新東京ビル/アーティストインタビュー(三瓶 玲奈)
こんにちは!YOMAFIG.です。
新東京ビルオフィスフロアにおいては、誰もが気軽にアートを楽しめる空間として、2024年5月にリニューアルがなされました。
アートに関心はあったけれど、あまり触れる機会のなかった方もより一層アート鑑賞をお楽しみいただけるよう、館内のアートをご制作くださったアーティストご本人に作品の見どころやアートの楽しみ方を伺ってみました!
ー新東京ビルにかけられている作品について、どのような作品なのか教えてください!
この作品は《The Face》というタイトルの油絵です。ものを見るときに正面からのみでは捉えることができない三次元的な要素や光を、絵画によってキャンバス上に留めてみようという試みをしています。
タイトルは直訳では「顔」という意味ですが、この絵ではいわゆる顔を直接的な表現で描いているわけではありません。この作品では絵の正面性というテーマを含みながら、自分自身の過去の制作において絵を支える構造体であるキャンバスや木枠に対してBodyという言葉を使ったことからも、画面に対してFaceという言葉を選んでタイトルに使っています。
もともと私は、絵によって光を捉えることに強い興味がありました。そのためにさまざまなモチーフを観察して制作を続けてきました。最初は金属製のアクセサリーやワイングラスのへりに強く反射する光や色彩の観察から始まり、やがてより特徴的な観察対象としてホログラム加工がされたシートなども用いるようになりました。
シートを傾けると、それぞれの角度や方向から異なる偏光色を得ることができます。その観察の繰り返しによってできた作品がこの《The Face》です。
油絵は、絵の具が乾くまでに時間がかかります。表面を乾燥させるには平均して3日から7日程度必要です。その乾かない期間にさまざまな角度から見た色彩を編み込むように描き重ねていきます。そうすることで、様々な角度にモチーフを傾けることによって得た光や色彩を絵画の正面に定着させて、モチーフが持つ内在的な要素や環境的な光について表現できるのではないかと考えたのです。
少し複雑な表現をしてしまいましたが、「キラキラしている」という言葉で表されるような光や状況を、いかに止まっている絵というメディアで表現するかを考えていたときに作った作品とも言えると思います。
ー作品をどのように眺め、どのように楽しめば良いでしょうか
絵の全体が見える正面に立ったあと、ぜひ絵に近づいて間近で見てみてください。どのような色が、どのように重なっているかを見たあとに、またその絵の全体をご覧いただけたらと思います。眺めるように見るのであれば、絵が見えるところで、少し身体が落ち着ける場所を探すのも良いかもしれません。
楽しみ方は決まっているわけではありませんが、見る人それぞれに何か新しい発見があれば嬉しいです。
ーすこしアートに興味が出てきたけれど、どこで作品を見たり買ったりすれば良いかわからない…そんな方におすすめのアートの楽しみ方やアドバイスがあれば教えてください!
作品を見ることには、作品自体を楽しむことと別の軸で、さまざまな体験を重ねる楽しみもあると思います。
同じ作家の作品を別の場所で見ることは多くあると思います。また、何年も経ってから、かつて見た作品と再会することもありますし、本で見て知っていた絵の実物を目の当たりにすることもあります。
会期がある会場の展覧会であれば、同じ会場で別の展覧会を見ていくことになるでしょう。
私の場合は、行ったことがある場所の風景画に出会うこともありました。ふと入ったお店に、美術館で見た陶芸作品がさりげなく飾ってあったこともあります。
作品を見るために向かう場所は美術館やギャラリーが主となりますが、その体験を重ねていくうちに、生活の中でも作品が目に入ってくることが増える気がします。
作品を購入することに関しては、例えば私自身の話にはなりますが、初めて私が作品を買ったのはある作家のさまざまな都市で行われる展覧会に通い続けて、約4年が経ったころのことでした。作品を所有することには責任も伴いますから、購入を決めるのにも時間がかかることが多いかもしれません。作品をコレクションすることには、それまでの自分自身の選択が反映されるような感覚もありました。ただ一つ確実に言えることは、コレクションして後悔した作品は一つもないということです。
作品にも展覧会にもさまざまな楽しみ方や関わり方があると思います。体験を重ねることで自分だけの軸ができていくことは、鑑賞においても購入においても楽しみの一つとして捉えることができるかもしれません。