見出し画像

妻のいない土曜日

※特定が怖いので、一部脚色など織り交ぜて書きます。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今日、妻は実家へ戻った。
今月3度目だ。

妻の実家には4つ上のお姉さんがいる。
彼女は10代の頃に統合失調症を患ったあと、20年以上ほとんど引きこもって生活している。

今は病気も治まり、時々外に出かけたりもしている様だけど、社会復帰は絶望的。
中学で発症した為、高校進学も出来ず、学歴は中卒。
定職に就いた事は一度もない。

狭い世界で生きる彼女にとって、心許せる唯一の存在が実の妹であり、僕の妻なのだ。
妻は月に2回ほど土曜日に呼び出され、単身実家へ泊まりに出かけている。


そんな姉にとって、僕と娘の存在は忌むべきもののようだ。
何度かお会いした事はあるが、とても攻撃的な目を向けられたのを覚えている。


罵声を浴びせられたこともあるが、義理とはいえ家族なんだし、と言い聞かせてなんとか関係を築こうと努力したこともあった。

でも娘が出来てからは、単純に娘に危害を加えられるのが怖くて、あまり近寄らない様になってしまった。


妻も喜んで会いに行っているわけではなく、自分が行かなければご両親に被害が出るので仕方なく対応しているというのが実情だ。


姉も家庭を持つ妹に気を遣ってはくれている様で、呼び出しも月に2度程度には抑えてくれている。
土曜日なのは僕が休みで、娘を預けられるからという理由で妻の方から切り出した条件なのかもしれない。

とにかくそんな理由で、妻は隔週くらいで実家へ帰省している。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

しかしここ数ヶ月、今まで2度だった帰省が3度ほどに増えている。
7月には4度呼び出され、毎週実家へ帰っていた。

妻曰く、今はお姉さんの具合が今までにないくらい悪いのだそうだ。

そして今日も妻は、10月に入って3度目の帰省で家を空けている。


でもよくよく考えると、僕は本当に妻が実家へ帰っているのか知らないのだ。

姉とのやりとりを見せてもらったことも無ければ、

「今日、妻はそちらへ帰っていますか?」

なんて毎回実家のお義母さんに問い合わせしているわけでもない。


妻は月に何度か実家へ戻る。
これがうちの普通であり、日常だから気にした事すらなかった。


ふと、「これが逢瀬の口実だったら?」
なんてよぎったのは、例のライン通知を見てからだった。


なぜだろうか。

ただライン通知が来ていただけなのに。

あれをきっかけにして、すべてが靄がかって見えるようになってしまった。


今夜きみは、本当に実家にいるのか?




確認する事すら出来ないくらい、僕ら夫婦は冷え切ってしまったのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?