補助金交付要綱と実施要領の違いは何か
補助金事務は地方公務員にとってはどこの部署にもありますが、補助金について、当たり前のことをまとめた本や資料がない。多くの人は引継書や国の補助金要領を手がかりに、事務を進めておられると思います。
本シリーズでは、補助金の担当になった人のお役に立てるような記事をめざしています。
今回は、補助金ルールの違いである「要綱と要領の違い」について解説していきます。
多種多様な補助金のルール
前回の記事にコメントをいただきましたが、補助金のルールは非常に多いです。
1つの補助金について、2〜3の規定が関係していることは普通ですね。国から県、県から市町村、市町村から事業者に渡される補助金だと、通過した機関それぞれの規定が関与します。倍々ゲームです!
そして統一した体系で整備されているかというと、そうでもなく、省庁や担当課ごとに違います。もっと細かく、補助金ごとに規定整備の考え方や決め方が異なります。
ただ、補助金のルールに法則性はないのかというとそうでもなく、長年補助金やってると、ゆるりとした業界?慣習があります。
「交付」がつく規定はお金ルール、「実施」がつく規定よりも上位が多い
基本的には「交付」となってるのはお金のルール(補助金額とか補助率)、「実施」となっているのは運用ルール詳細であることが多いです。
たとえばこんな感じ。
「交付」規則として、その県の補助金の一般ルールを定めています。
この交付規則に基づき、「◯◯県補助金交付要綱」なり「◯◯県補助金交付要領」を定めていることが一般的です。
さらに、これらの「交付~」にぶら下がる形で、「実施~」である実施要綱や実施要領が定められていること多いと思います。
要綱と要領はだいたい要綱が上位
では、よく見る「要綱」と「要領」の違い。
わたしが見たことのある「要綱」の方が上位にあることが多いですが、ここは結構あいまいな印象です(違いは「交付~」と「実施~」ほど大きくない印象です)
たとえば、ネーミングの一例は以下のとおり。
「○○県補助金等交付規則」⇒県の補助金全体のルール
「○○事業補助金交付要綱」⇒その補助金のお金関係のルール(補助率とか申請手続きとか)
「○○事業補助金実施要領」⇒その補助金の事務詳細ルール(補助条件の詳細など)
ただし、補助金「交付要領」に基づいて、補助金「実施要綱」がある事例もあって、要綱と要領の使い分けは、あいまいな印象です。
調べてみると、東京都の港区が「要綱、要領制定基準」という規程があるようです。
これによると、要綱の方が基本的なもの、要領の方が細かいものとなりますね。
なぜ複数のルールが乱立するのか
そもそも、補助金の規程は、なぜこんなに乱立するのでしょうか。
通常、補助金でも、「一般ルール」とそれに基づく「詳細ルール」のように分けてあることが、一つの要因です。
法律には具体的な要件を全部書書かず、政令や規則に委ねます。
補助金の世界でも交付要綱に全部、まとめられるわけにもいかない。そのために、分割して書かれます。
あと、「交付要綱制定者」と「実施要領制定者」の所管課が別で、決められる範囲や事項が違っていることも、分割される要因の一つであるように思います。
たとえば、「補助金交付要綱」の所管は財政部局、「実施要領」の所管は担当部局(福祉局とか都市整備局とか)だったります。
そうなると、実際に補助金を運用する担当部局が、改正などすぐ出来るように、細切れにしてルールを定めていく運用が、合理的だったりします。
慣れないと、なかなか読みにくい要綱や要領ですが、以上のような体系があると理解しておくと、少しは手助けになるのではないかと思います。
なにかのお役に立ちますように。