新東京ビル/アーティストインタビュー(松村咲希)
こんにちは!YOMAFIG.です。
新東京ビルオフィスフロアにおいては、誰もが気軽にアートを楽しめる空間として、2024年5月にリニューアルがなされました。
アートに関心はあったけれど、あまり触れる機会のなかった方もより一層アート鑑賞をお楽しみいただけるよう、館内のアートをご制作くださったアーティストご本人に作品の見どころやアートの楽しみ方を伺ってみました!
ー新東京ビルにかけられている作品について、どのような作品なのか教えてください!
この作品のタイトルは「Lonely Planet」としました。孤独な星、海外で読まれる旅のガイドブックと同じ名前です。
都会のビルに飾る絵とご依頼され、直感的に「では都会ではない景色を描こう」と思いました。とはいえ私は抽象絵画を描いているので、具体的な景色は描きません。出来ることは、人の感覚を引き出せるように、色や形、素材感などで絵を描くことです。
さて、私はどんな景色を目指したでしょうか。
考えたのは、沢山の人のいる大都会で過ごしている人々、でも究極的にはみんな一人で人生を歩まなくちゃいけない。
私は子供の頃はスキーで有名な田舎で育ちました。朝、一番に新雪のゲレンデを滑ると、私はまるでどこか違う星にきたみたい、と思いました。孤独で寂しい気持ちと新鮮な景色にワクワクする気持ちです。昼前になるとゲレンデはすっかり賑わって楽しいいつもの景色が戻ってきます。こういう事は束の間の、私の心の旅行でした。
今回は、自身の雪景色の体験をベースに、どこかこの地球と違う景色のように描きました。
絵をみてくださった人が、日常とは違う感覚世界へワープしてくれたらいいなと思います。
ー作品をどのように眺め、どのように楽しめば良いでしょうか
上記のことに加えて、もう少し私の背景と、表現の意図の一部をご紹介します。
私の作品の根底には、デジタルネイティブ世代でありながら、長野県野沢温泉村という山間の豪雪地帯で育った感覚が影響しています。
野沢温泉村は、山の傾斜地にある集落で、棚田、広大な山に囲まれ、住居と温泉宿がひしめき合って建っています。また冬には雪に覆われて景色が一変します。そこで過ごして培われた感覚は、絵に強く影響しています。
例えば、幼少期からスキー教育や雪山で過ごし地形を体感したことによって、作品の中に絵具を盛り上げて地形のジオラマのように表現するようになりました。
それに加えて、絵画の探求のなかで興味を惹かれたアポロの月面地表写真の強い影と光が新鮮に感じられた体験が合わさり、絵具の凹凸へ更に陰影をつけて強調する表現方法を取るようになり、より触覚的な見た目に仕上げています。
一方、ドットやピクセルの箇所はシルクスクリーンという版画技術で画面に直接刷っています。図像は火星などの地表の画像を粗く引き伸したもので、自らの手でつくる絵画上の盛り上がった地形と対比して、”存在を知っているが自分の肉体で行くことはできないデジタルイメージ”、”遠いまだ見ぬ風景”の象徴として使用しています。絵画のなかに異なる空間と、イメージ世界があるような感覚です。
この、絵具の盛り上がりによる地表と、平面的に刷られた地表の二つが、ひとつの画面の中にあるように、私は相反するようなことを絵に入れるのが好きです。
それらがなんだか絶妙なバランスで、バチバチとしながら存在することが興味深いと思います。
ーすこしアートに興味が出てきたけれど、どこで作品を見たり買ったりすれば良いかわからない…そんな方におすすめのアートの楽しみ方やアドバイスがあれば教えてください!
私自身はそもそも、アートを見るのが好きですが、ここ最近覚えた作品を見る力を爆上げする方法があります。
それは、自分も体験してみる!ということです。
私はこの間、陶芸と版画の体験会に行きました。それなりに楽しんでいたジャンルですが、体験会で技法を知り、素材に触れ、自分で作ってみると、今まで見ていた作品が全く違う解像度で見えてきます。「この作品、、見える、見えるぞ作家の手つきが!こんな超絶技巧!巧み!」とか「この作家、あえての発想、守破離!さすが!」などと自分事のように楽しめます。知っているからです。(体験会でちょっとだけね!)
陶芸や版画、絵画、写真などは美術の中で定番ジャンルなのでどういうものか、知ってるとかなり楽しいですが、現代アートは、社会問題や歴史など様々なテーマを取り扱います。
ですから、そういうザ・アートの体験会じゃなくても、幅広く新しい事にチャレンジすることが、自分の経験値が上がって、見る目も変わっていき、アートをもっと楽しめるんじゃないかなと思います。
私も今はもっとアートを楽しみたいので英語の勉強中です。海外へ、アーティストレジデンス行きたいな!みんな、人生を楽しんで、アートを楽しみましょうね。