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ロックダウン読書のススメ 注)ブックレビューではありません

 つい23日前まで、イギリスでは雪が降っていました。
 通りにはたくさん、雪だるまがならんでいます。西洋のスノーマンというと、アイスクリームのトリプルスクープみたいな、3段重ねのイメージが強いのですが、最近はオラフ型が多いようです。

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 力作スノーマン。お借りした画像で、作ったのは私ではありません。

 

 こんにちは。方向オンチガイドの露原耀袴です。

 今年の1月からはじまった、イギリス第3回目のロックダウン、いわゆる「生活必需品」を売るお店以外は、ぜーんぶ閉店しています。もちろん、レストランやカフェなども、テイクアウト販売のみです。以前は、パブでもドリンクお持ち帰りができたのですが、今回はダメです。外で立ち飲みする人で、密になるからでしょうか? 

 雪も降りはじめたこの季節、そんな気になるほうがふしぎですが。

 外は寒いし、行くところもないので、本を読むにはぴったりです。まあ、学校が閉鎖になって、パワーを持てあました子どもたち(x2)が、いるのですけどね……。

 どうして子どもって、本のカバーをはずすのでしょう? これはわが家だけですか? あと、ミステリー本は隠される率が高いようです。あと一歩で犯人、というところで必ず無くなりますね。

 そんなちびっこギャングとの攻防の合間に、本を読みます。幸いにも、ロックダウンパート2とパート3の間に、図書館で借りてきた本や、アマゾンに届けていただいた本があります。

 まず、ピーター・メイ著の「ロックダウン」です。
 死亡率80%という恐ろしい新型インフルエンザが蔓延した英国の首都ロンドンで、連続殺人犯を追いかける、ミステリーです。
 パンデミックの真ん中にいながら、こういう小説を読むのは、なんというか、墓場でホラーを読むような、ある意味4D体験ですね。

 この小説、すごく細かく実在のストリート名が出てくるんですよ。方向オンチのガイドなので、通りの名前は、しっかり記憶しています。そして、イギリスの通りは、どんな狭い路地でも、必ず名前がついています。だいたい、通りのはじめと終わりにネームプレートが出ています。

余談ですが、イギリスでいちばん短いストリートは、約15メートルとちょっと、クイーンシャーロットストリートという名前がついています。エリザベス女王のお気に入りのお城、ウィンザー城から歩いて30秒くらいのところです。15メートルというと、大股で歩いて30歩くらいでしょうか。この通りには16世紀、当時の国王の愛人が住んでおり、彼女がこっそり城内に忍んでくる、またはその逆も然り、その為に秘密の通路があったと言われています。

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ウィンザー城。ラウンドタワー(本丸)の上にユニオンジャックの旗が出ていると、女王陛下は不在。いるときは女王旗という、女王さま専用の旗があがります。

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​ウィンザー城内のセントジョージ礼拝堂。2018年にハリー王子とメガン妃の結婚式がありました。2年後に二人揃って王室を離脱(通称メグジット!)してしまいましたが。

ごめんなさい、脱線してしまいました。とにかく、細かく通りの名前が出てくるので、主人公たちが走ったルートや怪しいものを発見した家など、想像しやすいです。Googleマップで検索して、ストリートビューを見ているような気分です。
 ぱっと思い浮かぶ通りが閉鎖されて、軍隊が検問をしているシーンなどでてくるので、ドキドキします。

 小説の中では、ミレニアムドームというところが出てきます。これは二千年事業の一環でつくられた、世界最大級のドームで、グリニッジという、テムズ川のそばにあります。

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黄色いお箸を突き刺したような白いドームが、ミレニアムドーム(現O2アリー)です。

 元々は、ミレニアム、つまり21世紀の始まりを記念する、展覧会などのため、という、いまいち用途がよくわからない事業で、建設には反対が多かったのをおぼえています。現在は売却されて、The O2アリーナという名前に変わっています。
 2021年のロンドンオリンピックの会場の一つとして使用されたり、マイケル・ジャクソンの最後のライブが行われる予定だったりと、スポーツイベントやライブショーなどで、なかなかの活躍ぶりです。
 O2というのはイギリスの大手携帯会社です。
 私は九州の出身なのですが、福岡ドームがヤフオクドームになって、前回帰国したらPayPayドームになっていたのには驚きました。
 また話がずれました。
 このミレニアムドーム、作中では新型インフルエンザに感染した人たちを収容する病院として使われています。
そして今回、新型コロナウィルスに感染した患者を収容する為に使われた建物は、このミレニアムドームの目と鼻の先です。テムズ川をはさんでお向かいさん、といった位置にあります。ケーブルカーがあるので、10分で行けます。

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テムズ川の上を渡るケーブルカー。「エミレーツ・エアライン」名前からもわかるように、エミレーツ航空スポンサーです。

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Excel London現在はナイチンゲール病院。新型コロナウィルスの流行を受け仮設された病院の一つです。

 この仮設病院、常時はExCel Londonと呼ばれる、展覧会や会議などで使われる施設です。モーターショーやスポーツイベントで使用され、ロンドン・オリンピックの際は、会場の一つとして競技が行われました。私もここでウェイトリフティングを観戦しました。

