涙鉛筆(毎週ショートショートnote)
電動の鉛筆削りでは、もう削れないから。
筆箱の中でカタカタするから。
持ちにくくなってきたから。
2Bだと濃すぎるから。
Hだと薄すぎるから。
軸の柄、好みじゃないんだよね。
バドエン、持って行っちゃだめだってさ。
あーぁ、また軸をがじかじに噛んでさぁ……
何かでもらったけれど、使わないから。
やった、試験終わった!
筆記用具はシャーペンで十分。
……そんなことを言われて、ぼくたちは筆箱から取り除かれた。
あーぁ、もう、使われることはないのかな?
このまま燃えるゴミにされちゃうのな?
ほろりほろり、ぼくたち涙鉛筆。
そんなある日、ぼくたちに救世主が現れた。
補助軸に、カッターナイフだ。
この方のおかげで、ぼくたちは、カッターナイフで削れなくなるまで、使って貰えるのだって。やった!
だとすると、使って貰える順番は、短い順かな?
いやいや、古い順番でしょう。
筆箱に入れて持ち歩いてもらうのなら、長いのからだろ?
わいわい、ガヤガヤ。涙鉛筆に活気がわく。
そんなぼくたちに、
……いいなぁ、普通の鉛筆君達は、いつか使って貰えるって、わかるから。
その声の主は、長さいろいろ色鉛筆だ。
さらに、
――私たちは、夏になったら使って貰えるかも。と、待ち構えているのだけど。
と、クレヨンに絵の具が。
――わしたちは冬だな。
と、毛筆に硯に墨汁が。
その側で、うんうんとうなずくカラフルペンに、カラフルボールペン。
大小さまざまな消しゴムも、次々にあがる愚痴にうなづいている。
――書く道具のみんなは、また使って貰える。があるからいいよ。それに比べたら俺達は……
ピアニカ、リコーダーが、ため息混じりに音をあげた。
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2022•8•02 加筆修正