レッスン1《動きたがっている右足》
今日のAさん[2016/6/14]
参加者はAさんと旧友お二人、合計3名。
会場は市内のカフェに併設されたカルチャースペース
ピータイルの床(土足)
備品のイス(背もたれ付き)
☆素足で立って汚れても良いようにコットンのソックス着用
*Aさんの依頼によりプライベートクラスのように始まったクラスのため、Aさんに合わせて説明や繰り返しなどが多くなること、エクササイズの流れを止める場合があることを旧友お二人に承諾していただいて始めました。
初めてAさんの身体に直接触れたので聞き取りしながらの60分でした。
体操に最適のイスを探す
まずはイス選びから。
お借りした会場には高さ、座面の角度や素材が異なる数種類のイスがあったのですべてのイスに座ってもらい、Aさんが安定して座れる椅子を探しました。
座面が床と平行で股関節の動きを妨げず、
膝が直角になり、足の裏が床に密着できる高さがベスト。
座面が板で固いイスは座骨に痛みを感じるためNG。
クッションが厚く柔らかいイスは坐骨を感じにくいためNG。
さあ!いよいよレッスンです!!
《手足の指から始めよう!》
椅子に座って体操をする際、足の裏でしっかりと床を踏めていることはとても大切。
足の裏の安定→骨盤の安定→上半身の安定→背骨の自然なS字カーブ→
首の正常位置→肩のリラックス
と言う流れで肩凝りが改善されるわけですが、足を平行に保って立てない場合、座っても両足を左右対称に保ちにくいため、座る前にまず立位の足をチェックします。
Aさんは画家さんなので椅子での作業が長く、自然な着座姿勢が取れないと対処療法的に肩凝り解消エクササイズを行っても根本的な解決になりません。
1.足を左右平行に肩幅に開いて立ってみよう
これが思いの外むずかしい!
始めてこの立ち方をすると多くの方が、爪先が開く、膝と爪先の方向が異なる等、生活習慣で身についた癖をもっておられます。
レッスンを繰り返すうちに股関節や仙腸関節のアライメントが整うと目を閉じて立っても左右平行肩幅に立てるようになります。
Aさんの場合、立てるようになって8年間足を右斜め後ろに突っ張る様にして歩いていたため膝が外に向き、踵が床に着きにくい。
手でお手伝いして床に着けますが、数分で爪先が外側にひらいて踵が浮き、爪先立ちになります。
感覚が麻痺しているため足がどこに向いているのか意識できず、知らないうちに動いてしまうのです。
この日はAさんが目で見て確認しても、自力では元に戻せませんでした。
私が手伝えば動かせるので筋肉が固まっていると言うより、脳からの連絡が届いていない状態に見えました。
この時点ではまだAさんが近い将来、杖なしで歩けるようになると予想していなかったため、改善前の写真や動画撮影を思いつかなかったのが残念!
肩凝り以外の悩み
毎日長時間絵を描くために長年悩んでいる肩凝りを何とかしたい!
という希望から始まったクラスですが、足のポジションをチェックしている間に麻痺した足のことを話されました。
「杖を使って歩けるようになっただけでもありがたいけれど、
麻痺した右足の土踏まずがコブのように固く横に出っ張っていて、
どんな靴を履いても変形してしまうし、綺麗なデザインの靴を履きたい!」
素足で歩いてもらうと踵が地面に届かない代わりに、
出っ張っている土踏まずが踵の役目をしていることがわかりました。
医師からは骨が変形しているので元には戻らないと診断されたそう。
話を聞きながら5~6分、痛みがあるか確認しながら土踏まずをさすったり揉んだりしていると明らかにコブが一回り小さくなりました。
一緒に参加されたAさんの旧友お二人が見てもわかるほどコブが小さくなっていたのです。
痛みや凝りも感じず、今までコブをケアしたことが無かったため、
ほんの5分で一回り小さくなったことに非常に驚かれました。
膨らんだ位置から推測すると舟状骨が土踏まず側にずれ、
その形にそって筋肉が付いたと推測しました。
ピンと来た!
骨の変形ではなく骨の位置がずれた状態なら、何とか出来そうな予感!!
*舟状骨を正常位置に戻そう。
*しばらくは足の裏を意識して正しく立つ、座るの練習に集中しよう。
《麻痺した足は動きたがっている》
この日始めてAさんのスパッツ姿を拝見しました。
予想通り麻痺した右足の筋肉は10年以上麻痺した足とは思えない
太さ弾力共に健康的な状態でした。
なぜ予想したかというと、打合せの時スカートの下から見えていた膝から下の筋肉が、動く足と大差ない太さであるのに着目していたからです。
もちろん左右を比べると麻痺した足は10%ほどほっそりしている印象でしたが、通常長期間使わなかった筋肉にみられるような著しい衰えが見られませんでした。
麻痺した足はご本人が気付かないうちにこっそり活動しているのではないかしら?
