エリート銀行員のティンさんが夢見ること【ベトナムの人①】

今日はハノイについたばかりの頃、カフェでの注文もできずに困っていたところを助けてもらったティンさんと、再び会った。


ベトナムの一般的な男性は、ちょっとよれよれなTシャツと短パンか、ボタンが弾けそうなほどピタッと身体にフィットしたシャツとジーパン、こんな身なりをしている人が多い。

ティンさんは見たからに、一般的なベトナム人男性ではない。ジャストサイズのパリッと糊のきいたシャツを着ていて、きれいに磨かれた革靴をはいていた。ティンさんはベトナムの大きな銀行で働くエリートサラリーマンだ。



そんなベトナム人のティンさんとカフェでお茶をすることに。彼はしきりに英語を話す機会がないから、話したい。異文化に興味があるとメールで私に話していた。(私は英語ネイティブじゃないけど、いいのだろうか)


ティンさんは時間どおりにさっそうと現れた。最近の近況をお互いに話し合い、注文をしていたアルコール無しのモヒートがテーブルに届く。

ティンさんは将来、言語交換カフェを作ってフランチャイズ展開したいという夢を語り始めた。銀行での仕事は給料がどんどん上がっていて、やりがいがあるけど、何か自分でビジネスを始めたいんだ、と。

ベトナムの人は家族を大事にする古い価値観の中で生きていて、それ以外の世界もあるんだよってことを知る機会を与えたい。こんなことをティンさんは語っていた。


そこから国の経済的発展、という話題になる。

日本はいい国だ。すごく発展しているし、みんな勤勉で頭がいいから。アジア一の大国だ。ベトナムはもっと日本みたいに、世界で勝負ができる人材や企業が増えないとだめだね。

ティンさんは、カフェのお通しで出てきたヒマワリの種を、ボリボリと食べながら熱く語る。

だからこそ、僕はベトナム人が異文化を理解できるカフェを作り、いつかはそのカフェをフランチャイズ化してベトナム全土に広げるんだ。もっと開かれた心が必要で。このままじゃダメだ、貧乏な国のままだ!

ティンさんは、野外に置かれたテーブルいっぱいにヒマワリの種の殻を撒き散らして、真剣に語ってくれた。


すごくいいアイディアだね。たくさんの国の人が仲良くなれる場所がハノイに出来たら、私は一番のお客さんになるよ。オープンが今から楽しみだね。

と私は返事する。


その後、1時間くらいベトナムの歴史、なぜ発展が遅れているのか、そして政府はどんな支援をすべきなのか、エリート銀行員のティンさんは熱く丁寧に私に教えてくれた。テーブルの上は、グラスの置き場もないくらい、ティンさんが食べたヒマワリの種の殻でいっぱいになってしまった。


最後に、会計が済んでカフェをでようとしたとき。私はちょっぴりイタズラ心みたいのなが湧いてきて、ひとつ質問を投げかけた。



ねぇ、ティンさん。

発展しお金がいっぱいあるけど、暮らす人は幸せを感じていない国。お金はなくて貧乏かもしれないけど、暮らす人は幸せを感じている国。

ティンさんはどっちの国に住みたいの?



ティンさんは迷わずに言った。

お金がなくても、幸せな国に決まってるだろ!


ティンさんの最後の力強い言葉、生ぬるい風、散らばったヒマワリの種。今日は、そんなハノイの1日でした。

【ハノイ生活29日目】


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