メンタリング日記<プロダクト編>
日々起業家から受ける相談をもとに日記でご紹介させて頂いています。
本日はプロダクト編です。プロダクト(顧客に提供する商品・サービスのこと)をどのように開発し、どう売っていけば良いのか?といった非常にコアなご相談を受けることが有るので、その辺をまとめてみました。
1.課題に向き合っているか
私がご相談を受ける起業家の多くは技術志向の研究者の方が非常に多いです。その為ほとんどが自身の専門分野などの技術を使ってモノやサービスを作りたくてうずうずしている方々ですね(笑)。
先日もこんな会話がありました
私、こんな素晴らしい技術を見つけたんです!
これをコア技術として事業化しようと思っているんです。
そこで、特許申請費用を捻出したいので資金調達したいのです、
その為に起業したいんですよ!!
と、、、これ何かおかしいと思いませんか?
そうなんです。顧客視点が全く語られていないのです。
実際に顧客に提供する為のプロダクトを開発する上で最も大切なことは顧客の持つ本当の課題に向き合っているか?なのです。これに尽きます!
課題に向き合う際は技術は一切考えないでください。素直に顧客の持つ課題に向き合い、課題を掘り下げることが最も重要です。
仮に、ここで言う起業家が取り組んで来た技術・業界に深い知見が有るのなら、そこで日々目にしている課題は本当の課題なのでしょうか?
本当の課題かどうか?を掘り下げること!!
その課題は「なぜ」起きるのか?という視点を持ってください。
「なぜ」&「なぜ」&「なぜ」&「なぜ」&「なぜ」
「なぜ」を5回以上繰り返すと本来解決すべき「質の高い課題」を見つけ出すことができるようになっていきます。
例えば
「なぜ」人はワクワクを求めるの? → 毎日の生活が退屈だから
「なぜ」毎日の生活が退屈なの? → 職場に変化が少ないから
「なぜ」職場に変化が少ないの? → オフィスの席がいつも同じ
「なぜ」オフィスの席が同じなの? → 私物がデスクに多いから
「なぜ」私物がデスクに多いの? → ペーパーレスが普及していないから
当初の課題:「人はワクワクを求める」から掘り下げてみたら、質の高い課題は「オフィスでペーパーレスが普及していないから」となってきました。
これは誰も予想すらしなかった本来の課題が見えてきたことになります。つまり金塊を見つけたことになるのです。
質の高い課題を見つけることは、つまり本来顧客が潜在的に求めていたプロダクトを作れるようになるということなのです。結果的に売れる商材になる可能性が大なのです。
2.プロダクトデザインとPoC
このような質の高い課題を見つけだすことができたら、さて次はそれを解決する製品やサービスを考える(プロダクトデザイン)ステップに進めることになります。
ちょっと待った!すぐに技術論に走らないでください。
最初に出てきた相談者のような特許技術を持ち出すのは本末転倒なのです。
まずは、手作業(アナログ)で構わないので本当にこれを解決することで、本来求められる最上位の課題を解決してくれるのだろうか?を手を動かして確認してみることに専念しましょう。
このように検証することを一般にPoC(プルーフ・オブ・コンセプト)と言います。つまり概念を実証検証してみることです。PoCを何度も繰り返すのです。
今回の場合、デスクに積み上がっている紙類を電子化してみたり、承認など紙と印鑑だったものを電子承認にしてみたり、と実証検証を既存のツールを使ってやってみるのです。
つまり、まだプロダクト開発を始めない段階です。ここでPoCを回して本当に効果があるかを確認してみるのです。
3.MVPで更にPoC
PoCを回してやはり効果が有りそう、と分かってきたらようやく開発となります。しかしながらここではあれもこれも、というフル機能を実装する開発ではありません。
まずは、1つだけの単機能実装に絞ってください。これが無いと意味が無い、という機能だけの実装で開発してみます。
そうです、技術者にとっては腕の見せどころです。顧客になるであろうユーザーに提供できる最低限の機能を持つプロダクトのことをMVP(Minimum Viable Product)と言います。
これを使って、再度同じ現場でPoCを回してみます。
そして、今後最初の顧客になるであろう社員の方々からいろんな意見をフィードバックで得ながら改善して行きます。
なかなかいいじゃない!これいい!!
ってユーザーから言われるようになったら、これを今度は他の部署にも使ってもらって、どんどんMVPでPoCフィードバックをもらって検証データ化し、今後の機能実装のネタとして蓄積して行くのです。
4.PMFかどうかは顧客が決める
さあ、既に第一顧客となりそうなユーザーも出てきたので、いよいよ本格的に製品化の開発となります。
資金調達してエンジニアも増強して開発を進めて行けるようになってきました。しかしアクセル全開はまだ早すぎます。もう少し我慢して慎重に進めてください。
PMF(Product Market Fit)したかどうかは顧客が決めることになります。顧客の行動を慎重に確認し、機能改善を繰り返し、販売実績を確認して行きます。あるバージョンから急速に売上が伸びる瞬間があります。そのときがPMFした瞬間だと言えます。
本来求められるプロダクトが本来の顧客に刺さった瞬間になるのです。
最初に出てきた相談者のように、考え出した技術がこのプロダクトに必要であるならば特許化も有りですが、この技術をどこで使えるか?誰が使ってくれるか?という技術から始まる思考方法は望ましくありません。
質の高い課題を見つけることが先なのです!