クトゥルフ神話TRPG「アルダナブの悪魔」【KP目線感想】
シナリオ:アルダナブの悪魔
作:喫茶とりごや様
シナリオの内容含めてがっつりネタバレがありますので、未プレイの方はご注意下さい。
話しは時をさかのぼりまして、2020年1月
いよいよ、どどんとふが使えなくなるということで新しいオンラインセションツール「ココフォリア」のアカウントを取得。
なるほどこれは見た目が綺麗だしセッション自体もかなり、やりやすくなりそうだ!とは思いました。
しかし、その時KPとして回したいと思えるシナリオがなかったこともあり本腰入れて学ぶほど気持ちが持って行けず、たまに誘ってもらうセッションに参加するためだけのツールとなっていました。
そのまま過ぎ去る年月。TRPG仲間が増え、ココフォリアを使ったセッションの回数が増えました。そうすると湧き上がってくるのが「いつも回してもらってばかりで悪いな」という感情です。いよいよ自分も久しぶりに何かシナリオを探してみよう…と思い至った時に出会ったのが、こちらのシナリオでした。
「秘匿シナリオ」という響きに感じる憧れ
私が以前最も頻繁にクトゥルフ神話TRPGをやっていた時期が6年ほど前で、その時は謎解き脱出系やホラーサスペンスのような「がっつり一生懸命探索をして情報を探し当てる」というシナリオが主流でした。「秘匿」という要素も存在はしていましたが、そんなに多くはなくあったとしてもエッセンス程度のものがほとんどでした。
なので偶然、最近遊ばせて頂いたシナリオの中に秘匿要素が含まれていたことがあり、すごく新鮮さを感じました。それがとっても楽しかったので秘匿シナリオ私もやってみたいな……と思ったことがきっかけとなり、検索ワードに「秘匿」と入れたことで、このシナリオとの出会いに繋がりました。
数々の「やってみたい!」が詰まった設定
購入前、シナリオ概要のページに書かれている内容だけで「うわぁ、めっちゃ楽しそう……!なんなら私もプレイヤーしたいですけど……!!」と、しばらく悩みました。
プレイヤー全員、どうやら事情の違う人外の集まり。そして、自ら神話生物に立ち向かっていく機動隊!これは……これはクトゥルフといえど強い!強い探索者が見れる!!
死にそうなことにびびりながら、何とか出目がいいことを祈りつつちょこちょことキックやパンチで敵のHPを削る地味な戦闘になりがちなクトゥルフですが戦うことが分かってる警察組織なら色々ロマンプレイができるのでは……!
シナリオの準備をするのって時間も労力もかかるし、今回は部屋の作り方を勉強しながらということで更に手がかかるのが分かっていました。自分でプレイしたい気持ちは山々でしたが、惚れ込むシナリオじゃないと腰が上がらないぞ!ということで、思い切って自分がKPになることを心に決めて購入。よぉし、私もついにココフォリアでのKPデビューを果たすぞ!と決心した瞬間でした。
部屋を作ったのは2021年11月末
シナリオを買った直後に集まりで概要を書き込んで、反応くれたプレイヤーを集めて「やるよ!やるよ!」って言っちゃう。自分を追い込むためでもあり楽しみにしてくれるプレイヤーに後押しされる形で頑張ることができました。
HOを決めてもらい、秘匿情報を配り、質問に答えながらシナリオを読みこみながら部屋を作っていく。作業を進めれば進めるほど、久しぶりのKPで、かつ扱い慣れていないツールを使いながらシナリオ最中に秘匿情報を適時投げるという高等技術が可能なのか非常に心配になっていきます。
そんなわけで、短いシナリオで昔回しているものを使って練習をすることにしたのが2021年の年末でした。準備と練習を積んだのちに2月の中旬、ついに開催が決定。無事に3回に分けたセッションの後、エンディングにたどり着いたのは3月2日でした。
長い間、作りかけの部屋として置きっぱなしだった「アルダナブの悪魔」の部屋がついにセッション部屋として機能する時がきたかと、当日は感動と私も皆も楽しみにしていたシナリオをちゃんと回すことができるだろうかという緊張で色々大変でした。兎にも角にも4か月ほど温め続けたシナリオを無事に回しきることができて本当によかった……!!