 パンデミックの中でパンデミック小説を読むと、ついつい現実とフィクションを比べる「間違い探し」をしがちです。と、いいますか、その為にページをめくっているような気がしてきます。この小説が書かれたのは十五年前だそうですので、「答え合わせ」といってもいいのかも知れません。
 例えば作中で、主人公が新型インフルエンザに感染した患者に会いに行くミレニアムドームに行く場面があるのですが、ドームを出てそのまま連続殺人犯の捜査に行ってしまいます。

「えー! 濃厚接触者したのに、隔離しなくていいの?」
と、ちょっとびっくりしました。

 他にも色々ありまして、作中でロンドン新型インフルエンザが蔓延して都市封鎖しているのですが、一部だけ、感染者ゼロのエリアがありまして、そこに住む人たちは銃を持って外から人が入ってこないように立てこもっています。

 これは本当、現実じゃなくてよかった、と思います。

 現首相のボリス・ジョンソンが、新型コロナウィルスに感染して、一時は危険な状態にもなったのですが、幸い回復しています。小説の中の英国首相は新型インフルエンザに感染して死亡しています。ネットでこの本のレビューを読んでいたら、現実と小説がごっちゃになって慌てて、まあ、おちつきなよ、と周りになだめられている、そそっかしさんがいて、ちょっとおかしかったです。

 これは小説ではなくて映画ですが、「コンテイジョン」。新型コロナウィルスが流行り始めた頃、話題になっていたので、ご覧になった方は多いと思います。アメリカ発のパンデミック映画です。作中で「ソーシャルディスタンシング」という言葉が出てきます。この映画が公開されたのは、2011年、つまり10年も前のことなのですが、そんな以前から、今回すっかり馴染みになった言葉があったことに驚きました。
 こういう、パニックものというか、疫病を扱った作品って、だいたいすぐに軍隊が出てきて、検問したり、食料を配ったり、暴徒を制圧してるシーンがちょこちょこ出てきますね。

 でも現実は、少なくともここイギリスでは目立った軍の動きはないようです。例の仮設病院の建設をお手伝いしてくれたくらいでしょうか。もしかすると、一般の目には見えないところで、裏方的なお仕事をしてくれているのかも知れません。

 こういう未知な感染症の蔓延をかいた作品は、映画であれ小説であれ、「ああ、これは現実で起こらなくて、よかった!」と思うポイントが多いです。暴動とか食糧危機とか、ですね。せいぜいトイレットペーパーやパスタや小麦粉の買い占めくらいで良かったです。
 まあ、まだパンデミックは終わっていませんので、今のところは、ということですが。

 そうそう、映画「コンテイジョン」で、ワクチンを打った男の子が、手首に証拠のリストバンドをつけて、ガールフレンドを抱きしめるシーンがあるんですよ。女の子の方はまだワクチンを受けていないのですが、もう感染させることはないから大丈夫って。ワクチン打ってもらって、速攻好きな女の子に会いに来ちゃうところがかわいいです。
 現実のイギリスでも、もうワクチン接種は始まっていまして、例えば私の義両親も先日第一回目を打ってもらいました。あ、ご存知のかたも多いと思いますが、今イギリスで出回っているワクチンは、基本的に二回に分けて接種するそうです。
 でもワクチン受けたからといって、早速かわいい孫たちに会いに行ける、かと思えばそうじゃないんですね。ワクチンを打っても、他人に感染させる可能性がない、と証明されたわけではないので、みんなと同じように、ロックダウンのルールに従って、ステイホームしてください、ということです。
 なんだかもう、現実は映画や小説とちがって、スッキリしないというか、そんなにシンプルではないのですね。
 まあ、まだまだパンデミックは終わっていないので、今のところはですけれど(二回目)。

 実は私、小説「ロックダウン」、まだ読み終わっていません。いや、残すところわずか一章というところなのですが、本自体がしばらく行方不明になっていまして。
 今朝、ようやく不思議なところで発見しましたので、今夜にでも寝落ちしなければ読んでしまいたいです。
 「ロックダウン」と同時に、もう一冊こちらも未知のウィルスの脅威を扱った「眠れる美女たち」というスティーブン・キングの作品を読んでいましたら、これまたスティーブン・キング作の「ザ・スタンド」のことを教えてもらいました。
 でもこちら、パッとレビューを読む限り、どうやら未知のウィルスが蔓延して、人類が絶滅寸前の中のサバイバルのようですね……。ちょっと「ウォーキングデッド」を思い出します。

 パンデミック真っ只中で読みふけるにしては、少々パンチが聞きすぎているような気がしなくもありません。
 ロックダウンが終わったら、図書館で借りてみようと思います。
 調べたらこちら、ドラマ化しているんですね。しかも、ウーピー・ゴールドバーグ出演ではありませんか。ウーピーが出るならみようかな……。
 どなたかもうお読みになった方、映像の方をごらんになった方、いらしたらぜひ感想を聞かせてください。


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