従業員に対するコンプライアンス教育
上場している会社や上場を目指す会社は、従業員に対するコンプライアンス教育を積極的に取り入れて実践されています。
しかし、それでも不祥事が発生しているなら、効果的なコンプライアンス教育ができているか、再度検討する必要があります。
また、上場していない会社や上場を目指していない会社であっても、従業員にコンプライアンスのことを教えて実践してもらうことは非常に重要です。
コンプライアンスとは何か
少し前までは、会社の経営者でも「コンプライアンス」という言葉にピンと来ない人が多かったように思いますが、最近は、数々の企業不祥事のおかげ(?)で、この言葉が日常の企業活動に浸透してきているように思います。
しかし、「コンプライアンス」という言葉を正確に理解できている人はまだ少数派のようです。
それは、コンプライアンスを「法令遵守」と訳したことによる誤解が原因です。
「法令遵守」は、そのまま読むと「法令を守ること」なので、今ある法令を守っていさえすれば十分、という解釈になりがちなのです。
しかし、実際の日常生活や企業活動において、“法令を守っていれば十分“なんてことはないはずです。
だって、法令は日々進化するから、昨日まではセーフだったことがいきなり今日からアウトになるということがありますし、最低限の法令だけ守っているような人や企業が社会からの十分な信頼を得ることは困難だからです。
そもそも企業にコンプライアンスが必要な理由は、社会からの十分な信頼を得ることがその活動には不可欠だからです。
ですから、法令を守ることが必要なのは当然のこととして、それに止まらず、法令には定められていない社会のルールも守ることが必要になってきます。
何を教えるか
従業員のコンプライアンス教育も同様で、法令を学ぶだけではなく、その根底にある社会ルールを学んでもらうことに意識を向けることが大切です。
法令を学ぶだけの詰め込み教育だと、いざ現場に出て判断に迷った時に、「法令に違反するかどうか」という短絡的な思考で結論を出してしまいます。
それだと、法令の解釈次第では間違った判断をしているかもしれず、また、法令には違反していないが取引先の信用を失ってしまったという、企業にとっては致命的な判断ミスにつながることにもなりかねません。
ですから、従業員のコンプライアンス教育においては、CSR(企業の社会的責任)を基礎的な考え方として学んでもらった上で、具体的な法令の学びにつなげていって欲しいのです。
コンプライアンス教育の方法
まずは、社内で勉強会を開くことをお勧めします。
専門家に依頼して講義をしてもらうという方法もあります。
私も、企業からの依頼で、従業員の方のためにコンプライアンスについて話をすることがよくあります。
しかし、いきなり専門家に講義をしてもらうのではなく、まずは、なぜコンプライアンスが必要なのか、なぜ学ぶのか、学んだらどうなるのか、実践するにはどうしたらいいいか、実践すると会社やそこで働く人たちはどうなるのか、等々の具体的なクエスチョンを持って講義に臨んで欲しいのです。
そうしないと、業務と直結しないような法律の一般的な話を延々と、忙しい業務の合間に眠気と戦いながら聞くだけに終わってしまうからです。
それは単なる時間の浪費です。
ですから、まずは自分たちの力で、コンプライアンスについて考えて欲しいのです。
もちろん、社内の勉強会に、ファシリテーターとして専門家を呼ぶことは有意義でしょう。
経営者が気を付けること
そして、一番大切なのが、経営者の心構えです。
経営者のコンプライアンス意識が低い企業において、組織全体がコンプライアンス経営の方向に進むことはかなり困難です。
まずは、経営者自らが、コンプライアンスについての学びを深め、心の底からコンプライアンスの必要性を理解すること、そして、それを会社の隅々まで行き渡らせたいという強い願望を持つことが大切です。
経営者がコンプライアンス経営を強く求めるならば、日々そこで働く人たちにその必要性を繰り返し指導することになるでしょう。
そうすれば、自ずと組織全体がコンプライアンス経営体質になるはずです。