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Schneiderの万年筆には魔力があるというお話

突然だが、ちょっとクセになる書き味にハマっている万年筆がある。好きは好きなのだが非常に不可解な現象が起きるため、私の中ではちょっと特殊な立ち位置となっている。

今日は、そんな不思議な魔力を持つSchneider製の万年筆について語りたいと思う。

Schneider406との出会い

初めて手にしたSchneiderの万年筆は、画像にある赤い万年筆で「406」という型番の商品となっている。

近所の本屋さんで雑誌と一緒に並んでいた。どうやら文具の雑誌に掲載された関係がある都合で横にあったようだ。

この時私は、別に万年筆を買うつもりで本屋を訪れたわけではなかったのだが、その本屋さんにもっと万年筆を取り扱って欲しいという思いがあり、Schneiderか……持ってないな。2000円か……別に買ってもいいな、安いし。という、とても薄い気持ちで購入した。Schneiderって何か、響きもカッコイイし、くらいのものだった。バイオレットを選んだのは、家に貰い物で保管していたPilotのインク「躑躅」がそっくりの色で、そのインクを入れようという思惑があった。

強いて言うならニブがEFなのが良かった。海外のEFは私が望んでいるほど細字ではないだろうが、ジャバジャバインクが出る、ぬらぬら系は苦手なので絞られていそうな細字仕様の方が私には有難い。

まぁ、ひとつひとつの思いは小さなものでしかなかったが、合わさった結果、知らないものに挑戦するワクワクを2000円で買うのもいいな、といった具合だった。

早速書いてみる

朝活書写で書いたもの。毎日その日の気分で色々万年筆が使えるのも楽しい。

インクを入れて、書いてみて、本当に色彩雫の躑躅と同じ色だなぁ、なんて思ってニッコリした。

しかし、それだけだった。万年筆に期待するのは、その書き味だ。相棒と呼べるくらいのお気に入りの万年筆は、試し書きの一画目で「うわっ、最高」となる。そして思わずにやりとしてしまう。それくらい心を動かして来る筆記具だ。

だが、406はそうではなかった。書いてみた時の感想は「ふーん、こんなか。」といった感じだった。特に言うことがなかった。インクもしっかり出るし安定感があって書きやすいな。とは思ったので別に悪く思ったわけではないのだが、特別扱いしようという感情もなかった。

あと、自分でインクの色とあわせて買っておきながら何なのだが、この躑躅という色のインクは結構強い色なので、あまり使いやすくはない。長文をこの色で書いてしまうと目がチカチカしてよろしくないのだ。

そんなわけで、まぁたくさん使う色じゃないからな……とか何とか思いながら、ペン立てに入れ、暫く触ることは無かった。

それからしばらくして……

日常使いしやすいのは黒や茶系なので、普段手帳や日記を書くのはどうしてもそのあたりの色が入っているお気に入りの万年筆になる。そのため、購入してから数週間はペン立てにあるだけだったはずだ。

ただ、ふと、デスク前でメモしたいことがあり、偶然さっと手に取れるところにあったのが406だった、というタイミングがあった。

長文を書くには(インクの色が)向いていないがメモを取るくらいならと思って何気なく筆記した時だった。

………あれ?

数文字書いて、手を止める。
なんだこれ。いや……こんなだったか?

そう思ったが一旦否定してみる。
いやきっとそんなだったはずだ。だってそうだろう。確かに万年筆は自分の手に合わせて変化し、自分好みの書き味に変化すると言われる道具だ。

だがしかし、それは実際に自分の手で使って、ペン先が変化してのことであり、ペン立てに立てておくだけで変化するなんて、そんな一晩寝かせた何かのような話は聞いたことがない。

最初は好きじゃないと思っても、好みが変わって後から好きになることもあるなんて話も聞いたことがある。しかし他の好みが変わっていないのにたったの数週間で好きになるものだろうか。

例えるなら新雪を踏みしめた時のような感触だった。
目隠しした状態で、土の地面だと思って踏みだしたら、薄い新雪だったときのような「おぉ!?」という感じだろうか。

まぁそんなことをした人はそんなにいないだろうし、そもそも書き味の話をしているとは思えない表現になっている自覚はあるがイメージの話だ。

というのも、仕方ないこととは言え非常に気になるのだ。万年筆を褒める際に「インクがスラスラと出て」「持った感じがよく」「字が綺麗に書ける」「気持ちよく書くことができる」などなどなど。全部一緒に聞こえるワードしか出てこなくて、結局よほど感覚が似ている人のアドバイスでない限り、自分で使わなければ分からないという話になる。

かといって私の表現方法に意味があるかと言われれば、非常に疑問が残る部分があるが、大多数の方が言うのと同じことを言っても仕方がないので自分の表現を探してみた。

そんなことはさておき

何が起こったかは分からないが、事実として遅ればせながら書き味に感動している自分がいることは間違いない。

つまり……

つまりなんだ……?

気付けば私は、Schneiderの公式サイトを見ていた。

Schneider製の万年筆は多くない。
どれも1700~2700円程度とお手頃価格。
ニブの種類が固定のようなので、それだけ気を付ければあとは好きなカラーを選ぶくらいの雰囲気に見える(実際には使っていないので分からないが……)

……さて、どうするか。

言い忘れていたが、Schneiderの公式サイトを開いた段階で私はこの会社の万年筆をもう1本買うことを決めていた。

二本目に買ったのが上の黒にシルバーのクリップがついたID万年筆

結果、ちょっと変なところがあるのが好きな私の癖が出て、このID万年筆を選ばせてもらった。

本体に覆いかぶさるような、ゴロンと大き目サイズのキャップ。胸ポケットにしか使えない独特な形状のクリップ。ずどん、と真っすぐに伸びる軸。カラー展開は無し。間違いなく個性派フォルムの万年筆だ。

結果発表

回りくどいことは無しにしよう。
406で起きたことがまた起きるのかが知りたくて、私はID万年筆を購入した。
結果、全く同じことが起きた。

見た目は奇抜だが、書き味はまぁ普通か……そう思ったはずだった。しかし、やはりそう間をおかずして書いた瞬間に「あれ。やっぱ好きだなこれ……」となるのだ。じわじわと浸透してくるようにその魅力に気付かされるような、そんな感じだ。

ちなみにID万年筆は、キャップをした状態だとぽてっ、ごろ、っとした感じだが、いざ筆記のためにペン先を出すと意外とスタイリッシュなところもギャップが光ってて気に入っている。

グリップ部分は人差し指を添える用のくぼみが入っているので持ちやすい。太目なので、細いペンだと力が入りやすくなってしまう私はこれくらいの形状がリラックスして筆記できるのでありがたい。

これはある程度見た目通りかもしれないが、万年筆特有の繊細さをあまり感じさせない逞しさがある気がする。万年筆という道具の特性上、筆圧を無駄にかけるのは良くないのだが、ID万年筆はかっちりとしたペン先で「まぁ多少のことは大丈夫だぞ」と言ってくれているような感じなのだ。

ひとつ心配なのはグリップがゴムなので、経年劣化でべたついてこないかな?という部分だけが少し気になっているが、使っていかなければ分からないことなので、これから検証していこうと思う。

余談

IDボールペンは悶絶するほどフォルムが可愛すぎるので、本当は見た目だけで言えばこっちが好きで何故か妹に薦めてしまった(買ってた)

そんなわけで、Schneiderの魔力にやられた同胞の方がいらっしゃったら是非ご一報を……。

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