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非常時とメディアと

9年前の3.11の時。あの頃は、『GLAMOROUS』という女性誌に携わっていて、「女性はいつでも自由で楽しい!」というようなメッセージを発信。当時なりに、女性をエンパワメントできるように誌面をつくっていた。けれど、海外セレブのような生活ぶりを礼賛しているような誌面作りが、3.11後はつくるのがなかなかにしんどくなってしまった。うすうす感じていたムードが一気に顕在化し、あの時に女性誌のおかれる状況はガラリと様相を変えたと思っている。

その後、webマガジンの運営をするようになり、私も顔を出して主観的記事を発信をしていたため、日本全国各地でおこった数多くの災害時には、ファッションや美容のコンテンツを発信し続けることに胸が痛んだ。それらをいぶかしがる言葉も多数届く。ずっと私を悩ませる大きな問題だった。その後、被災された方にイベントでお会いした時、「いつも通り発信していただけていたことが励みになった」と言われ、少しだけ救われた。「気持ちが楽しくなる情報、ホッとできるような情報を毎日つつがなく発信し続けることに意味があるのだ」と幾度となく気持ちを立て直してきた。

これは あなたの手帖です。いろいろのことがここには書きつけてある。この中のどれか一つ二つはすぐ今日あなたの暮しに役立ち、せめてどれかもう一つ二つはすぐには役に立たないように見えてもやがてこころの底ふかく沈んでいつかあなたの暮し方を変えてしまうそんなふうなこれはあなたの暮しの手帖です。

『暮しの手帖』の創刊編集長・花森安治氏のメッセージ。毎号、雑誌を開くと書いてある。この言葉にも支えられた。

これまでにおこった非常事態と今回の状況はまるで違うけれど、原発事故の後に確かに感じていた先の見えない焦燥感と緊張を私の心身は再び感じている。全世界的に起こっていることを見つめるにつけ、それは一層高まっていく。

何回も花森氏のメッセージを反芻している。


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