Rock'n Roll Night〜桃太郎と吉元由美と田口オサム
この銀蝿一家コラムのタイトルに銀蝿一家のメンバー以外が登場するのは初となる吉元由美さん。作詞家の彼女を調べてみると、杏里、中山美穂、河合奈保子といった歌手に作詞をしている。一番有名なところでは平原綾香の「Jupiter」ではないだろうか。BLACK SATANのファーストアルバム「BLACK MASS」では10曲中4曲の作詞をしている。他の6曲はメンバーが作詞しているので、外部へ依頼した作詞は全て吉元由美さんということになる。ちなみに「BLACK MASS」で吉元さんが作詞したのは「Rock'n Roll Night」の他に「FLAPPER」「BAD DREAM」「十月のアニー」の合計4曲となる。
なぜ、いきなり吉元由美さんのことを書き始めたかというと、BLACK SATANの「Rock'n Roll Night」の歌詞が凄く好きだからだ。先日初めて生で歌う桃太郎を体感して、改めて紅麗威甦やBLACK SATANを聞き直してみたのだが、この「Rock'n Roll Night」がやけに響いたので、今日はこの曲の歌詞について書いてみたい。
この「Rock'n Roll Night」が収録されたBLACK SATANのファーストアルバム「BLACK MASS」は高校1年生の時にリリースされた。以前にも書いたが、高校1年でギターを始め、そこから一気にハードロックに傾倒していったため、銀蝿一家のレコードを熱心に聴き込んだのはこの「BLACK MASS」が最後の作品となる。このアルバムの出来はかなり良くて、横浜銀蝿、紅麗威甦が去って心にぽっかりと空いていた穴を埋めてくれた。どの曲も好きだったが、特にこの「Rock'n Roll Night」は大好きだった。
この曲の歌詞はストーリーとしてはいまいちすんなりとは入ってこないが、ひとつひとつのフレーズが凄く耳に残ってくれる。そのフレーズたちが好きで、当時はこのフレーズでなんとなくこの曲の設定上の状況を想像しながら聴いていた。
この曲に出てくるフレーズたちは"洒落ているな"という印象がある。作詞した吉元さんは女性ながら、男性目線の歌詞を書くのがとても上手だと思う。その男性的なフレーズが桃太郎の声や歌にとても合っているのだ。
ドキドキするぜbaby,
派手にキメたいRock'n Roll Night
ハートのチューン合わせ ここへおいで
退屈なんてKick out,
とことんHighにRock'n Roll Night
止められないよ 愛とわかるまで
ShyなシューズでDancin'
月に照らされRock'n Roll Night
みんなひとりぼっちを BeatでRollin'
さみしくないぜbaby,
めぐり逢おうぜRock'n Roll Night
踊り続けて愛とわかるまで
Oh baby, I love you 昨日を抱いたまま
Oh baby, 明日はひとりじゃのぞけない
グラスに落とした涙が答えているよ
愛されたいの、とOh yeah!!
はじけそうな胸に 火花を抱いて
Rock'n Roll Night
キミのリズムでどうぞ Midnight Party
Oh baby, I love you 言葉を超えるモノ
Oh baby, つかんだその手に触れさせて
瞳のかげりをこれ以上見てられなくて
あうさらっていたのさOh yeah!!
ツマラナイ大人になりたくないぜ
Rock'n Roll Night
あきらめないで夢を抱いていろよ
さみしくないぜbaby,
めぐり逢おうぜRock'n Roll Night
踊り続けて愛とわかるまで
キュートな恋をDancin'
星を数えてRock'n Roll Night
みんなやりきれなさを 陽気にSing out
さみしくないぜbaby,
めぐり逢おうぜRock'n Roll Night
踊り続けて愛とわかるまで
さみしくないぜbaby・・・・・
「ShyなシューズでDancin' 月に照らされRock'n Roll Night」や「キュートな恋をDancin' 星を数えてRock'n Roll Night」といった英語と日本語を上手く混ぜ合わせて、洒落たフレーズを並べている。このフレーズがテンポのいいサウンドとメロディーにとてもよくマッチしていて気持ちがいい。もし自分が作詞をするならこういう歌詞を書いてみたいと憧れる歌詞だ。
「ツマラナイ大人になりたくないぜ」というフレーズは、当時思春期だったオレの中ではもの凄く響くフレーズだった。「ツマラナイ大人にはなりたくない」というのは、あの頃の個人的なテーマだったのだ。まだ自分がどんな人生を歩むのか分からない、何になりたいかも決まっていなかったあの頃に唯一心に決めていたのは「ツマラナイ大人にはなりたくない」ということだった。ちょうど同じ時期に佐野元春も同じことを歌っていて、やはりそのフレーズが心に響き、佐野元春のことも大好きだった。
そんな思春期のオレの心にぴったりとハマり、吉元さん的な表現を借りれば「ハートのチューンにぴったりフィットした」のがこの「Rock'n Roll Night」の歌詞だった。
歌詞の話から逸れるが、この曲でもう一つ気になる部分はハモリのコーラスだ。これは当時、紅麗威甦からの流れでなんとなくミッツやリーのコーラスなのかと思っていたが、大人になった今聴くと、このコーラスは明らかにドラムの田口オサムさんのものだったことに気づく。
オサムさんは紅麗威甦や嶋大輔らが出演していたラジオ番組「パノラマワイド〜土曜の夜はロックンロール」に出演して、替え歌のコーナーで先輩の銀蝿のメンバーへの悪口などで人気があり、桃太郎とオサムさんのトークが当時は大好きだった。
BLACK SATANのコーラスはオサムさんだったのか…と今さら気づいて他の曲も聞いてみたが、見事にどれもオサムさんがコーラスとして大活躍していた。「Misty」なんて桃太郎と掛け合いで歌い上げていた。ドラムを叩きながらこれだけのコーラスを歌っていたオサムさん、素敵だ。
歌詞の話に戻るが、吉元さんの繰り出すフレーズは、大人への階段をこれから登り始める自分にとってとても刺激的かつ憧れる夜の世界が散りばめられていた。とくにこの「Rock'n Roll Night」では、子供ながらに想像力を膨らましてウキウキして聴いていた思い出がはっきりと残っている。大人への憧れ、希望、不安を抱いていたあの時の感情が、今聴いても見事に蘇ってくる。
結果的に自分がツマラナイ大人になっていないかどうかは自分では分からないけれど、今でもこうやって桃太郎の歌に心揺さぶらされている人生は嫌いじゃない。今改めて、残りの人生ツマラナイ大人にならないように精進していかなければいけない。
it's only Rock'n Roll
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