生きる場所って大事だな、と言うお話
ひんやりと13度まで気温が下がった首都ハノイを出て、ベトナム中部の沿岸都市ダナンまでやってきた。
前からお世話になっていたベトナム人のお兄さんが、拠点をハノイからダナンへ引っ越すとのことで、それに伴いついて来たのだ。お兄さんの会社のスタッフさんが探してピックアップしてくれたアパートの部屋が、何件回ってもどうにも気に入らない。
そこで他に知り合いもいない土地で、自分で家を探さなければならなくなった。自分で招いたことなんだけれど。
最初は海から少し距離がある場所で生活をしようと決めていた。なぜって、そんな海の近くに住んだら、なんだか心がソワソワと落ち着かなくなってしまうのではないかと怖かったから。四方を山に囲まれたThe 盆地で生まれ育った私にとって「海」は、非日常であるのだ。
しかし私が今住んでいる家は、海から徒歩30秒の場所にある。朝方に窓を開けると、ざぶんざぶんと波が踊る音が聞こえる。
全然予定になかったけれど、予算の関係で今の家にたどり着いた。最初は海近かぁと思っていたけれど、部屋を内覧した瞬間に即決した。窓がとても大きくて、大きなベッドと洗濯機があったから。私はここで寝て起きてを繰り返したいと思った。
リゾート地のど真ん中なので(だから少し家賃が安いのだろう)ホテルが立ち並び、夜になるとにぎやかになる。となりのホテルのルーフトップバーでは、毎晩生バンドの演奏が行われている。それもまぁ10時半ころには終わるので、寝るには困らない。
そうそう今日でダナンに越して来て、ちょうど1週間経った。なんというか私は輪郭がない幸せで満ちている。
昨日の晩、海が見える窓を全開にすると、窓から生バンドがボブ・ディランを奏でるのが聞こえてきた。
いつもは流行りのPOPSなんだけれど、昨夜はオールディーズ特集で60年代のロックがずっと流れていた。特にこのKnockin' On Heaven's Doorは何度も繰り返し演奏されていたから、きっと観客がリクエストをしたんだと思う。
夜になってすっかり暑さが抜けた海風を感じ、ボブ・ディランを聞きながら、路上で買ったパイナップルを食べていた。
きっとこんな映画のワンシーンのような生活は、長く続かないと思う。いつかはきっとこの場所を出ていく日が来ると分かっている。
でも本当に。海の近くで、ただそれだけで幸せだ。
海の街、ダナンに越してきて本当に良かった。
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