小説 「あの丘の上の楽園で会おう」 序章
突然、わたしたちの住む星を襲った感染症のパンデミック。
外に出ることを一切許されずに過ごした数ヶ月。
未来の見えない不安を感じる日々の中で、ここに取り残されたわたしたちは対話を重ねた。
誰にも話すことのなかった、わたしたちの家族の喪失と再生の物語を。
なぜ、わたしたちはこの時代のこの場所で出逢ったのか。
その答えは誰にもわからない。
一つだけわかることは、わたしたちには語るべき物語と知るべき物語がある。
伝えたい、伝えなくてはいけない。
知りたい、知らなくてはいけない。
このタイミングにも、出逢った場所にも、全て意味があるのだ。
舞台は、マレーシアのクアラルンプールの大都会の丘の上にそびえ立つ、緑に囲まれた丘の上の古いコンドミニアム。
「あの丘の上の楽園で会おう」
わたしたちは、この時代に生まれて来た。
そして、ここをこの時に、生きる場所として選んだ。
その約束を果たすために。
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