阿部寛さんのインタビュー原文 映画The Garden of Evening Mists(夕霧花園)
マレーシア、ブルネイ、シンガポールで現在上映中の映画、The Garden of Evening Mistsは、第二次世界大戦中の日本統治時代、戦後のイギリス領マラヤを舞台に描かれた原作を元に映画化されました。
光栄にも、監督のインタビューの通訳と、主演の阿部寛さんの書面での回答の翻訳を担当させていただきました。英語になったものは、こちらの記事でご覧いただけます。私の手元に残っている、翻訳前の原文をシェアさせていただきます。
日本語の方がより阿部寛さんの想いが伝わると思い、こちらに掲載させていただきます。映画をすでにご覧になった方も、まだの方も、ぜひご覧ください。
トム・リン監督に実際にお会いし、インタビューの通訳をさせていただいた時のことについては、こちらから。
(マレーシアの主要新聞社スター紙の記事)
(以下、原文ママ)
1) Tell us about your character. (あなたの役柄について教えてください。)
第二次世界大戦後、マレーシアのジャングルでたった一人残って、戦争という負の遺産と己との戦いの中に生きたミステリアスな日本人の作庭家です。
2) What do you think are the biggest strengths and weaknesses of your characters.(あなたの役柄の長所と短所について教えて下さい。)
この役の長所は、彼が持つ多面性でしょうか。全ては謎に包まれているのですが、当時の日本国の状況 に対する思いや使命、それに日本の文化にも造詣が深い人物である事ですね。 短所は、深い悲しみを背負ったため、全ての感情を押し殺しているところでしょうか?自分を表現する方法が、限られた人物ですね。
3) Tell us how you prepared for your roles in the film.(どのように役作りをされたか教えてください。)
庭師ということもあり、実際の作庭家の方にお会いして、哲学的な部分や作庭の概念などを学んだり、当時の有名な作庭家が茶道を心の基本に置いていると知って、茶道の所作や立ち居振る舞いを学んだりもしました。当時の日本人の気質がどんなものだったかを深く考える事ができたと思います。
4) How did you develop good chemistry with each other.(どのように俳優同士で良い信頼関係を作り上げていきましたか。)
(ユンリン役の)シンジェはマレーシア人、私は日本人であり、最初はそれぞれの国の違いを良い意味で感じあい、撮影がスタートした。役柄も互いに疑念を持ちながら進行していく話で繊細さが要求されました。その雰囲気を無理せず壊さず信頼関係を持ってお互い作っていきました。監督はマレーシア人でも日本人でもない台湾人で、違う国の監督がこの映画を第三者の目で演出出来ていることがさらにこの映画に深みを与えてくれました。
5) What were the biggest difficulties you faced when playing your characters.(この役を演じるにあたり最も難しかったシーンについて教えてください。)
主人公のYun Lin に初めて会う場面ですね。このシーンで、役が決まると思って、全神経を注ぎました。
6) Tell us about your experience working with the director. What do you like most about working with him.(監督とのエピソードについて教えてください。監督と仕事をして良かったことについて聞かせてください。)
Tom Lin 監督は、非常に熱心に演者の心に寄り添って下さる監督でした。トムとも何度もディスカッションし、有朋という孤高な男を1歩1歩作っていきました。この有朋の持つ悲しみとぬくもりという繊細な演技は、監督が作り出したものです。トムは常に集中力のある素晴らしい現場を作ってくれた。監督の映画に対する愛とぬくもりと戦いが満ちあふれた最高の仕事でした。
7) Did you get to talk to the book author. How was it like meeting and conversing with book author Mr. Tan Twan Eng?(原作の著者タン・トゥワン・エンさんと会うチャンスはありましたか?その時の印象を教えてください。)
残念ながら、Mr. Tan Twan Eng さんとは何度か挨拶をするぐらいで、そんなに話をする機会は 無かったんです。しかし、お会いした時には、暖かい笑顔でご対応いただき、非常に嬉しかったのを覚えています。
8) What do you think are the most important lessons we learn from this story.(この物語からわたしたちが学ぶことができる最も大切なメッセージとは何だと思われますか。)
異なる歴史や文化、事情を 抱えた人間が、人種や国境を越え、互いに尊重し、平和という共通のビジョンを持つことができる。そういったビジョンを持つことで最後には自分自身を許すことが出来るようになるということです。
9) Of all the supporting actors and actresses who impressed you the most and why.(この映画の助演俳優たちで印象深い方について、その理由も教えてください。)
シンジェが母国の歴史的悲劇を描いたこの映画で、心に傷を抱え、苦悩に満ちた人生を送った女性を常に役柄ユンリンに深く寄り添い、演じていたことに心から感銘をうけました。あとは現場でご一緒したジョン・ハンナさんが面白かった。
10) Tell us about your new projects on cinema and television.(今後の阿部さんのご予定をお聞かせください。)
2020 年の年明けから、舞台が始まります。Henry VIII というタイトルで、私がそのHenry VIII の役を努めさせていただきます。