くるり アンテナ(好きなものがたり4)
くるりのアルバムの中でも特に好きな一枚。
自分のなかのロックという概念に色んな意味で深みをもたらしてくれたアルバムの、特に好きな3曲についてまとめて書く。
『グッドモーニング』は「夜行バスは新宿に着いた」という歌詞だけで自分の中では不動の旅ソングになっている。夜に聴いても早朝に聴いても素晴らしい。実際に夜行バスや始発間際でまだ暗く人気のない電車内で何度も聴いた。基本的に一人旅しながら聴くけど、曲の中ではとなりに人がいて、アルバムの雰囲気と曲調も相まって哀愁たっぷりな印象なのになんだかじんわり幸福な時間。これからも旅のテーマであり続けるだろう。
『ロックンロール』
この曲にロックンロールというタイトルをつけた岸田繁に一生ついていきます。バンドをやっていてこの単語を出しちゃうのは、なんか禁じ手というかそうとうに背負わせるものがあるんじゃないかと思うのだけど、それをこの曲にあてているところが好き。スピッツの『恋する凡人』の「ロックンロールの微熱のなかで」を思い出したけど、あの曲は最後にこれ以上は歌詞にできないとも言っていて反則しまくってるな。まじで好きです。それはさておきロックンロール。
ここに全てが詰まっている。
そして高まる疾走感とともにやって来るサビ、「晴れわたる空の色 忘れない日々のこと 溶けてく景色はいつも こんなに迷ってるのに」。迷ってるのに。あまりにも美しい。
昔はなんかロックっぽくない曲なのになんでだろ?と思っていた。このビートが、この素直さがこそなのか?そう思わされる。アウトロが永遠に続いてほしい曲のひとつ。
『How To Go <Timeless>』
here we go rock and roll!!!!! アルバムに収録されているバージョンは(おそらくは当時のドラムのクリストファーによる)そんなシャウトから始まる。
こんなにゆっくりでいて力強くてカッコいいロックがあるのかよ。いまやくるりで一位二位を争う好きな曲。(もうひとつはjubileeかなあ)
さっきまで気にしてたhow to play the guitarなんか構いもせず、守れない約束ばかりして過ぎていく毎日、それでも突然何もかも変わってしまうことの怖さ。
まったり待ったり、とか何いうてんねんて思ったりもするけど、でも僕は君の味方だよ、という一言だけで、全て救われたような気持ちになる。小さな吐息を感じるラストも本当に好きでさ グッドモーニングと対応するかのように、となりで眠る人の寝顔を見守る瞬間ってもっとも強く生きていこうとする力が湧く瞬間だものね。この中華食ってるMVも大好き。『三日月』のMVしかり、中華食ってるMVが大好きです。そんなジャンルがあるのかよって感じだけど。
誰にでも書けそうなストレートな言葉がそこにあるだけなのに、それが出てくるまでのとんでもない量の苦しみが察されるような厚みといいますか。それがくるりのすごいところだと思っている。
でも僕は君の味方だよ、なんて誰でも言えると思うじゃないですか。でもくるりには不思議な説得力があるんだよ。そこにたどり着くまでの苦労が偲ばれるのですよ。ギラギラしてない、したたかでしなやかな芯の強さがある。それをカッコいいと思う。
ああくるりはいつも言いたいことを言ってくれるなあ。でも言ってもらいっぱなしじゃいられないから、そういうやさしさを身近な人には届けたいもんです。