音楽し学校(毎週ショートショートnote)

背筋を伸ばし、胸いっぱいに息を吸い込む。桜が散り、色とりどりの花があちこちで見かけるようになったけれど、朝一番の外の空気はやっぱり冷たい。
吸い込んだ空気が鼻にツンとくるけれど、今日はどんな日になるのかなとウキウキする心が抑えきれなくて、スキップしながら覚えたての歌を歌い出す。
トトトン、トトトン。だけど、歌い続けていくうちに、歌声はだんだんそのリズムからずれてしまう。
「お前、歌ヘタなんだよ」
誰がそう言われたのか忘れたことにしているけれど、気持ちよく歌っているこのさなかに思い出してしまい、だんだん小声になっていく。
だけど、その歌声に重なるようにカエルが鳴き出した。
「いいね、いいね、続けて、続けて」
ゲコゲコ、グワグワ、なんだか嬉しそう。
「おお春だ、春だ。待ちかねた春だ」
ボス猫が目を細め、唸るように声を出し歌い出す。
「春た、春だ、本格的な春の訪れだ」
ガァ、ガァ、ガァ。リズムなんてしっちゃこっちゃないとばかりにカラスが歌を重ね、
「おはyo、おはyo、今日もごきげんsan、san、san」
ラップで歌うはお寺の軒先のオウム。
「みんな、そろったわね。さぁ学校に向かって出発進行!」
音が外れようとも、リズムがずれようとも、みんなお構い無しに、音を楽しみ、歌で追いかけっこしながら学校を目指す。


お題はこちらの「ユニーク輪唱」から。