田中ルル

のんびり書いてます。 とても短いお話を書いているので、通勤や通学の時間などによかったらどうぞ!

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マガジン

  • 不死身シリーズ

    不死身シリーズという短編小説です。 ”欲→氷菓→春風”という順番です。 もちろん順番で読まなきゃいけないというわけではなく、どこから読んでも大丈夫だと思います!

最近の記事

[小説]失いかけている世界で

朝スマホの目覚ましで起きると今日の予定を確認する。 ああ、今日か。一昨日突然、友人に今日の夜会う予定が入ったことを思い出す。仕事が終わったらあいつに会えるのか。 顔を洗ってテレビをつける。コーヒー豆をミルに入れて挽きながら、テレビで天気予報を見る。今日は晴れ、快晴らしい。 「本日も皆様に画面越しではございますが、天気の情報をお届けすることが出来ました。ありがとうございました。私も皆様同様、この一瞬の幸せを噛み締めて生きていこうと思います。本当にありがとうございました」 いつ

    • [小説]音のしないSOS

      タイムラインにとあるニュースが流れてきた。”△△県、教育委員会、小学校生徒の日記をAIで解析し悩みや不安の早期発見へ” 何言ってんだこれ、と思いながら記事の本文を斜め読みする。要するに小学生の児童に日記を書かせて、それをAIで解析して児童の心理状態をチェックするらしい。 全くこれだから教育委員会は何も分かってない。そんなので心の状態を読まれて見る側の気持ちを考えることも出来ないのだろうか。気持ち悪いに決まってる。自分が少しおかしなこと書いただけでサイコパス扱いされるなんて考

      • [小説]クイズ

        ーーこんにちは。 おう、今日もよろしく ーー今日もトレードマークの革ジャンですね。 そう、ライトニング。俺の人生はロックでパンクだからね ーーさて、昨今、革命的イラストレーターと謳われているxxさんですが、今日は最新作のイラストについてのインタビューについてです うん、何でも聞いていいよ。 ーーではまず、絵が左右対称に二つに別れているみたいですがこれはいったい何を意味しているのでしょうか。 これはね。俺の好きなものと嫌いなもの、いや懐疑的なものかな、を表している

        • [小説]悪魔の作品

          目が覚める。午後1時。 昨日も寝ないで漫画を描いていたらいつの間にか朝になっていた。まあ金曜日だし今日はバイトもお休み。いくらでも好きに時間を使えるから問題ない。 起きてぼーっとしたまま顔を洗い、台所に行ってお湯を沸かす。お湯が沸くとコップにやっすいインスタントコーヒーの粉末を入れてお湯を注ぐ。狭い我が家にコーヒーの匂いが漂う。 火傷しないように一口コーヒーを啜り、机の前に座ってパソコンを起動。 先週、ネットにあげた漫画を見てみる。 そう、私は漫画を描いている。漫画を

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        • 不死身シリーズ
          3本

        記事

          [詩]雨の中歩く

          この世界は地獄なんだ。 私たちはこの地獄の世界で生きている。 それは最悪なんだろうけど、でも癒しでもあるのかもしれない。 私たちはこの地獄で自分を傷つけ、半殺しにして快感を得ているのかもしれない。 そうじゃないと、生きていられないのかもしれない。 きっとここからは逃げられない。 この先もこの世界で生きていくんだ。 この世界で誰かとすれ違ったり、傷つけあったり、絶望したりして生きていくんだろう。 それはまるで止まない雨の中を傘をささずにゆっくりと歩いていくようなもの

          [詩]雨の中歩く

          [小説]欲しい理想

          「お疲れさま。やっとプレゼン終わったね。それで今日クラスの打ち上げっていうか飲み会があるんだけど、良かったらどう?」 「そうなんだ。あ、えーっと、今日バイトあるんだ。だから今回は無理かも。誘ってくれたのにごめんね」 「ううん、わかった。じゃあ次の機会にね」 そう言ってみんながいる席の近くに戻る。 彼は荷物を片して教室を出て行った。 「な、だめだって言ったろ」 「そうだよ、いつも来ないのに、わざわざ声かけるとか和希は優しいね」 みんなが俺にそう言う。 「まあ、俺も多分来ないだ

          [小説]欲しい理想

          [小説]世界の漫画

          漫画が売れた。 小さい頃から絵を描くことが好きだった。小学生の時に自分で描いた漫画を友達に見せたら、みんな好きだと言ってくれて、喜んでくれた。とてもとても嬉しかった。そこから私の夢は漫画家になることだった。 夢を叶えるためにたくさん努力した。夢のために全てを捨てた。犠牲にした。全ての時間をより良い漫画を描くために費やした。絵の勉強はもちろんしたし、ありとあらゆる先人達が描いた漫画を読んだ。漫画だけでなく、映画や小説、音楽も漫画のためになると思いたくさんの作品に触れた。小学

          [小説]世界の漫画

          [小説]日焼けしてる1ページ

          つまんないね。 つまんない。 つまんねえ。 何もかもつまんねえ。 何か終わってもまたもうどうしようもない何かが来る。 こんなのもう詰んでるじゃん。 そう思いながら私は机の中の教科書を鞄の中に入れて帰る支度を始める。 教室中の他のクラスメイトも各々自分達の放課後の準備を始める。 きっといつかこんの風景が懐かしく思える日が来るのだろうと容易に想像出来る。 何てったって今の私でさえ懐かしくもないのに懐かしいと感じるような風景だから。 もうこの瞬間は戻ってこない、そ

