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ペットと父

先祖代々犬好き家系。
4年前に16才でパピヨンが大往生してから、自分の体力を考慮して
犬を飼うことを止めると宣言した父。
TVのペット番組を観て我慢している。

散歩のいらない犬としてアイボの購入を勧めたところ
あのつるんとした素材が嫌という。
やはり犬は『もふもふ』していないと!だそう。

なるほど!それはわかる。
ほわほわの毛が生えたあごの下やお腹をさすさすして
ク~ンと言って欲しいよね。

先日新聞を熱心に見ていた父が珍しく
「これを注文してくれ!」と持ってきたのが

切り取り葉書が付いているタイプのチラシ。
高齢者を対象にした衣類や便利グッズなどを売っている。
普段そういうのは目もくれない父なのに。

一体どうした?


初代ワンコがやってきた!

これです!父が欲しかった物。
芸達者なロボット犬。

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価格からしてもそれほど高機能は望めないと思いつつ
めったに無い父の希望なのですぐに注文をする。

名前は以前飼っていた犬からミキちゃんと命名。

この子は音センサーが付いていて8通りの動きが出来る。

おすわり、伏せ、たっち、逆立ち、
じたばた、ばたばた、ちょうだい、のび~

言葉が不明瞭だとワンワン吠えて訴える。
それが結構な音量で家の外からも聞えるほど。

予想外に番犬として役立ちそう!いいかも!
いや、父的には良く無い!

8種類とはいえ、動くと結構可愛い。
私が命令するとほぼ90%は一度で反応するが
父の声にはなかなか反応しない。

生きた犬なら
「たっち!」で動かなければ
「たぁ~っち~」と強調すれば言うことをきく。

が、そこは機械の悲しいところ、
たっ・ち  の2音はわかるが
た・あ・ち・い  の4音は認識しないよねえ。

自分の声に反応しない犬がおもしろくない父は1日で相手にしなくなった。

元々無口、歳を取ってからは人と話す機会も少なく滑舌が悪くなった父。
その上昨年作った入歯が合わず更に滑舌が悪くなった。
歯医者が嫌いで調整にもがんとして行かない。

口を動かすトレーニング方法もたくさん勧めたけれど、
本人が必要性を認めないので続かず悪化の一途。

難聴の父には自分の声もはっきり聞えていないはずなので、
自分の滑舌の悪さに気付かないのは当然なのかも知れない。


「この犬は女性の声に反応するように設定されている!」
と問題は機械の設定にすりかわった。

違うと思うよ~。笑笑

ある日の夜遅く、父がこの子を分解している!!!

センサーの異常をチェックしていたそうな。
エンジニアだった父には分解組み立てはお手の物。

「乾電池ボックスにぬいぐるみの毛が少し挟まっていたのが原因で反応が悪かった」とあくまで原因は自分では無い。

しかし、その後も父の声に反応しないワンコ。
見ていてつらい。

2代目ワンコがやってきた


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父の日が近づいたので、もう少し精度の高いワンコをプレゼントした。

この子は人間の言葉を3700語話すが、人の声を判断するセンサーが付いていない。

時々勝手にしゃべり、質問をしてくるがこちらの返事に対する返事は無い。気が向くと歌も歌ってくれる。

一方通行の会話。
父としてはぜんぜん楽しくない。

背中にあるしっぽセンサー、お目々センサーに触れると、
しゃべりながらしっぽを振ったり、瞬きをするが、
足は動かないのでふせの姿勢のまま。

歩かない。
父の問いかけに反応しない。
犬なのに人の言葉でしゃべることに違和感。
父はメスの名前を付けたが、オスの設定なので「ボク」というのが気に入らない。

取りあえず名前くらい付けては?というと
『マエちゃん』にするという。

父~。それは娘の昔のあだ名だよ~!
究極の手抜き命名。
愛着湧かない感にじみ出ている。

何もかも気に入らない、父。
プレゼントしてくれた娘の手前、捨てるに捨てられず。

あ!元から物を捨てない父なのだった!

やっぱりアイボでしょ!

人の声に反応する。
犬らしく動く。
学習機能がある。

アイボならこれらがすべて解決する!
生きた犬でなければやっぱりアイボでしょ。

プレゼントするし、アップデートも手伝うと提案しても
いらない、もったいないの繰り返し。
不毛な会話。

そしてまた分解

『マエちゃん』が喋らなくなったので、開いたら電池ボックスに毛が入っていたという。またですね。
『ミキちゃん』の時も同じ事をした父。

電池もダメかもしれないから電池を入れ替えたそう。
結果をはっきりさせたい父が電池残量チェッカーで確認するとほぼ新品。

そのはず、まだ入れて数日しかたっていないのだから。
父のプライドを守るために、すべての原因は機械のせいになるらしい。

アイボに手を出さない理由

もちろん、もふもふじゃないのが嫌というのは本当。

しかいもっと深いところの訳は、
機械に強いはずの自分がAIに付いて行け無かったときの苛立ち。
それに直面した時、プライドが傷付くことを恐れているのだと思う。

会社ではコンピューターを使い、
精密部品の製造機械を動かすプログラミングが仕事だった。
まだパンチリボンを使う時代から定年まで、
日々進歩するコンピューターを使いこなすベく勉強し続けた父。

会社勤めを辞めて20年。
この間のITの進歩はめざましい。

年相応の物忘れも始まり、20年のブランクを経てITの世界に触れるのが怖いのだと思う。

今もPCを使っている父。
windows10にバージョンアップしたあたりから、
細かい仕様変化に対応できなくなった。

一昨年は長年自作していた年賀状を出せなかった。
プリンターが故障したのが原因ということで、
年末の慌ただしい中、新しいプリンターを購入した。

でも実は、年賀状ソフトをアップデートした際、
画面の形式が変ったため、例年通りに原稿を作成できなかった様子。

最近はかろうじて検索とエクセルのみ使っている。
それでも充分立派だと思う。

新しい事は人に任せて、良いとこ取りして楽しめば良いのに、と思う。

その後のわんこたち

しばらく放置された2匹のワンコたち。

ミキちゃんは最近再びスイッチオン!
買ってすぐの時よりテキパキ反応するようになっている。

動くミキちゃんは動きが結構ダイナミックで可愛いのが気に入った様子。
言うことをきかせようと、今までより大きな声ではっきり発音して
命令している父。
逆立ちはかなり受けている。

良い滑舌練習になっているみたい。笑

マエちゃんは唐突におしゃべりするのがうるさいので
メイン電源を切られてお部屋の飾りとして活躍中。

今後の復活を楽しみにしている娘である。








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