という私の思いはここまでにして、内容の方に入って行こうと思います。
ロマン求めて戦闘システム大幅改変!
人外だよね…戦闘部隊だよね…。強くていいよね?当然武器は持てるんだよね??えっ……人外探索者たちがめっちゃ強い武器振り回すところ見たいんだけど。よし。普通の人間で無難な職業の探索者じゃ絶対持てないようなロマン武器何でも使えることにしちゃおう。
慣れないことをしようとしている上に書いてないことをやろうとしてしまう。もとの設定がそもそも魅力的だったものですから、どうせならマシマシにしちゃおうよ!!と、つい調子に乗って設定を盛っていってしまいました。
そしてまた、なんでもありだよー!と声をかけたら大鎌、ヌンチャク、ライフル、特大パイプレンチと未だかつてないレベルでわくわくするほど統一感のない武装集団ができあがっていました。
当然ルールブックに見当たらない武器だらけになってしまったので、こちらでそれっぽい値に設定していきます。当然ながら強い。そしてそれだけ強いなら戦闘はそれなりに楽しめるように敵もそれなりに強くないと困る。
ついでに言うならそれぞれ独特な武器を持ってくれているのだから、全員固有スキルなんかも考えたい。最速のキャラにはデバフスキルを、タンクには王道「庇う」スキルをライフルの子には安全圏の後衛から攻撃できる権利を…そしてアタッカーには「カウンター」のスキルを。
ライフルは2ターンに1回しか発砲できないのかー、管理忘れそうだな。クリティカル・ファンブルの処理も最初から考えておこう。
そんなこんなで、あれこれ皆に合わせてスキルをつくり敵のパラメータをいじり、数も調整してテストプレイを繰り返すうちに戦闘の分かりやすいシステムがほしくなって、結局最終的に遊んでもらった画面ではこんな感じで行動順が可視化されるところまで頑張って作りました……!
めっちゃ楽しかった……今から思えばもうちょっと使いやすく出来たなとは思いますが、初めてにしては頑張ったと言っていいでしょう!(笑
そして戦闘中に味方が2d8やら2d6やらと大きい目のダイスを振っているところが見られるのがとっても気持ちいい!クトゥルフ神話TRPGは戦闘非推奨ですが、どうしても戦わないといけない状態ならやっぱりかっこよく戦いたいものですよね……!
「秘匿」の内容を知っているからこそ
さて、このシナリオは個々に最初から配られる秘匿の情報がたっぷりあります。そして皆が「他の皆は何を隠してるんだろう?どんな秘密があるんだろう?」とソワソワしていました。
私はKPでシナリオを読んでいますし当然、全員に秘匿情報を送ったのは私なので、もちろん内容は知っているわけですが、だからこそ「これどうなってしまうんだ!?」というソワソワを抱えることになってしまいました。
特にHO3の八神さんは、人間を発狂死させることのできる特殊能力持ちの人外という秘匿だったのですがその部分の設定を細かく詰めてきてくれて面白かった半面(能力使う準備万端ですねー!?尾崎さん自殺させられてしまうのではっ。大事なシーンにたどり着かずに死んじゃってる可能性あるのでは!!)と。
結局、可愛い妹ちゃんのためによくないという気持ちが勝って思いとどまってくれたので、これ以上悲しい思いをする人が出なかったのはKPとしても一安心でした。尾崎も色々ありましたが根が悪い人間ではないですし、HO1の本宮くんが助かるきっかけとなった親友でもありますからね。
シナリオの大事なパーツを完全にお任せすること
今回のシナリオをやっていて特に面白かったのが結構な容量の秘匿情報をそれぞれがもっているせいで、特定の場面になったときにプレイヤーが独自の判断で急に長台詞を回し始めるところでした。
大事な情報であるにも関わらず誰が、どのタイミングで、何をどう出してくるかという部分が不透明で、そもそも最後まで出さない可能性まであるわけですから……。
KPが、さてと腰を上げてイベントを回し始めるのはいつものことですが、一緒に行動しているキャラクターが突然「実は」と急な情報を持ち出してくるというのはなかなか無いことでした。
そのためか、私としてはいつもよりも「プレイヤーと一緒に物語を作っている」というような印象が強いセッションになりました。
慎重な行動に徹した本宮くん
HO1の本宮くんは、キーパーソンとなる尾崎の親友ですがそれが判明してくる中盤以降、秘匿のやりとりが忙しくなっていきました。他のメンバーの身を案じ、また神機の中にスパイ的存在がいないかなども気にしながら動かれていました。
仲間には事情を話し、敵の大ボスと遭遇する前に尾崎に自分が昔一緒にいた親友であることを明かして混乱が起きにくくなるよう立ち回ってくれました。
