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間、あわい。

東京都現代美術館『坂本龍一 | 音を視る 時を聴く』へ行った。これまでのアーティストたちとのコラボをまとめて観られるアーカイブ展、といったところ。休日に足を運んだということもあるが、開館時間から活況だった。

展示説明文の中に、空と海との間(あわい)という表現があった。あいだ、ではなく、あわい

先輩編集者の「あわい、に日本の魅力が詰まってる」というような熱弁を聞いたばかりだった。ずっと、間=あいだ、と信じて疑わなかった人生だったので、あわいの概念を手に入れただけで、だいぶと想像力の枷がはずれた気持ちになる。

あえてルビをふられた説明文が光って見えた。

「あわい」に似ている言葉に「あいだ(間)」がありますが、このふたつは少し違います。「あいだ」の語源は「空き処(ど)」で、AとBに挟まれた空間を言います。それに対して、「あわい」は「合う」を語源とし、AとBの重なるところ、交わった空間を言います。

(NHK出版デジタルマガジンより)

終盤に、坂本さんの手書きメモが展示された展示室がある。

誠実は悪徳

と書かれていたメモがあった。きっちり重なったイコールではなく、その「あわい」を坂本さんは見たのだろうか。

アーティストとの既存の展示をアーカイブするだけで展覧会ができる音楽家って、これまでにどれくらいいたのだろう? などと考えながら、最後の展示室。下調べなどしていなったので、不意をつかれる。これは泣くやろ。

自然とテクノロジーと。音と音楽と。物質と生命と。内と外と。生と死と……

人間。時間。空間……

そこかしこに無数にある「あわい」を思いを馳せた。




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