出しているのかもしれません。

YOMAFIG.

ーすこしアートに興味が出てきたけれど、どこで作品を見たり買ったりすれば良いかわからない…そんな方におすすめのアートの楽しみ方やアドバイスがあれば教えてください!

気になった美術館やギャラリーの展示に足を運んでみることや、アートだけに限らず、好きな音楽や本の世界観と照らし合わせてみることが大切だと思います。自分のストーリーを作ることがアートの楽しみ方の一つです。分からないことを楽しもうと思えば行動力も湧いてきます。分からなかったことが何かのきっかけで思い出されたり、楽しめたり、理解できたりします。

私自身、アート鑑賞が大好きで、時間をかけて作品の理解が深まったり、閃いたように事象と結び付けて理解できたことが多々あります。そんな時、なぜか勇気をもらえた気がします。

作品を購入することについては、人それぞれの価値観があります。海外で「自分のケアのために作品を鑑賞し、購入する」という友人の話が印象的でした。
私たちが生きているこの社会は、すでに価値付けられたものやためになるもので溢れています。極端に言えば、アートは役に立たないものですが、だからこそ非常に豊かなものだと思います。役に立たない、無意味なことに価値を見出したり情熱を注いで行う営みがアートや文化なのかなと思います。

「ケアのため」というアート所有の動機や、「アートを美術に限らず、好きな音楽や本の世界観と照らし合わせてみる」という楽しみ方はとても素敵で、パーソナルでありながら普遍性を持つアイデアですね!
映画やファッション、インテリアなど、身近にある自分を築いてきたものを見つめ直すこともアートの一つの体験と言えるかもしれません。

平野さん、有難うございました!

YOMAFIG.


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