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明日も、明後日も、ずっと、


「電話ボックスはロマンスを運ぶの。」

微笑みながらそう言う祖母の姿が脳裏をよぎる。


幼い頃の私は、おじいちゃんっ子だったらしい。
祖父は、私が幼稚園に入園する前に他界したため、覚えていることはもう少ないが、記憶の中で頭を撫でてくれた大きな手は祖父のものだったのだろう。
朧げな記憶の中の祖父に少しでも近づきたくて、学生時代の私は、祖母に祖父のプロポーズを言葉を尋ねたことがあった。
結局祖母は最期まで教えてくれなかったが、「秘密よ。」と笑った後に、いつもお決まりのように言っていた、「電話ボックスはロマンスを運ぶの。」と。


遺品整理をする手を休め、祖母の結婚指輪が収まったケースを手に記憶に耽っていると、ふと指輪の台座の下から紙がはみ出していることに気がついた。
不思議に思って取り出してみると、無骨な字で「*2*21521149243441212111513##」と書かれている。

「あら、コメニじゃない。」
一緒に遺品整理をしていた大叔母が、私が見つめている紙に気づいてそう言った。
「昔は公衆電話からショートメッセージを送ったりしたのよ、ポケベルみたいに平仮名を数字に置き換えて。*2*2って打ってからメッセージ、そして最後は##で終わらせるのが決まりでね、始めが*(コメジルシ)と2だからコメニ。懐かしいわ〜。」

大叔母の言葉に、急に祖母の「秘密」と手の中の紙が繋がった気がした。

「ちょっと駅に行ってくる!」
私はそう叫んで家を飛び出した、駅前にあるのはずの電話ボックスに向かってーーー。


数十分後、私は電話ボックスから届いた自分からのSMSを開いて笑みを零すことになる。


「おかえりって言い合おう」


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最後までお読みいただき、ありがとうございます。

電話ボックスでSMSが送れるというサービスは、今でもNTTさんが提供しているらしいです。
災害時などの緊急時にインターネットが使えなった場合など、いざというときにあると便利な機能だな〜と思っています。


☎️せっかくなので使い方を!

①ドコモの「SMSセンター」に電話
TEL: 090-310-1655(有料)
②音声ガイダンス+従って、送り先の電話番号を入力。
③次にメッセージの入力。
まず「*2*2」を入力し、あとは2桁の数字で1文字を表す、いわゆる「ポケベル打ち」でメッセージを入力したら、最後に「##」を押して終了。

ポケベル打ち…?なにそれ…?という方は、画像を参照してください!


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