さとゆみゼミ#6|佐藤明美 編集長(小学館kufura)に話を聞く
佐藤明美さん(小学館 kufura 編集長)にお話を伺った。テーマは「編集者がライターに求めること」。
結論から言う。
お話を聞けていなかったら、危なかった。つまらない記事をコツコツ書き続け、そのうち、AIにぶん投げられていたかもしれない。
佐藤編集長の講義は、ライターとして生きていく「要」になった。グンっと視界を広げられ、ライターという仕事の「面白さと責任」を飲み込んだ。
あなたしか書けないことを、1センテンスだけでも書いてください。
北川景子さんのインタビュー記事の紹介があった。
この文章は、北川さんの言葉でもないし質問でもない。ライターの観察から生まれた「感想」である。なぜこれが必要か?
出演作品の紹介を兼ねた「囲み取材」では、多くの媒体がインタビューを待っている。よって、限られた質問しかできない。得られる情報も似たり寄ったりになるのが常だそう。
そんな状況で「媒体らしさ、北川さんらしさ」を表現したのが、先の文章だ。
「たくさん観察力して、面白がりな人であってください。」のメッセージが心にグサリと刺さった瞬間。
自分は何を磨いて、何で勝負するのか
AIの発達によって、WEB記事は次々と量産されるだろう。一方で「文字仕事のニーズ」はどんどん広がっている。
記事は、WEB記事やインスタ、リール動画などに二次利用される。媒体によって読者層も変われば、タイトルや文字量も柔軟に変えていく必要がある。
今後、ライターとして武器になるスキルとは。
コンテンツ設計ができる(エディター)
簡単な撮影ができる(動画も)
写真への文字のせ
動画の構成(YouTube、リールのテロップ書き)
「自分はどこまでできるのか、どこまでやりたいのか」を考え続けること。ライターとして生き残る秘訣。何を磨いて、何で勝負するのかを見極める。
言葉を預かる=思いを預かる
情報元とのコミュニケーションは「誠実に」が基本である。取材なら、取材相手との関わり。預かった言葉は「誠実に」扱う。
「言葉を預かったなら、曲がりのないように伝えるのがライターの役割です」。と佐藤編集長はおっしゃった。
預かった言葉(思い)を極力そのままに、読者に届ける。重くもせず軽くもせず、そのままに。
取材相手の表情や仕草に「思い」が隠れているかもしれない。勝手な解釈はいけないが、その可能性もあるということ。
千切りキャベツから激うま料理へ
kufuraへの企画を考え、課題提出していた。当の編集長から講評をいただける。普通ならあり得ない機会だ。
わたしが出した企画は「ALT(外国籍指導助手)に話を聞いて、日本での印象(嬉しかったことや悲しかったこと)を聞く」というもの。
「kufuraの読者には印象が弱い。遠い感じがする」という評価だったが、代替案も出してくださった。
「小学校の英語補助教員の外国籍先生に聞く!
日本の子どもたち『ココは伸ばせる!』『ココはもったいない』」
なんということでしょう。同じ情報元(材料)から、こんなに面白そうな切り口が生まれるのか……。
わたしの企画が、材料を切っただけの「千切りキャベツ」だとしたら、素材の旨みを全面に出した「絶品料理」を見せられた気分。
捨てたもんじゃない、と思った。私だって、読者の目ん玉に、私の目ん玉を合わせて考えれば…。キャベツはあるんだから、腕次第、アイデア次第だ。
最後に
約1時間に及ぶ講義だった。ここに記したのは、そのうちの10分ほどの内容だろう。
雑誌・WEBでの経験で勝ち取られた、佐藤編集長の「生の知見」をお裾分けしていただいた。オンラインではあるが時を共にして、実際に拝聴できる経験は貴重だった。既存の知識が裏づけられたりひっくり返されたりしながら、最後にはストンと腑に落ちた。
心から思うのは「この講義を受けられて、運が良かった」。ということ。ライターとして生き抜く、勝ち筋が見えた気がする。