検証と反証の非対称性

 お疲れ様です。今日はタイトルにある通り、検証と反証、一見裏表、対称に見えるこの2つの非対称性について書きたいと思います。
 
 この事実は一般に科学における推論をめぐって展開された議論としてよく知られています。

 この問題は、後件肯定は論理的に誤りで後件否定は正しいということに帰結できます。

 後件肯定の誤謬の構造は以下の通りです:
前提1: 「もしHならばTである」(H → T)前提2: 「Tである」(T)
結論: 「したがってHである」(H)
この推論の問題は、「T」が真であることが「H」によるものかどうかが不明確である点にあります。つまり、「T」が真である理由が他にも存在する可能性があるため、「H」が真であると結論するのは誤りです。具体例を挙げると
命題: 「もし火があれば、煙が上がる」(H → T)
観察: 「煙が上がっている」(T)
結論: 「したがって火がある」(H)
この推論は後件肯定の誤謬です。煙が上がっている理由は、火以外にもたとえば、霧発生装置など他の原因が考えられます。従って、火が原因であるとは限らず、結論は論理的に正当化されません。

 一方、後件否定の場合、前件が真であれば後件が必ず真であるという前提を持ちながら、後件が偽であることを示すことで、前件が偽であると結論づけます。これは論理的に正しい推論です。具体例を挙げると、
命題: 「もし雨が降っているならば、地面は濡れている」(H → T)
観察: 「地面が濡れていない」(¬T)
結論: 「したがって、雨が降っていない」(¬H) 
これは論理的に有効な推論です。地面が濡れていないなら、雨が降っていないと結論するのは正しいからです。

 ここまで見てきて、後件肯定が正しくない理由を掴みかねている人がいるかもしれません。しかし、この問題を必要条件と十分条件に当てはめれば、よく理解できるのではないでしょうか?つまり、例えば「HならばT」が真であるということは、HがTを引き起こす十分条件であることを意味します。しかし、Tが成り立つためにHが必要であるとは限りません。別の原因や条件がTを引き起こす可能性が常に存在します。総じて、後件肯定は必要条件と十分条件を取り違えていると言えます。
 
 ここまで後件肯定の誤りと後件否定の正しさについて見てきました。この2つは必要条件と十分条件という2つの対になる条件のもと対称的ですが、この2つの条件を入れ替えても同じ結果にはなりません。

 中高の数学で出てくる必要条件と十分条件、テスト用に小手先だけの理解だった人もこれで深まったのではないでしょうか?

いいなと思ったら応援しよう!