そんな半面、戦闘中の出目の荒ぶり方はトップクラスだったように思います。DEX20なので、いの一番に行動するのですが前哨戦のダイスロール一発目からファンブルをぶちかまし大鎌の組み立てが間に合わず、ごたつくという慌てん坊ぶりを披露してくれました。
死神の大鎌をメイン武器にするというロマン全振りの装備で、このシナリオで私が盛りに盛った設定を打ち出したからこそ出てきてくれたキャラクターだと思ったので、思いっ切り戦ってもらえるように設定させてもらいました。だからこそ火力的な期待値が最も高く戦闘がスムーズに終わるかどうかは彼にかかっているのですが、度々失敗をやらかすところが彼の「まだまだ」な部分なのかもしれませんね。
実際に動いてもらうと攻撃力が高すぎてデバフ使うまでもない感じだったので個人スキルはデバフじゃなくて、命中率は低いけど確殺とかにしておいて敵の数をもう少し増やすとかでも緊張感が高まってよかったかもしれませんね!後から色々考えちゃうこともあるんですが、この辺の調整はとっても大変で何度も試行しなければならない部分だったので、とりあえずほどほどのところに収まってくれたので個人的にはよかったかなと思っています。
普段は慎重で目立たないように行動しているものの、その反動なのか戦闘になると狂人ぶりを発揮するという性格設定だったはずが初手がファンブルだったせいで茶目っ気が出てしまってなかなか狂人ぶりが発揮できないところに人の好さが出てしまっていたように感じました。
でもクリティカルも出してくれたので「4d8+2d4」という驚異的なダイスロールが見られたから感動しました……!こういうのが見たかった!!
鉄壁の守護神と化した石舟くん
VIT20でタンク役を買って出てくれた石舟くんは悪夢でSANが削れていく感じのハラハラが味わえたほうがいいかも…とPOW13の初期SAN65と程よく攻めた数値で挑んでくれました。が、中の人の思惑とは裏腹にSANチェックはことごとく成功していき、実際の数値のわりにはメンタルつよつよなところを披露してくれる結果となりました。
戦闘ではタンク用の個人スキル「庇う」を思う存分使って頂きパーティの戦線維持をする重要な役割を担っていました。しかしふたを開けてみれば彼が庇っている人は「そもそも狙われない」というタンクを越えた何かになってしまっていました(笑
さすがに全く発動しなかったわけではないのですが、ターゲットから反れたりそもそも攻撃行動自体が失敗したりすることが多かったのです。とはいえ、テストプレイ時の感じで言うといざという時の石舟くんがいなくなってしまった場合、突然戦線維持が厳しくなる展開になっていくので彼が前線に立ち続けたのは地味ながら大きな貢献だったと思われます。
そしてもう一つ、実は彼、戦闘中のダイス目が非常に安定していました。タンクなので攻撃力自体は最も低く期待値は5.5でした。しかし、行動の失敗はなくダメージは7以上を安定して出しており実は敵にトドメを刺した回数は最も多くなっています。MVPシステムがあれば間違いなく彼が取っていたことでしょう。
ぽやっとしていて、あまり物事を難しく考えないようなタイプの人でしたが「真っ当な存在であろう」とする意志が強い印象でした。尾崎には利用された形になった石舟くんですが、それでも彼を憎むことができないと告げたりラストシーンでは、助けられなかった最初に目撃することになった大学生の子のお見舞いに通い続けていたりと素朴ながら優しい人であり続けていました。
舞台裏の主人公だった八神さん
人を発狂死させることのできる能力を持っていた八神さん。シナリオ開始早々に発狂自殺の事件が出てきたことから、始まってすぐに少なからず何等かの関係があると確信していたのではないでしょうか。
班のリーダー的貫禄と実力を発揮して、探索面でも戦闘面でも安定した活躍を見せてくれました。優秀な衛生兵としての側面もあり、安全圏からのライフル攻撃をしっかりと決めていく等、特徴的な動きもしっかりとこなしていました。
また、今回個人的に仕掛けておいたギミックとして攻撃時の効果音再生がありました。本当は全員分に仕掛けたかったのですがどうやらシステムの都合上今のところ難しくて、結局ライフルで攻撃する八神さんにしか実装できませんでした。
何故八神さんに実装できたかというと、銃火器には故障ナンバーという攻撃の失敗とは別に銃の不具合が出る出目が設定されており、ダイスを振った時に「故障ナンバー」という一文が入ります。カットインの条件にその一文を入れることで、それが八神さんの攻撃行動だということを個別に認識させることができました。
ライフル攻撃にスペシャル以上の出目で成功した場合にだけ発砲音がする設定にさせてもらったのですが、そこもしっかり成功させてくれたのでこっそりサプライズを仕掛けていたKPとしてとても嬉しかったです!