          [小説]日焼けしてる1ページ

          [小説]ゴッホ

          〇〇へ ここ数日僕はゴッホについて調べているんだ。君も知っているだろう、ひまわり等を描いた画家のゴッホだよ。 僕ももちろん絵画には明るくないとはいえゴッホっていう名前は知っていたさ。世界で一番有名な画家の一人と言ってもいいはずだからね。ちなみに僕は星月夜って作品が好きかな。とても幻想的で素直に綺麗な絵だと思うよ。 そんな僕が今更なんでゴッホにハマったかというとその理由は彼の人生にあるんだ。正直に言うと僕はゴッホの絵よりも彼の人生にハマったと言ってもいい。こんなこと言うと

          [小説]ゴッホ

          [小説]作品

          ○○へ 作品ってなんだ。 そんなことを最近考えている。 世の中には作品として生まれたものと作品になったものがあると思う。 例えば全集とかがわかりやすいかもしれない。 全集というものには作家が生涯に書いた全てのものが入っている。世に出した小説も誰かに向けた手紙も入っている。 ではその中の小説は作品だろうか。おそらく多くの人は作品だと答えるだろうし、作家自身も作品だと答えるだろう。 ではその前方の中の手紙は作品だろうか。これは人によっては作品だと答えるし作品ではないと答え

          [小説]作品

          [詩]散歩

          咲かせや 咲かせ 久しぶりの外気 刺すような冷たい風  風が強い 頭の上は青空で左前方は灰色雲 時々雲のスキマから顔を出す太陽がその場を強く照らす 風が強い 冷たい風なのにどこか温かい。なんとなく春が近づいてきている事を予感させる風。 春が恋しい。あのくすぐったいような春風で撫でて欲しい だけど僕は何も出来てない 何も進んでない 何も変わらない。 本当なんだ 止まっていたように見えても進んでるなんて嘘だろ 本当は止まっているのに時々進んでいるような気がする時が

          [小説]不死身-春風

          前の話 私の生活はまた変わった。 随分前に仕事も辞めて出掛けることは滅多になくなった。生活保護を受けながら公営住宅に住んで一日中ベッドの上から動くことはなくなった。 私たちの体は食べることを必要としない不死身の体だから何日でも動かなくても食べ物を食べなくても死ぬことはないし問題はなかった。公営住宅に住んでいる人は私のようになんらかの理由で自分の生涯に絶望した人が多く、ほとんどの人は私と似たような生活を送っていた。 だから最近隣に引っ越してきた人は少し変わっている。 その

          [小説]不死身-春風

          [小説]不死身-氷菓

          前の話 どれくらいこんな生活を続けてきたか、もうわからない。仕事を始めて数百年は経っただろうか。 あれから私の生活は変わって色付き始めた。たくさんの同僚、友人に囲まれ、パートナーとして過ごしてくれた人も何人かいる。みんなでどこかに行ったり、一緒にパーティーをしたりして楽しく過ごしてきた。 今日はいつもの朝だ。いつも通り支度をして仕事に出掛ける。朝、コンビニで仕事のお供としてチョコレートを買った。実の所私はチョコレートが大好きだ。コンビニを出るとき、出入り口の付近で一人の

          [小説]不死身-氷菓

          [詩]夜の星

          「星は夜に輝き、夜見える」 なんて前向きな発言なんだろう。 どんな所からでも希望はあるみたいな感じだ。 僕はそんな根性ないよ。もう今だけで精一杯でしんどいのさ。 でも今は過ぎていく。運が良ければきっと普通の生活を手に入れることが出来るのであろう。 もしかしたら今見えてるものが見えなくなるのかもしれない。何者でもない僕が見えていたものが何者かになれた僕にはどう頑張っても見えなくなってしまうのかもしれない。 それってどうしようもなく尊い時間を僕たちは今生きてるってことじ

          [詩]夜の星

          [詩]言いたいやつには言わせとけ

          人生、間違いばっかり。 最近そんな事ばかり考えている。もしあの時、別の決断をしていたらもっと違う今があったんだろう。 戻りたい。やり直したい。高校生から、いや中学生から、もしくはもっと前から。もっと前から。 もし戻ることが出来るならもっと学校生活を楽しんで、一生懸命勉強して、ちゃんとした大学に入って、ちゃんと週何回かバイトしたり飲み会に行ったりして、ちゃんとそこそこの会社に就職したい。 そんな事ばっかり夜寝る前に考えて妄想して眠れない。 少し客観的に見るとありきたりな普

          [詩]言いたいやつには言わせとけ

          [小説]不死身-欲

          私たちの体は不死身だ。肉体が朽ちることもなく死ぬ事もない。文字通り永遠の命を手に入れた生物だ。 生物学的にはホモサピエンスとかいう私たちの体そっくりな生物が進化した結果が今の私たちではないかと推察されているが、はっきりしたことはわかっていない。 そもそも私たちの世界はわかっていないことが多すぎる。一体私たちはどこから来たのか、どうやってこの社会が作られてきたのかもはっきりとはわかっていない。ちゃんと生真面目な人が紙に書いておけば済むはずなのに呆れる事に、それすらも私たちには

          [小説]不死身-欲