【新入荷詩集】中上哲夫『川の名前、その他の詩篇 2011~2021』は、とてつもなく洗練されていた
※この記事のタイトルは、中上さんっぽさを真似して付けました(笑)。
『エルヴィスが死んだ日の夜』(2003年)で高見順賞・丸山豊記念現代詩賞、『ジャズ・エイジ』(2012年)で詩歌文学館賞を受賞された中上哲夫さんの、最新詩集『川の名前、その他の詩篇 2011~2021』を入荷しましたのでお知らせします。
『エルヴィスが死んだ日の夜』のあとがき(「詩集の余白に」)に、当時64歳の中上さんはこうお書きになりました。
今回入荷いたしました『川の名前、その他の詩篇 2011~2021』は、ここから18年経った2021年の出版ですが、…いやぁ、なんという表現のみずみずしさ。Amazing!、Fantastic!です。本当にずっと「Make it new!(新しくしよう!)」の精神で来られたことが証明されていると感じます。ご年齢的に、人生の総括を意識した作品が多めに収録されていますが、情景描写の美しさ、格好良さは、さらに洗練されているのではないでしょうか。
許可を頂いておりますので、詩集冒頭の表題作「川の名前」を全文掲載いたします。
詩集は3部構成になっており、「Ⅰ」は川への思いが詰め込まれた作品群。「川について」では、大潮で逆流するアマゾン川の力強さとご自身の生命力とを重ねて表現されています。「ピンク色の海豚たちが泳ぎ回っているかぎり、アマゾン川はアマゾン川さ。さわがしい朝のナース・ステイションの片隅でたまたまわたしが拾い上げた先住民の言葉なのだけど。」の部分、とても好きです。
「Ⅱ」は人生の総括を意識した作品群。「岩だらけの詩」は、ヨーロッパの北にある、大昔に氷河が運んできた大岩が至る所にごろんと転がる村が舞台。庭の大岩を撫でながらその家の主が「吞んだくれの兄貴のように すてきじゃないか」と言うのが印象的です。自然のみを描写した作品なのに、「岩だらけの詩」…つまり“詩”というタイトルが付いている意味を考えたら、感動で震えました。
「Ⅲ」は雨、秋、雪、春…と巡る季節の美しさの中に、肌寒いからこそ感じる小さな温かさ、時間的にも場所的にも離れた友人を思う気持ちが散りばめられ、最後の作品「河口にて」まで来ると、川の出口、つまり川の流れのような、人の一生を思わずにはいられません。
英語詩の翻訳も数多く手がけられている中上さんの作品は、アメリカの雰囲気が随所に漂っているのも特徴です。とてもおしゃれです。中上さんのご厚意でお安く販売できますので、是非お読みください。
『エルヴィスが死んだ日の夜』、『ジャズ・エイジ』も併せてどうぞ♪
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