神様時計(毎週ショートショートnote)
チッ、チッ、チッ。
悠久の未来から時は留まることなく、永遠の過去へと流れていく。
チッ、チッ、チッ。
――あんた、いい目をしている。この懐中時計に持ち主と認められると、神同等の力を得ることができるといわれる。
ふと立ち寄った蚤の市。目が離せなくなり、言い値で買い求めた懐中時計。
店主は神様時計と言っていた。
チッ、チッ、チッ。
この神様時計を手にしてから、やけに秒針の音が大きく感じる。
チッ、チッ、チッ。
眠りにつくまでの間、この神様時計を見ていると、ついつい考えてしまう。
私は時の流れの歯車として、このまま生きていくのだろうか。……とか、
それとも、動き続ける秒針のように、同じところをぐるぐる回り続けるのだろうか。……などとか、
チッ、チッ、チッ。
……考えても仕方ないことだと、わかりきっているのに。
チッ、チッ、チッ。
――もし、この世界に神が存在するのならば、今、私が、秒針が進む様を眺めるように、この世界を見ているだけなのかもな。
ギリギリギリギリ……
神様時計のつまみが独りでに動き、私の意識は、考えたこと、見たことすべてを巻き取られ、深い眠りの奥底へと落ちていく。
2022•7•3加筆修正
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