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セックスレスでしたが、妻を誘ってみました。

しばらく妻の不倫を疑っていた。

実際のところ今も若干不安な気持ちはあるが、ラインの通知はパッタリと無くなったし、普段の生活にはなにも変化がない。
もしかしたら妻は本当に「シロ」かもしれない。


僕の疑念の根っこには、妻の心が離れていってしまったという焦燥感があった。

子どもはもう7歳で、僕ら夫婦は34歳になった。
付き合いは10年を超え、いわゆるマンネリすら当たり前の生活になってしまった。


このままでは、妻が他の人との関係を外に求めていたとしても、僕は100%で否定できない。気がする。


こんな夫婦生活をなんとか打開しようと、ここ数日色々と動いていた。


夫婦の会話もほとんど業務連絡みたいなものになっていたから、他愛のない話題を振ってみたり、

仕事帰りにコンビニでちょっとしたスイーツをお土産に買って帰ってみたり。



とにかく妻の心をこっちに引き寄せたい一心で…。
でも求愛する野生動物みたいな手法しか思いつかなくて、僕の方がむしろ不自然な行動が増えていたと思う。



昨日の夜、意を決して抱き寄せてみた。

家の中、リビングとトイレの間の小さな廊下で。


妻は驚いた様子で、抱き寄せた瞬間こそ僕を退けようとしてきたが、すぐに体を預けてくれた。


僕の体にも手を回してくれるかと期待したが、妻は僕に抱きよせられるばかりだった。


「なに急に?」


体を預ける妻が、小さな声で聞いた。


まだ若かった頃には、妻はこんな時、甘える子どものような声で僕に言葉を掛けてくれた。


そんな可愛かった妻の声を期待していた。


でも、この状況を不思議がって確認する妻の声は、普段の業務連絡を交わす時の、低い抑揚のない声だった。



妻の心は、僕が思っていたよりも遠くに行ってしまったのかもしれない、と思った。


もしかしたらもう2度と、妻と僕は、心も体も交わすことはないのかもしれない。


少し強引に、妻にキスをしてみた。

セックスをねだる若い男のように、無理やりくちびるを重ねた。



妻の唇は固く閉ざされていて、僕が体の中に入る事を拒否するみたいだった。



「無理だよ、今更無理」



目を合わせる事もなく吐き出された言葉。



家の中で、こんなに孤独を感じる事になるとは思ってもいなかった。


もしかしたら、僕より先に、妻の方がこんな気持ちを感じていたのかもしれない。


これからの2人は、近づくことのない心の距離と折り合いをつけながら子育てだけを目的にした生活を続けていくのだろうか。


それはとても寂しいことで、僕は妻にそんな思いをさせる事になるのか。


それなら、もし不倫をしているとして、していなくても、それくらい許容していくべきなんじゃないか…。


頭の中がグルグルしている。

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