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言葉を売った男

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2019年に演劇脚本として書いた作品のノベライズ版です。
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記事一覧

「言葉を売った男」水村ヨクト│スピンオフ短編「言葉を買った女」

「言葉を売った男」水村ヨクト│スピンオフ短編「言葉を買った女」

「言葉屋に行くわよ」

 母親の口から聞き慣れない単語が出てきたことよりも、母親から自分に声を掛けてきたことの方が、聖にとっては驚きだった。母親は、普段自分に自分から話しかけるような真似などしないのに、と。

「……言葉屋、って?」

 母親曰く、貧困層や言葉を使う仕事、言語障害者のために言葉を売買する店のことらしい。それでも聖は分からなかった。

「な、んでそんなところに」

 問う聖の腕を掴み

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「言葉を売った男」水村ヨクト│最終第5話「言葉を売った男」

「言葉を売った男」水村ヨクト│最終第5話「言葉を売った男」

 しばしの沈黙に、まるで部屋の時間が止まってしまったようだった。しかししっかりと壁掛け時計の秒針は時を刻んでおり、怜はこの何とも言えない時間が進んで実感していた。そして、怜の口がゆっくりと動き出す。

「言葉を……」

 はい? と聞き返す関。怜はそれに怯むことなく、腹を括った様相で続ける。

「言葉を、買い戻させてくれないか」

 ほう、と関が感心の声を上げた。

「構いませんが、資金はあるので

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「言葉を売った男」水村ヨクト│第4話「人を形作るもの」

「言葉を売った男」水村ヨクト│第4話「人を形作るもの」

「……彼女が遺体で見つかったんです。ここから一番近い海岸沿いで」

「――は?」

 怜は、それ以上言葉が出てこなかった。

「警察では入水自殺の線で捜査していまが、念のためこうして聞き込みをしております」

 弓野の言葉は聞こえているが理解できる状態ではない怜。目が眩み、頭を振るわせて正気を保つ。

「ちょっと待って……ください。状況がよく……」

 無理もありません、と弓野はフォローを入れ、手

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「言葉を売った男」水村ヨクト│第3話「思い出せない何か」

「言葉を売った男」水村ヨクト│第3話「思い出せない何か」

 一週間があっという間に過ぎた。怜と白柳はあれから会うこともなかった。
 怜は考えていた。あのファミレスで込み上げてきた自分の気持ちを何と言葉にすればよかっただろう。自分自身でもそれが分からない気持ちが、果たして彼女に、白柳に伝わったのだろうか。
 ……いや、きっと伝わったはずだ。
 怜は自分を言い聞かせるように、頭の中で反芻する。そう、白柳は最後、「生きたい」という希望を目に灯していたはずなのだ

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「言葉を売った男」水村ヨクト│第2話「ごめんとありがとう」

「言葉を売った男」水村ヨクト│第2話「ごめんとありがとう」

 言葉屋からの帰り道、怜と白柳は近くのファミレスに立ち寄った。寂れた商店街に隣接しており、さらに今日が平日であることも助けになってか、客はちらほらとしかいなかった。

「結局、言葉売ることにしたんですか?」

 怜の正面に座る白柳は、頬杖をついて問うた。怜は溜息を吐いて答える。

「話聞いてなかったのか? まだ売ると決めたわけじゃない。とりあえず見積もってみるだけだ」

 白柳の相槌が止まる。怜は

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「言葉を売った男」水村ヨクト│第1話「言葉を売りませんか?」

「言葉を売った男」水村ヨクト│第1話「言葉を売りませんか?」

「ごめん、本当に……俺、不甲斐なくて」

 賑わうカフェに似つかない暗い声色。

「で、でも沙耶ちゃんを大事にしてる気持ちは本当だから」

 誠心誠意――に聞こえるように、言葉を並べる。

「……噓でしょ。怜。もう二年も付き合ってれば分かる」

「い、いや嘘じゃないって! 確かにバイトクビになった一か月も黙ってたのは悪かったって思う! でもッ……」

 額に冷や汗。もうどれだけ言葉を並べても取り繕

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