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不倫を認めた妻と、新しい家族のカタチを探す。

※前回からのつづきです。

娘が寝たあと、僕ら夫婦は自分たちの現在地や考え、お互いが認識している事実を確認しあった。

僕が話した事は、
・ラインを見てしまったことについての謝罪
・その末に不倫を知ってしまったこと
・でも、そもそも疑っていたこと

そしてその上で、
夫婦の関係に溝ができた事には、
僕の家庭内での振る舞いがひとつの要因になっている自覚がある事を話した。

妻は泣いていたが、いわゆる「女の涙」的な同情を引くための芝居じみたものではなかった。
その堪えるような涙には、反省と後悔と、抗えなかった誘惑を今なお否定しきれない往生際の悪さが入り混じっていた。


彼女はしきりに「取り返しのつかない事をした」と口にした。
それは、自分のした事をある種正当化しているように見えた。

謝罪というよりは、倫理に反する行為をした自分の罪を僕と一緒に確認するかのような、
そんなやりとりだった。

それはつまり、例の不倫相手との関係が彼女にとってもはや断ち切れないほど重大なものになっている事を証明していた。


夫婦って一体なんなんだろうか。

甘酸っぱい恋愛感情なんて遥か彼方の思い出で、
僕と彼女はひとつ屋根の下、衣食をともにするだけの利害的な関係でしかない。

「子はかすがい」とはよく言ったもので、
娘がいなければ、僕らはとうの昔に終わっていたはずだ。


さっきまで溢れていた涙は、
彼女との確認作業ですっかり干からびていた。

驚くほど冷静な僕がそこにいて、
10月から2ヶ月かけてゆっくりと覚悟してきた現実を、ただ作業的に淡々と受け止めていた。


冷静に受け止めながら、分かった事はニつだ。

第一に、僕らはもう修復が出来ないであろう事。
妻はもう僕に「同居人」以上の感情は抱いていなかった。
不倫相手との関係が彼女にとってあまりに大きく、きっと彼こそが彼女の人生の正解だと確信しているようだった。
倫理を犯した事に対しての背徳感はあれど、その被害者である僕に対しては全く罪悪感を抱いていない様子だった。
僕の心もそんな彼女に固執出来るほど、もう熱を上げてはいなかった。

第二に、やはり僕の過重労働というスタイルは間違っていた事。
とは言え、そんな彼女を責めきれないのは、やはり僕自身に後ろめたさがあるからに他ならない。
不倫は結果であって、僕が家庭を犠牲にしてきた事や、妻に苦労をかけてきた事は否めない事実だ。
僕がもう少し器用だったら、また違う結果を生んでいたんじゃないかと思う。


話はいくつもの沈黙を挟みながら進み、
明確な結論に至らないまま最後の沈黙に不時着した。
時間は既に午前1時を回っていた。


これから僕ら夫婦はどこに向かっていけばいいのか。
いくつもの話合いを重ねて決めていかなければならない。


先延ばし出来ない問題を抱えながら、
僕らはひとまず寝る事にしたのだった。




これが12月の半ばに起きた出来事だった。
僕の仕事は繁忙期を迎え、幸いにも気を紛らす事が出来たが、
今なお夫婦関係の行先は未定のままだ。


関係の修復は諦めつつも、僕は今年転職しようと思う。

今回のことで、残業続きのこの仕事が自分を幸せにしてくれる事はない事に気がついたから。

僕らは別れるのだろうか。

その場合は、娘はどうなるんだろう。

別れずに、妻の不倫を容認する事なんてできるんだろうか。
そんな夫婦がいるんだろうか。

別れてしまって、僕が娘の親権をとる事はやはり難しいのか。


あらゆる可能性を考慮しながら、
僕も妻も娘も幸せになれる選択が出来たらと思う。
そんな事が可能なら、そうしたい。

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