このひらめきは針の先ほどのピン!で、この気付きをきっかけに後々あれほど回復していくとは想像もしませんでした。
まずは最初の目的、鎧のように固くなった肩凝りの解消が最重要課題!
加えて土踏まずを少しでも正常な形に戻しておしゃれな靴を履きたいと言うご希望もかなえたい!
(宿題)土踏まずの舟状骨を元に戻すマッサージを説明し毎日の宿題にしました。
《Aさんのスナップ写真1》
靴を履いて立った状態
(*この写真はレッスン2~3回目のレッスン後に撮影したものです。)
紐をゆるゆるに結んだ靴で来られたので、私がイアンセキュアノットでかっちり結び、足と靴がフィットするとどれくらい体勢が安定するのかをお伝えした直後の写真。
土踏まず側に飛び出した舟状骨を私が揉み、少しコブが小さくなった状態で靴紐を結びました。
せっかく正常位置に戻りそうな舟状骨を靴でしっかり固定し、
日常的に歩きながら飛び出す再発を防ぎたいという目的もありました。
10年ぶりに右踵が地面についたのを驚かれたので記念撮影をしました。
踵がつくと爪先の方向も自然に前を向き、左右揃った状態になりました。
この体験でスックと立っている感じをAさんに味わってもらい、両足でまっすぐ立つことで上半身も快適になる事を実感してもらえたと思います。
近い将来こうなりたい!という具体的なイメージ。
なれるだろう!という希望の実感。
この二つがレッスンを続ける大きな力になると思います。
イアンセキュアノットはこちら↓
Aさんは杖で歩けるようになってから8年間スリップオンタイプの靴や、靴紐をゆるく結び、立ったままで靴べらを使い靴を脱ぎ履きしていました。
外出先で靴を脱ぐ予定のある日はmy靴べらを持参されていました。
ゆるい靴を履くのには理由がありました。
・右足が突っ張って思うように曲らないため、しゃがんで紐をほどいたり結ぶのが難しい。
・イスがあれば良いけれど、無いときに床に座って履くと、誰かに助けてもらわなければ立ち上がれないので座りたくない。
事情はどうあれ、靴が足にフィットしないと足も軽快に出せず、着地の感覚が掴みにくいため危険です。
特に弘前では冬期に雪や凍結が転倒の原因になり易いため、何とか改善したいと思いました。
写真で見てわかるように紐をかっちり結ぶと麻痺のため浮いていた右踵が自然に床についています。
靴が足にフィットするだけでも安定して足を床に密着しやすくなります。
現時点では感覚麻痺のため着地の感じを得にくいので靴のフィット感を気にされていないけれど、直接正しい刺激を与え続ける事で足の感覚がよみがえるのではないかという予感がありました。
Aさんにはできる限り紐靴を履くこと。
時間が掛って面倒でもイスがあるところでは毎回座って靴紐をかっちり結ぶことを勧めました。
このわずか数ヶ月後に恐れること無く床に座って靴を履き、助けを必要とせずAさん一人で立てるようになるとは誰も予想していませんでした。
それはまさ寝返りを身につけた赤ちゃんの運動機能がみるみる発達していく過程そのものでした。
あれやこれやであっという間の60分
この日のレッスンは60分。
プログラムに会わせて選んだクラシックベースの音楽をBGM代わりに流して行いました。
しばらくは音楽に合わなくても気にしない。まずは色々動いてもらいます。
30分経過したあたりからAさんは息が上がり
「まだ続くのですか?」と冗談交じりに言われます。
猫背で両肩が前に巻いていて呼吸が浅く、酸欠になってしまうのが原因。
休憩を入れながら60分頑張ってもらいました。
この日レッスンを進めながら、一方的に対処療法的なプログラムを提供するのでは無く、Aさんの現状を私が把握し、Aさん自身にも理解していただくことが必要だと実感しました。
Aさんは2年頑張ったリハビリのお陰で、一生車椅子生活と思っていたのに歩けるようになった満足と感謝から、右足は元に戻らない事を納得しておられました。
でも右足は動きたがっている!
ピン!と来た私の直感と
Aさんの明るさ、元気さで何とかなる。
そんな印象で初日レッスンを終えました。
【今日のピン!】
1.右足は麻痺しているが筋肉は健康。
2.8年間杖を使って歩いた結果、骨盤が傾いている→左股間節痛。
3.土踏まずの変形は骨の変形では無く舟状骨のずれ。
【今日のレッスンプログラム】60分
1. 立位プリエ→着座
2. 肩甲骨ストレッチ
3. 首ストレッチ
4. 手指揉み、手首回し
5. 足指揉み、足首回し、土踏まずほぐし、脛ツボ押し
(ここまでで20分 特に4と5が感覚麻痺の改善に効く!と後々わかる)
6. コントラクション
7. YM雅楽
8. YM白鳥
9. YMバンザイ足あげ
各エクササイズにつきましては別マガジンで解説していきます。
最後までお読み下さってありがとうございます。
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プロローグをお読みいただくと今後の進捗をご一緒に楽しんでいただけると思います。
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