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なぜ作るのか

なぜ作るのか。どうして作るのか。日頃ただ作りたい気持ちで生きているが、ふとそれ考えることも多い。この文章を書くことでその答えが見つかるのか、はたまた答えがあるのかもわからないけど、今の気持ちを書き綴ってみたいと思う。

ありがたいことにプロダクトデザイナーとして様々なモノのデザイン依頼をいただけます。その中には、世の中にない新しいジャンルを開拓するプロジェクトがあれば、すでに世の中に流通しているカテゴリのモノ作りもあります。

お仕事の依頼相談を受ける度、なぜそれが作りたいのか又作るべきなのか、なぜ私に依頼してきたのか、私になにを期待されているのか、誰がそれを喜ぶのだろうか等をいつも考えます。

作る理由  -コップ-

なぜコップをデザインするのか。人のために必要なものであるが、すでに日常にたくさんの種類が流通し、選ぶ楽しみもある。ほとんどのものが新しく劇的に機能が向上するから改めてデザインするわけでもない。それでもコップをデザインする意味はなんだろう。

私はまだコップのデザインをしたことはないが、もし依頼がきたらきっと造形そのものをデザインするではなく、それが置いてある気配やモノに宿る愛着やモノが紡ぐ対話みたいな体験価値を表現したコップをデザインしたい。

すでに日用品の定番であり、名作や原型と呼ばれるものがたくさん残っているコップだからこそデザインが難しいところである。他の商品との違いを意識しすぎて造形に雑念が残ることがある。なのでむしろ様々な種類があるからこそデザイナーとしても肩肘張らず、選択肢の1つとして心地よく選んでもらえるモノをデザインしたほうが、素直で良いモノが楽しく作れるのではと思っている。そこに作る理由を見つけたい。しかしすぐゴミになるものを作るつもりは無いからまた難しい所である。


作る理由  -IoT-

なぜ新しいモノを作るのか。それが無くても生活できるが、在るとより生活が豊かになるようなモノたち。例えば今の時代ならIoT製品はそれにあたるだろう。

私がデザインするのであれば、やはり造形そのものをデザインするではなく、その体験価値をいかに引き出すかを意識している。新しい体験だからこそ、体験価値に沿う形、つまり新しい体験価値の原型を創造するチャンスがある。なので体験価値を活かすことから造形的ヒントを見つけ出しデザインする。そういう意味で、初期にコップや椅子をデザインし原型を作った先人たちはやはり尊敬するし、羨ましい。

日の目を見なかった

モノづくりの世界に限らず世の中には、時代に合わせ産まれるべくして産まれるもの、その中でも定番になるものがあれば、時代に取り残され消えゆくもの、そして時代に合わず日の目すら見ない事もある。

様々なプロジェクトの中で、産まれなかったものがある。なぜ産まれなかったのだろう。それを考え続けている。しかしその答えはまだない。

今、僕に出来ること。それは何かを作りだそうともがく事ことしかできないのはわかっている。そうして凹んでいても、作り続けて生きている先人たちをみて結局は励まされ、デザインを続けている。

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