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法令遵守は最低限のマター
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
昨日は、一般社団法人おおさか中小企業経済センターの勉強会の日でした。
近畿圏の中小企業の経営者を元気にするために設立した社団法人ですが、法人設立前からサポートしている鳥取県内の中小企業の経営者たちとの勉強会を月に1回しています。
私は途中から参加したのでまだ受講生の皆さんにリアルでお会いしたことがないのですが、付き合いが長くなるとZoomだけでも十分関係性が深くなることを実感しています。
経営者の皆様からは、経営に当たっての不安や疑問や質問が沢山出てきて、講師の私たちもとても勉強になります。
毎回様々な視点からの題材で議論しますが、昨日は、私からは、中小企業にも内部統制を、というテーマで話をしました。
案の定、内部統制なんていう言葉も意味も、小規模な会社の経営者には関心が薄かったのですが、会社経営をするには規模に関係なく内部統制が必要だということを少しはわかっていただけたのではないかと思っています。
内部統制システムを構築するためのCOSOフレームワークというものがありますが、COSOの示す内部統制システム構築の目的の1つに、「法令遵守」があります。
「法令」の遵守ですから、法令に違反するような行為をしない、ということです。
しかし、SDGsや企業の社会的責任の観点からビジネス上の人権侵害を根絶しようとすれば、法令さえ守っていればそれでいいということにはなりません。
例えば、法律上、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。
臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができません。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、①時間外労働が年720時間以内であること、②時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満であること、③時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内であること、④時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度であること、を守らなければなりません。
この上限規制に違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
また、この上限規制内であっても、時間外労働に対しては、法律で定められた率の割増賃金を支払う必要があります。
では、この法律を守っていればオールオッケーかというと、そうでもありません。
精神障害、脳・心臓疾患等の労災認定では、業務が過重だったか、障害や疾患が業務によって生じたものなのかという点について、時間外労働の上限規制を守っていれば労災認定されない、ということにはならないからです。
労災の制度は労働者を保護することにあります。
したがって、労働時間の上限規制よりももっと緩く広く労働時間かどうかが検討されます。
例えば、労働者が自発的に自宅に持ち帰って仕事をしたり残業をしたりしている場合にも、たとえ使用者の業務命令がなかったとしても、そうせざるを得ない状況に追い込まれるほどの業務量を抱えていたのに使用者がそれに対策を打たず労働者の判断に任せっきりにしていたりすると、過重な業務によって労災が生じた、と認定される可能性はありますし、その場合に使用者の責任が大きければ、安全配慮義務違反として損害賠償請求の対象となることもあります。
したがって、法令遵守という場合には、明確に禁じられている行為にのみ注意を払うのではなく、従業員やその他の関係者の人権が侵害されていないかどうか、という広い視点で捉える必要があるのです。