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リサーチデザインの基本は「比較」- MBA生の研究tips(11)
ワークライフバランスを向上させる人事施策の成果を社内アンケート調査で調べたとしましょう。60%がワークライフバランスに効果があった、40%が効果がなかったと答えたとします。この施策の効果はあったと言えるでしょうか。
60%は40%より大きいのだから「効果はあった」と考える人もいるかもしれません。でも、60%の社員が効果があったと答えたとして、それで十分?90%なら明らかに効果あり?では、70%では?
研究の考え方では、たとえ効果ありが90%であったとしても、効果があったかわからない、が正解です。研究では、何かを評価するときには、必ず他の何かと比較する必要があります。1つの絶対値だけでは何も判断できないのです。
たとえば、人事施策A、Bの2つを試して見て、それぞれ施策実施後にワークライフバランスを調査し、A,Bどちらが効果があったか比較することはできます。(AとBの相互作用とか順序効果とか難しい話はとりあえず置いておいて。)
1つの施策であっても、施策実施前にワークライフバランスに関する調査をして、施策実施後に再度調査をして数値に変化があった見ることもできます。この場合の比較は、施策実施前と実施後ですね。
ある施策に効果があったと答えた社員と、効果がなかったと答えた社員の間で、性別、年齢、職位、ライフスタイルなどの特性に違いがないかを比較することもできます。
業界内でワークライフバランスに関する実態調査がおこなわれていて、あるタイプの施策をおこなっている企業とおこなっていない企業を比較することもできます。(統制変数とか、難しい話はとりあえず置いておいて。)
他にもまだまだ考えられますが、とにかくリサーチデザインの基本は比較だということを覚えておくとよいと思います。
これは、統計的に処理するような量的研究だけでなく、事例研究でもあてはまります。ある企業の成功事例だけみて、その企業がこのような革新的なことをしたから、他の企業も同じようなことをすれば成功すると判断するのは早計です。実は、成功要因は別にあって、それはあってもなくてもよい要因かもしれません。
比較が基本だからこそ、事例研究の場合は、同じような成功事例でも条件の違う事例はないか、失敗している事例はないか、その場合の条件の違いはないか、など、論理的に考えて、追加事例を調べていくことが望ましいです。
ただし、現実に存在する事例は数が限られているため、論理的に完璧な比較ができるほど、事例を揃えることができないケースは多いです。現実的に集められる限りのケースを集め、後は推論を働かせます。よその業界で起こっていることがヒントになることもあります。
なお、非常に特異なことをしている企業があって、そのような企業は他にはない場合はどうしたらよいでしょう。その場合は、その単一事例と、業界の従来のやり方と比較すればよいのです。
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