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「労働時間」とは

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 大きな台風が来ると言われていますが、大阪は大丈夫そうな気配です。

 今朝はとっても綺麗な朝焼けも見ることができました(朝焼けの日は晴れるんですよね・・・?)。

 こんな日は仕事もはかどる!ということで、今日のテーマは労働時間です。

労働時間は労働している時間

 当然のことながら、労働時間というのは、労働者が使用者のために労働をしている時間のことです。

 労働者は労働時間中は使用者のために働かなければなりません。したがって、労働時間が長くなればなるほど、自分のための時間はなくなり、十分な休息を取れないほどになると体力も奪われてしまいます。

 どんなに健康な人でも、労働時間が長時間に及ぶと、心臓病や血管の病気を発症したり、精神病を発症したりする危険性が急激に上がります。

 ただ単に長時間の労働をするだけでも心身に与える影響は大きなものになるのですが、そこに職場のストレスがプラスされると、より一層心身への影響は深刻なものになります。

 しかし、生活がかかっている労働者は、仕事を辞めてしまうわけにもいきません。

 この長時間労働の危険性が認識されてから、法律で労働時間が厳しく規制されるようになりました。

 なお、「労働時間」には、労働基準法で規定される労働時間概念(使用者が労働者に労働させることのできる時間)と、労使間の契約で定められる労働時間概念(労働者が労働をする義務を負う時間)がありますが、労使間の契約で定めることのできる労働時間は、労働基準法で規定された労働時間を越えることができませんから、使用者は、労働基準法の定めをしっかり理解しておくことが大切です。

労働基準法上の労働時間

 実際の現場では、職場にいる間も、労働しているのかどうか明確に区別がつかない時間帯があります。

 例えば、休憩時間ではない時間帯の喫煙、就業前後の着替えや作業準備、休憩時間中の電話応対など、実質的に見た時に労働時間の内なのか外なのか分からない時間帯が結構たくさんあるのです。

 労働基準法にいう「労働時間」がどんな時間なのかについて、最高裁判所は「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であると言っています(三菱重工業長崎造船所事件(最一小判平成12年3月9日))。

 具体的には、始業終業時の前後に作業服を着たり脱いだりする準備行為が、使用者から義務付けられているとか、業務上余儀なくされている場合は、使用者の指揮命令下に置かれているといえ、労働時間に当たります(同最高裁判決)。

 反対に、始業終業時の前後に事業場の入退場門と更衣所等との間の移動に要した時間や仕事後の入浴・シャワー等に使った時間は、使用者の指揮命令下に置かれたものとはいえず、また、休憩時間中の作業服や保護具等の一部の着脱に要する時間も、休憩時間中労働者を業務から開放して休憩時間を自由に利用できる状態にある限り、いずれも労働基準法上の労働時間には当たらない、とされています(同最高裁判決)。

 また、実作業に従事していない仮眠時間であっても、労働契約上の役務の提供が義務付けられているといえる場合には、使用者の指揮命令下に置かれているといえ、労働時間に該当します。例えば、ビル管理会社の従業員の泊まり勤務の間の仮眠時間は、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることが義務付けられていますので、全体として使用者の指揮命令下にあると評価されます。医師の宿直や、マンションの住み込み管理人も同じですね。

労働時間に該当すると・・・

 以上の説明から、就業規則に定めた時間が労働時間である、と単純には言えないことがおわかりいただけると思います。

 使用者は、労働者の労働時間を把握し、労働基準法で定められた労働時間を越えないようにし、越えた場合には割増し賃金を支払うことが求められます。

 また、時間外労働の時間が長時間にわたる場合には、労働安全衛生上の配慮も求められます。

 労働時間かどうか不明確な場合には、最初から労働時間に組み入れておく方が安全かもしれませんね。

 

 

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