産後パパ育休制度に関する法律が10月1日から施行されます
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
最近は、お父さんが小さな子どもを抱っこしたり手を引いたりして出勤している姿をよく見かけます。
今朝も事務所に来る途中、私の前を、スーツ(上着なし)で赤ちゃんを抱っこして幼稚園の上の子の手を引いて出勤しているお父さんが歩いていました。
少し前まで、出勤時に男性が子どもを連れている姿を見かけることは皆無でしたが、子育てに対する世間の意識が変わり、会社の意識もどんどん変わってきているのを実感します。
そして、いよいよ来月から、産後パパ育休制度が始まります。
産後パパ育休制度とは
産後パパ育休制度は、男性が子どもの生後8週間以内に、4週間まで休業することができる制度です。
事業主は、子どもを産んだ女性を、出産後8週間は原則として休ませなければなりません。
出産は母子共に命をかけた大仕事ですから、2か月くらいはしっかり休まないと、後々の健康に響きます。
男性は自分が出産するわけではないのでこれまでは産休制度がなかったのですが、慣れない子育てと家事の負担が、出産直後のクタクタになっている女性にだけにのしかかってしまうことは適当ではありません。
そこで、男性も、出産後8週間の間に休業することができるようになりました。
育児休業制度も改正されて、10月からは、分割して2回育休を取ることができるようになり、育休開始日も1歳や1歳半の時点以外でも選択することができるようになります。
また、子どもが1歳より大きくなっても、特別な事情があれば育休を再取得することができるようになります。
産後パパ育休は、この育児休業とは別にさらに育休を取ることができる制度ですので、以下で少し詳しく見てみます。
対象期間と取得可能な日数
育児休業制度では、原則として子どもが1歳までの間に取得することができます。
これに加えて、産後パパ育休制度を利用すると、子どもが生まれてから8週間以内にも、4週間までなら育休を取得することができます。
申出の期限
事業主には、事前に育休を取りたい旨を申し出ておかなければなりません。
育児休業制度では、この申出を、原則として、育休を取ろうとする時期の1か月前までに申し出なければならないのですが、産後パパ育休制度では、原則として休業しようとする2週間前までに申し出れば大丈夫です。
分割取得
産後パパ育休制度と新しい育児休業制度の大きな特徴のひとつが分割取得です。
これまでの育児休業制度では、育休を分割して取ることができなかったので、一度育休を取得したら、その間に大切な会議や仕事があっても職場に出てくることができませんでした。
しかし、実際仕事をしていると、どうしても外せない大切な業務がとびとびに予定されていることはよくあることです。
そのような大切な業務に穴を開けたくなくて、育休取得をためらう人は多かったことと思います。
10月からは、育休を2回に分割して取得することができるようになります。
そうすれば、事業主側も育休を取得する側も、大切な業務に穴を開けなくてすむので、ますます育休を取りやすくなります。
育休中の就業
育休中の就業は、産後パパ育休制度に特有のものです。
つまり、これまでは育休を取ってしまえばその休業期間中に仕事に出てくることはできませんでしたが、産後パパ育休制度では休業中に就業することができるようになりました。
ただし、労使協定を締結している場合に限って、労働者が合意した範囲でのみ就業ができます。
具体的な手続きは次のとおりです。
① 労働者が就業してもよい場合は、事業主にその条件を申し出る。
② 事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示する(候補日等がない場合はその旨を示す)。
③ 労働者が同意する。
④ 事業主が通知する。
そして、就業可能日等は、(ア)休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分まで、(イ)休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満であること、という上限があります。
そうじゃないと、育休とは名ばかりで、実質的には働いてしまっていることになるからです。
実際の育休の取り方
実際にどのように育休を取ることができるのか、については、厚生労働省のイメージ例が参考になるので、以下に貼り付けておきます。
現実問題の克服
世の中では、男性が育児をすることについて好意的な見方が増えてきています。
しかし、現実問題としては、産後間もなくは女性の母が手伝いに来てくれているので男性が育休を取っても家の中に居場所がない、日頃家事をしない男性が育休を取るとかえって妻である女性の家事負担が増える、育休を取った男性が育児をせずに遊び回っている、というような声を少なからず耳にします。
また、人材に余裕のない職場では、女性のみならず男性までもが育休を取るのか・・・と絶望的な気持ちになる経営者も少なくないようです。
これらの問題は、法律でなんとかなるものではなく、日ごろからの当事者の心構えや生き方を問い直していくことから始めなければどうしようもないように感じます。
子どもを育てる世代は、人生の中で一番お金も時間もない世代です。
子どもの周りの大人たちの笑顔が少しでも増えるよう、夫婦間の対話を増やし、積極的に育児休業制度を導入していくようにしましょう。