ただ、後述する朝日さんの戦闘中における特殊イベントで異変が起きたときに中の人の操作ミスで突如発砲するという慌てぶりをみせてくれたのは個人的にめちゃくちゃウケました(笑)
まさか、このタイミングでスペシャル成功させることでしっかり発砲音を出してくるところがあまりにもナイス過ぎる……!八神さんは、一番周りの人を色んな意味で(どういうこと!?)と驚かせていたような気がします。
いくつかの事柄に対して強い憎しみの感情を残しながらも人間としての理性を失うことなく、妹を連れて日常に戻った八神さん。これからは紳機で活躍する傍ら、妹にしてあげられることを考えながら生きて行くことになるのでしょう。
設定が神がかっていた朝日さん
毎朝誰かの視線を感じていた朝日さんは、この設定を汲んでキャラクターを出してくれた時にオリジナルで特殊イベントの提案をしてくれました。
曰く、自分の腕にはたくさんの目があって、それから見られている気がする……と。安定している時は隠せているが何かがある(具体的には戦闘中にファンブルを出す)と異形の腕が発現する、というものでした。
この段階で、中の人は自分のキャラクターが何の異形の血縁であるかは分からないのですが、彼女はニャルラトテップの娘。自由自在に姿を変えることのできる化身も持つニャル様の娘なら、思い込みで自分の体を変えてしまうことは十分に有り得る話です。
問題はうまいこと戦闘関連のロールでファンブルが出るかどうかの部分でした。それもあって、あんまりあっさり戦闘が終わってしまわない戦闘バランスにすることは重要な任務でもあったのです。
結果的にはなんとか最終戦闘の終盤でファンブル発生、無事にイベントを活用することができ、八神さんがパニックになって発砲する特殊イベントも見ることができました(笑
彼女は大切な人であった内海を尾崎によって犯罪者に仕立て上げられた上に殺されているという境遇なので、尾崎をやるかもしれない人材その2だったのですが、彼女は私が予想していたよりもかなり冷静でした。死んだ人は生き返ることはない、と。
一発だけ放たれた拳は高い成功率を持っているにも関わらず外れ、尾崎の顔面を逸れ壁にめり込みます。そのまま顔も見ずに背を向ける朝日さんの何とかっこいいことか……盤面的にはただ攻撃を外しているだけだというのに、演出上はむしろこの方が決まるという。
尾崎を見逃した代わりと言わんばかりに、父親であるナイ神父に対しては非常にアタリが強かったのも面白いところでした。激怒している朝日ちゃんとにやにやフラフラと不真面目に受け答えする父親面のナイ神父のやりとりをするのがとっても楽しかったです!
やってよかった!!
最終的な感想としては、難しかった!大変だった!!KP自体は色々やってきたのでそんなに心配はしていませんでしたが、さすがに秘匿の扱いが大変でした。
でも、その分、普段なかなか見ることができないかっこよく戦う探索者たちの姿が見られたし、それぞれ情報を持っている分、いつどんなイベントが起こるかこちらにも分からない部分があるワクワクがシナリオを回している間、ずっと楽しかったです。
何か月もかけて準備してもらい、私自身は色々と勉強するところから頑張ったセッションでしたので無事にこうして感想記事を書くことができるところまで持ってくることができて一安心致しました!おかげでたくさんセッションの練習ができましたし、またKPとしてクトゥルフ神話TRPGを楽しむことができました。これからもよろしくお願いいたします!