さとゆみゼミ#3「犯人しか知らない言葉」を研ぎ澄ます
「犯人しか知らない言葉」の効用について書きたい。最初に言ってしまうと、さとゆみさんの話を聞きながら、胸が熱くなり涙腺にまで伝わった。悲しくもないのに涙が出た。
犯人しか知らない言葉の凄さ。それが最も心に残った。
犯人しか知らない言葉を使う
島田紳助さんが、吉本の後輩芸人に行った「伝説の講義」での言葉だそう。
漫才にリアリティを持たせるテクニックとして紹介されたらしい。
「犯人しか知らない言葉」=「本人しか知らないエピソード」五感で書く。ディテールを伝える。
オール阪神・巨人さんの、漫才の一コマを例に出された。
「一万円を拾った」
↓
「雨が降っていて、アスファルトに一万円札がピターっと貼り付いていて、破れないようにそーっと剥がした」
本人だけが語れる個人的なエピソードを盛り込むと、読者が前のめりになる。話に引き込まれる。
「雷に打たれたような衝撃」とはつまり?
さとゆみさんから、インタビュー記事の裏話を聞いた。胸が熱くなり、涙で視界が揺らいだ。「犯人しか知らない言葉」の凄さよ。
さとゆみさんご自身のメディアCOLECOR.JP(コレカラ)で三浦一馬さんをインタビューされたときのこと。※バンドネオンという楽器の演奏家
三浦一馬さんは最初、バンドネオンとの出会いを「雷に打たれたような衝撃だった」と表現されたらしい。
さとゆみさんは、さらに「場所はどこだったのですか」と質問された。三浦さんも、その質問をきっかけに、当時の状況を思い出されたとのこと。記事を読むと、三浦さんのバンドネオンを見たときの衝撃や、逸る気持ちが伝わってくる。
この後、バンドネオンの巨匠に初めて演奏を聴いてもらう場面。三浦さんがとても「緊張している」場面を、記事では次のように表現している。
「雷に打たれたような衝撃」という文言は、三浦さんにインタビューした他の記事でも使われていたという。本人も言い慣れた表現だったに違いない。
本人にしか語れないエピソード書く。読者の脳内に映像を作る。気持ちを聞くのではなく、そのときの状況や行動を細かく聞く。インタビュイーの記憶のトリガーを探す。
インタビュー記事にはライターの姿がにじむ
インタビュー記事にライターが自分の意見を書くことはない。しかし、原稿にはライターの姿がにじむ。
インタビュイーの言葉しか書かれていなくても、記事の解像度に現れる。
感想だけで終わらせない。
どこで?いつ?誰といた?天気は?寒かった?暑かった?すべて聞けないにしても、読者の脳内に映像を描くため、必要な情報を取りに行く。
書けなくなるのは好転反応だ
前回の課題は「推しを400文字で書く」だった。ほとんどのメンバーが「難しかった」「時間がかかった」と答えた。
私もしかり。書いては消してこねくり回して、400文字書くのに3時間くらいかかった。そのことに関して、さとゆみさんは次のようにおっしゃった。
課題を通して「なんとなく生きていた」という事実に直面した。エピソードはあっても、そのときの状況を五感をつかって語れない。犯人しか知らない言葉が、見つからない。
ゼミメンバーと話し合ったのは「なぜそれを選んだのか」「どんな気持ちなのか」など、ふだんから敏感になっていこう、ということ。言語化していく。
メンバーのそんな感想を聞き、さとゆみさんは「沼に入ってるね」とニヤリ。
感想を言いたくなったらチャンス。感想を言われたらチャンス。行動や状況、体の反応で表してみよう。
3カ月、いっぱい考えてぐるぐるしよう。めいいっぱい、面倒くさい人間になろう。