動いている塔
巨大な動くガンダムを見て以降、なんだか無性に太陽の塔が見たくなって。
やっと時間がとれたので、大阪の、万博記念公園に行ってきました。
しばらく立ち止まったりしながら、時間をかけて、ぐるりと一周しました。
太陽の塔って、なんだかよくわからなくて。
幼いころ、初めて見たときは、「怖い」「気持ち悪い」と思いました。
でも、何度か目にするうちに。
あと、たぶん自分自身もいろんな経験を重ねていくうちに。
「かっこいい」と思うようになりました。憧れるようになりました。
ガンダムみたいには動かないけれども、太陽の塔って、すごく「動いている」ように見えるんです。
具体的には、「何かに立ち向かっている最中」のように見える。
何か、正面からすごく強い力にさらされて、それでもぐっと踏ん張って立ち向かっているような、そんな感じに見えます。
あの歪んでいる「太陽の顔」と、胸を張るような姿勢、後ろに流されるように突き出ている腕のようなもの、それから、体が裂けて血が流れているように見えるような部分が、そう感じさせるのかもしれません。
それから、首を伸ばして、じっと遠くを、あるべき未来を見据えているような、「黄金の顔」も。
「そこにとどまることができている」のが、動いている証拠、というか。
たぶん、流されてしまうはずなんです、そんな強い力に正面からさらされてしまえば。ふつうは。
でも、ふんばっている。とどまろうと、踏ん張り続けている。常に。
だから、太陽の塔は「動いている」ように見えるんだと思います。
太陽の塔の背中側には、「黒い太陽」の顔があります。
この顔、見上げていると、なんだかぞくぞくします。
すごく怖い。そしてかっこいい。
冷たくて硬い、研がれたナイフのような鋭さを感じる表情です。
正面から立ち向かい、無抵抗みたいに腕を上げて踏ん張りながら、背中にこの表情を湛えている。
社会の中で、人と人との間で生きていこうとすると、何か強い力が自分を押し流そうとしてくる、そういう場面には、幾度も出会います。
でも、太陽の塔を見上げると、勇気が湧いてくるんです。ふんばってやるぞ、っていう気持ちになります。
それはたぶん、この太陽の塔が、まさにそういう力に立ち向かっている、踏ん張っている、その姿を見せ続けてくれている、造形芸術だからなんだと。
そんな風に感じています。
なんだか現実が、やってられないことばっかりだから、日常でも勇気をもらおうと、自分へのお土産に、マグカップを買いました。
昨日から、コーヒーとかを淹れながらウキウキ使っています。
また、見に行きたいと思います。何度でも。
ずっとそこで踏ん張っている、太陽の塔を見に。