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「使徒パウロの祈り」について

「使徒パウロの祈り」について

 この祈りは、ナグ・ハマディ文書の最初の写本の最初のページに書かれています。この祈りは、他の51の文書の読者にとって、明らかに精神的な訓練となるものでした。癒しを求め、深い賛美を捧げ、神とイエスとの一致を願うこの祈りは、ナグ・ハマディが4世紀に編纂される以前から、多くの場面で使われていた祈りである可能性が高いです。しかし、この祈りの写本は、ハマディで発見された文書が唯一のものです。
 この祈りがパウロ自身から出たものである可能性は低いです。パウロの7通の手紙には、この祈りについても、祈りの一般的な内容や考え方についても、言及されていないのです。パウロは死後一世代で伝説となり、伝統的な新約聖書には、おそらくパウロが書いたのではない、パウロの名前で書かれた書物が含まれています。この祈りは、パウロの名を冠しながらパウロが書いたとは思えない「エフェソの信徒への手紙」と同じように、パウロという歴史上の人物との関係で考えられるかもしれません。コプト語で書かれたこの祈りは、紀元前75年から紀元前250年の間に書かれた可能性があります。
 ニューオリンズ協議会のメンバーは、ほぼ全員一致でこの祈りを収録することに賛成しました。これは、従来の新約聖書には初期キリスト教の祈りがほとんどないため、祈りを持って新約聖書を読むための補助として、読者に追加情報を与えるためです。この祈りは、パウロに関する資料を読み始めるにあたって、霊的に役立つ方法であると評議会は考えています。
 この祈りは、一人称単数で語られているという点で、初期キリスト教には珍しいものです。通常、1~2世紀の祈りは、"私 "ではなく、"私たち "として発声されます。祈りの内容は、賛美と要求のジェスチャーをしっかりと織り交ぜています。神は、心、宝庫、充満、先住、力、栄光、偉大であると賞賛されます。祈る者は、神に祝福され、選ばれ、長子であり、神の家の神秘であるイエス・キリストとの深い結びつきを求めるのです。
 聖書読解の一環として霊的実践を行う今日の読者のために、このセクションの各パウロの手紙の前に「使徒パウロの祈り」を読むことが推奨されます。実際、この祈りは、『新・新約聖書』のどの書物の前にも、有益に読まれる可能性が残っています。


推薦図書

Dieter Mueller, “The Prayer of the Apostle Paul (Introduction),” from The Nag Hammadi Library, edited by James M. Robinson


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