【Amazonに載ってない】『中上哲夫 詩集』の目次&読みどころ。目次だけでもおすすめ。
前回ご紹介した、思潮社の現代詩文庫214『中上哲夫 詩集』の目次をご紹介します(Amazonの販売ページには記載がありませんので)。
目次だけでも、中上さんの言葉選びの素敵さを感じていただけると思います。
その前に少しだけ、この詩集の読みどころをご紹介します。
▶『中上哲夫 詩集』読みどころ
中上さんの詩が素敵なのは、どの作品もおしゃれでウイットに富んでいて、時にセンチメンタルで、良い意味で「軽い」ところではないでしょうか。どぎついなぁ(汗)…という感じは一切ありません。私の場合ですと、調子がすぐれない時でも、中上さんの詩はとても心地よく読めます(むしろ調子が悪い時に中上さんを読んで元気を出す笑)。
「浮き」と「沈み」が本当に絶妙なのです。
感傷的かつ神妙な雰囲気で始まる詩も、途中でクスッとさせられて、「あれ?、楽しい詩なのかな?」とゲシュタルトが崩壊します(笑)。思わず心が和みます。
しかし読んでいると、「単に軽い文」とは全く違うと気づきます。
上記は、相沢正一郎さんによる中上哲夫論の一節です。私もこのように、中上さんの「軽さ」が、むしろ心底「重い」ところまで行った人から出て来るもののように感じる一瞬があります。でもそれも、照れ隠しをするような洒落の効いた言葉の向こうへすぐに流されてしまうのですけど。
この『中上哲夫 詩集』は、そのような中上さんの絶妙さを存分に感じていただける一冊だと思います。
▶『中上哲夫 詩集』目次(2015年、思潮社 現代詩文庫214)
詩集〈下り列車窓越しの挨拶〉から
なぐり合おう
愚痴(1)
下り列車窓越しの挨拶
とどまっている男のモノローグ
詩集〈旅の思想、あるいはわが奥の細道〉全編
旅へ!
きょう、世界は雨
その日、渋谷は雨
飛島のわたし
続・飛島のわたし
そのとき、おれは ……
一月一日、北上で書いた六四行
われら四匹の虎は都会へ向えり!
わたしは松島でジョーン・バエズを聞いた
あなたとわたしの旅がたとえ道行の姿をしていても ……
そのとき、わたしはベアトリーチェの長い髪が五月の風の内側で輝きながら駆けるのを見た
きょう、われらの最初の希望の朝はあけて
わたしはモーテルのベッドに横たわって
センチメンタル・ジャーニー
日光
六〇年代のフーテナニー
国道4号線の夜は更けて
八月、月夜にボートを浮かべて
世界がこんなに明るいのは
わたしは那須山の山頂でスリー・ドッグ・ナイトを聞いている
ディラン・トマスやラングストン・ヒューズのように
放浪はいつに変らぬ抒情詩の重要なテーマであった
夏の間、ローカル列車に乗って北の半島を経巡っていたわたしの精神は
わたしは小岩井農場へやってきた
詩集 〈さらば、路上の時よ〉から
今夜、わたしは渋谷「千両」の節穴からわたしの世代の幻を見る
その夜、ぼくらは歩いていた
さらば、路上の時よ
詩集〈記憶と悲鳴〉 から
年代記
引っ越し
ストーブ炎上
詩集 〈アイオワ冬物語〉全篇
*
青春のプレスリー
アイオワの風に吹かれていると
空想の舌
その夜、わたしはずうっと枯葉の匂いがした
アイオワ河はその日も濁って流れていた
マクブライド・ホール哺乳類室にて
きょうも、マックスウェルズ・バーへ行った
マックスウェルズ・バーのカウンターに坐って
わたしの魂は森の中をさまよっていた
鳥の巣について
アイオワでは花や樹も詩を書く
ヒッコリーヒル・パークの樫の森を歩きながら娘に語ったこと
それで、朝の散歩はおしまい
一九七九年九月二七日午後、アイオワ
蕪村の書簡を読んだ
木澤豊詩集『地涌』
アイオワ冬物語
**
おお、 ニューヨーク!
ポンティアック湖の畔にて
ネバダのレストランにて
ニューオーリンズの奇蹟
ローエル 1979
コンチネンタル・オプみたいに
ここから真珠湾は見えない
歯はいい?
あとがき
詩集 〈スウェーデン美人の金髪が緑色になる理由〉から
わにのばあ
スウェーデン美人の金髪が緑色になる理由
空中植物
リチャード・ブローティガンの家のドアの鍵穴の位置について
詩集〈木と水と家族と〉 から
初雪
ガッツのある男
詩集〈甘い水〉から
カワセミを見た日
大鰻をつかまえた日
渓とジャズと木苺
詩集〈エルヴィスが死んだ日の夜〉 から
二十世紀最後の夏はこんな仕事をした
エルヴィスが死んだ日の夜
浅草・神谷バー
尾形亀之助はそうとうへんなひとだと思う
未明のベッドのなかで
未明に訪れる者よ
贈物として差し出された一日
詩集〈ジャズ・エイジ〉から
5
8
10
18
20
21
俳句抄
夏、丹沢にて
路上忌
永き日
雨季と昼寝とやさぐれと
ミシンと蝙蝠傘
また一枚ほか
散文
サッカー賛歌
正岡子規という生き方
カフカ/ロバート・ブライ/俳句
歩きまわる木たち
詩人の運命
作品論・詩人論
ヤマメの釣り方(辻征夫)
「家へ帰って詩を書こう!」(八木忠栄)
十二の断片の贈り物(経田佑介)
〈さらば、路上の時よ〉の後に(相沢正一郎)
そしてこの『中上哲夫 詩集』の次に出版されたのが、『川の名前、その他の詩篇 2011~2021』(2021年、花梨社)。現在の最新刊です。もうこれは、本当に読んでいただきたいです。美しすぎてなんも言えない…!
しかも1,000円なんです…!(プラス送料)
入手できるうちに買ってくださいね(圧)☆
↓こちらのページで表題作「川の名前」を読むことができます。
↓こちらのページでは、『エルヴィスが死んだ日の夜』より「二十世紀最後の夏はこんな仕事をした」を読むことができます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?