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公務員はなぜ「出る杭」にならないか
公務員は新しいことに取組まない。取り組む人が少ないと言われます。
わたしの公務員仲間には、そんなギョウカイの常識にとらわれない方がたくさんいらっしゃる。なので、すべての公務員が新しいことに消極的かというとまったくそうではありませんが、いざ実際の現場ではそういう傾向が多いのは事実だとおもいます。
今日は、公務員はなぜ「出る杭」にならないかについて、考察してみたいと思います。
過度な組織の継続性の信仰
行政は、企業にもまして、継続性が重んじられるギョウカイです。もちろん企業も継続して活動することが予定されていますが、行政がある日突然、行政サービスをやらない・できないことは想定されていません。
今日も、明日も、出生届は受け付けないといけないし、住民票は発行し続ける必要があります。いきなり行政サービスが低下したり、とまったりすることがあれば、大問題です。
この継続性こそ、公務員が新しいことをやりたがらない、やらないモチベーションになる一つだと考えます。
今日、いま動いている仕組みをなぜ変える必要があるのか。変えたとたん、業務が動かなかったらどうするんだ。苦情がきたときは対応できるのか。マスコミに叩かれたらどうするんだ。
日ごろから様々なリスクを検討する思考が働いている、カシコイ公務員にとって、万に一つのトラブルが重くのしかかります。不安の多くは起こらないのですが、わずかなリスクが頭をよぎり、思考停止してしまいます。
その万が一のリスクを回避するためには、入念な準備と十分な準備期間が必要であることも、カシコイ公務員には見えてしまいます。
あー面倒な調整がかかるし、時間もかかるなー
まぁ、いまシステム(仕組み)が動いているし、別に変えないでいいか
となるわけです。
人事配置のガチャ
もう一つ、大きな要素として、人事配置のガチャ要素があります。
例えば、先進的にシステムを導入したいとか、新しい施策を導入したいという、前向きな公務員がいたとします。
これまで経験や人脈を最大限活かして、新しいことを始めようとします。
でも、ここで、またストップさせる要因が出てきます。
これ、その人が異動でいなくなったら運営できるの?
と自問自答したり、上司から言われたりするわけです。
新しいシステムや施策はノウハウが社内にないことが多く、後任が知らない・できないことが多くあります。
せっかく作った仕組みが、組織として継続して使われない。もしくは使われる見込みがない。となると、後任がどんな人であってもできるレベルまで、システムや仕組みを落として、取り組もうとなります。
こうして、公務員は構造的に「出る杭」にならない、なりにくいんだと考えます。
だからって、出る杭はいらないのか
だからって、出る杭になる人はいらないのか、というと、私は、まったくそうは思っていません。
多少のエラーや後任による施策のより戻りがあったとしても、どんどん新しいことを進められる人は、進めるべきです。
世の中は一気に変わるのではなく、あるべき方向に、少しずつ変わっていくものだと思います。新しい一歩を踏み出す姿勢は、絶対的に大事です。
そのためには、
・「出る杭」さんに対する組織としての感謝や応援
・組織が継続して新しいシステムや施策に対応できるように、職員全体のスキルアップ
・専門人財の採用、職員の知識経験に基づく合理的な人事配置
などが、組織として必要なのではないかと思います。
「出る杭」さんが組織を離れることのないよう、よい組織文化を作っていきたいなと考えます。