環境経済学とは?(上)環境学で経済学で政策学
横尾です。一橋大学経済学部で「環境経済学」の講義を担当しています。
このコラムでは、そもそも「環境経済学とは?」を投資家やそれ以外のビジネスマンの方、さらには大学生、高校生も念頭に紹介していこうと思います。
上・中・下の3本構成の1本目です。
環境学である
まず、環境経済学は「環境学」の一分野と言えます。
何かを説明する際に、「似ているけど違うもの」と比べる手がありますよね。
環境経済学と「隣り合っているけれど別の学術分野」として、例えば、
環境倫理学
環境社会学
環境システム工学
(同上の)ライフ・サイクル・アセスメント分野
環境心理学
環境法学
環境政治学
などがあります。
上記を一括りにするなら「環境社会科学」といったところでしょうか。
上記のすべてと重なる面があります。しかし、厳密に言うと違う。そんな環境社会科学の一分野です。
さらに、そもそも「環境学」のメジャーどころでいえば
環境科学
環境工学
環境リスク学
環境疫学
などがあります。
再び、上記のすべてとも関係があるけれど、異なる。
そんな「環境学」の一分野に環境経済学は分類できると言えます。
経済学である
環境経済学は「経済学」の一分野と言えます。
もう少し補足するとすれば、「現代的な」経済学の応用分野の一つだと筆者は考えています。
経済学の一分野、ということで、
ミクロ経済学理論(ゲーム理論と行動経済学理論を含む)
マクロ経済学理論
厚生経済学
計量経済学
実験経済学
を応用する分野だと言えます。
上記の基礎的な経済学分野に基づいて、「環境問題とそれへの対策」について研究する応用分野です。
他の応用経済学の分野とも密接な関係があります。
中でも、
公共経済学
産業組織論
医療・健康の経済学
国際経済学
経済成長とイノベーションの経済学
などとの関係が深いです。
また、筆者の解釈ですと、特に「厚生経済学」と「公共経済学」から派生してきた分野だと考えています。
政策学である
経済学って、そもそもどんな学問のイメージでしょうか?
お金の学問というイメージをお持ちの方も多いと思います。
ビジネスにも関係がありそう、と思われがちです。
実際、そういう面がありますし、「金融(ファイナンス)の経済学」といった分野もあります。
しかし、実は、多くの応用経済学分野が「公共政策」の研究をしています。
そして、「環境経済学」も「政策学」です。
つまり、環境問題への対策としての「環境政策」を研究する分野と言えます。
日本では、まだまだ「政策学」とか「政策研究」という分野のなじみが薄いかもしれません。
ただ、国内外に「公共政策」についての大学院など、政策学を学べる場所が複数あります。
このように、環境経済学は主に、「政府による環境政策」を研究対象としてきました。
その意味で、環境経済学は「政策学」の一分野です。
ただ、近年では、政府による対策「ではない」、企業やご家庭による自主的な環境問題への取り組みも研究対象としています。
まとめ
以上をまとめると、
「環境経済学は環境学であり、経済学を応用した政策学である」と言えると思います。
つづく「環境経済学とは?(中)」ではもう少し言葉を足していこうと思います。
2023年6月版 横尾
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