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桑原茂夫さんとお喋り3~マイナンバーカードと松本清張&スノーデン

 話題がマイナンバーカードのことになりました。
 私が、「つい先日、マイナンバーカードを返納したんですよ。」とお話しすると、桑原さんは「そもそも、なんであんなもん作ったのよ(笑)」とからかいながらも、「ぼくはあれが導入されたとき、すぐに“徴兵のためでは?”と思ったよ。」とお話しくださいました。

 現在、マイナンバーカードに健康保険証としての機能も付加されようとしていますが、病院の受診記録、健康診断などの記録がこのカードに紐づけられれば、もしまた徴兵制が復活した時に、徴兵検査をしなくとも身長・体重・病気の有無の把握などが簡単にできるようになるため、その下準備ではないかと感じたそうです。

 また、「こんなことも懸念される」という例として、松本清張の『遠い接近』という小説を教えてくださいました。

過去の徴兵検査で第二乙種不合格、そして三十二歳となった今、兵隊にとられることはないと確信していた山尾に、召集令状が届く。この一枚の紙が、山尾のみならず家族の運命までも大きく狂わすことに。古兵の制裁にも耐え復員したが、すべてを失った山尾は、召集令状を作成した区役所兵事係への復讐を誓う。

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松本清張『遠い接近』商品の説明より

 つまり戦時中において、誰に召集令状を送り付けるか決めていたのは、最終的には地元の役所の担当者であって、もしかしたらそこに私怨が絡んでいたのでは?…という疑惑を、この小説では取り上げているのです。もしマイナンバー制度による各種紐付けでその人の健康のことやその他もろもろが役所の人から(見ようと思えば)見られる状態になれば、そのような場合に悪用される可能性が生じてきます。

 太平洋戦争末期の日本では、東京大空襲(1945年3月10日)でほぼ負けが確定してから終戦までの5か月の間にも、たくさんの人が戦地に送り込まれました。たいした武器も食料もない戦いを強いられ、つい昨日まで一般人だった人たちが、名ばかりの兵士として、ただただ亡くなりました。このような局面で、役所の担当者はどのような基準で誰を「戦地送り」にしたのでしょうか? 明確な選定基準がなく、担当者が恣意的に選んでいたとすれば、これは大問題ではないでしょうか。

 そこで、「これもぜひ見てよ。」と貸してくださったのが、映画『スノーデン』のDVD。

全世界のメール、SNS、通話は、米国政府に監視されていた―。
米国最大の機密を暴露した天才プログラマー、エドワード・スノーデン。
彼は英雄か、それとも国家の裏切り者か?自由を愛し、恋人を想い、すべてを捨てて世界を変えた男を描いた衝撃のスリラー!

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『スノーデン』DVD 商品の説明より

 家に帰ってきてから見たのですが、これは恐ろしい…!個人情報がこんな形で監視され、罪のない個人を陥れるためにすら使われていたとは…!

 「でね、ぼく、徳島の市役所に取材に行ったのよ。」と桑原さん。どうも、徳島市で3月に起こったマイナカード紐づけミスについて、現場まで取材に行かれたようなのです。

ことし3月、コンビニエンスストアで、マイナンバーカードを使って住民票の写しを取得しようとした徳島市の住民に誤って別人の戸籍証明書の一部が発行されていたことがわかりました。徳島市は、同じ時間帯に市役所に設置してある端末で別の証明書を発行しようとしていたことが原因とみて、市の端末の利用を一時停止しています。

NHK 徳島 NEWS WEB
マイナンバーカード 徳島でも誤って別人の証明書交付
2023年5月12日 12時59分

 「役所の人、この危険性がよくわかっていなかったよ。」…と、桑原さんは軽々とおっしゃいましたけど、私は桑原さんのそのバイタリティに本当に頭が下がったし、あらためて尊敬の気持ちが湧き上がったのです。わからないこと、疑問に思うことは、絶対にその根元まで行って自分の目で見てくる。このスタンスが一流たる所以なのだと、ひしひしと感じました。

 そうやって、長年「真実を見る目」を磨いてこられた桑原さんのお話は、何をお聞きしても本当に楽しく、鋭くて、とても魅力的です。

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