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今でも耳に残る銀蝿一家のギターフレーズ

横浜銀蝿をはじめ銀蝿一家の曲調は基本的にはロックンロールだ。楽器の中ではペースラインが鍵となっているものが多い。横浜銀蝿のコピーバンドをやるならベースをやるのが一番面白いだろう。ギターは割とシンプルで弾きやすく、コード進行に沿ってリズムを刻むものが多い。ただしそのシンプルなプレイの中で存在感や個性を出すのはなかなかの力量とセンスが問われるものである。

今日は銀蝿一家の数多くある曲の中で印象に残っているギターフレーズを選んでみたい。銀蝿一家の中で印象的なギターはいくらでもあるが、その中でも個人的に今でも耳に残るギターフレーズや単純にかっこいいギターソロを意外性をもって何曲か選んでみたい。

当たり前だが音楽的に銀蝿一家の曲達のギターはテクニック指向のタイプではない。なのでここで選ぶのは超絶ギターテクではない。ポール・ギルバートやイングヴェイ・マルムスティーンのような速弾きがあるわけでもない。どれだけ曲に合っているか、どれだけ印象に残っているか、その辺を意識しながら誰もが選ぶような曲ではなく意外なものを選んだつもりだ。


■ T.C.R.横浜銀蝿R.S./Baby Sue
いきなりJohnnyのギターフレーズから始まるこの曲はアルバム「仏恥義理蹉䵷怒」の中でも個人的に大好きなナンバーのひとつだ。作曲はTAKUでおそらくは歌メロから生まれた曲であろう。この曲のイメージに合わせたイントロのギターは後から付け加えたと思われるが、このギターのイントロが抜群にいかしている。このイントロのギターフレーズは間奏にも登場するがとにかく耳に残るし、甘酸っぱい歌詞や曲の雰囲気を際立たせてくれている。左右のスピーカーから単音でハモるこのフレーズはこの曲が隠れた名曲であることをいきなりイントロで決定づけている。エンディングのどこか悲しげなギターがアルバムラストの名曲「雨の湘南通り」へとバトンをつなぐ。

ギターとは関係ないが、この曲の嵐さんの繊細なエイトビートのドラムもこの曲の大切な格を担っている。この嵐さんのドラムでなくては曲の印象はかなり変わったものになってしまっていたであろう。


■紅麗威甦/Cuty Winky Baby
ドライブ感のあるこの曲は亜木光由名義のミッツの作品だ。ミッツならではのポップな曲調は流石の一言。桃太郎のボーカルスタイルとリバーブかかった声の処理が特徴的だ。これはもしかしてエルビス・プレスリーを意識して歌ってるのかもしれないが、どちらかというとプレスリーを意識した安岡力也な気がしないでもない。

イントロとともに基本的にひたすらハモりのメロディーとなるこの曲の間奏のギターソロが凄く好きだ。終始ドライブ感のあるこの曲のイメージそのままに、そこからさらに展開していく間奏としては100点満点の繋ぎとして機能しているギターソロと言えるだろう。また、Bメロのベースとギターのユニゾン部分も素敵だ。

この曲は紅麗威甦の4枚目のアルバム「ヨロシク四」に収録されているが、ファーストの頃と比べると、技術だけでなくかなり幅も広がって成長している度合いが凄い。


■岩井小百合/素敵な恋どろぼう
当時14歳の岩井小百合が作詞作曲をしたという信じがたい程の完成度のこの曲は10代の恋する少女の想いが詰め込まれた名曲だ。

シンセサイザーによるイントロの時点でこの曲の良さを表している。サビのストリングスなどは当時の王道アイドル音楽を知り尽くしたプロの技だ。そんな名曲の中でギターの音はほとんど聞こえない。Aメロでうっすらカッティングギターが聞こえる程度だ。しかしエレキギターが間奏部分で突然現れる。このギターソロが素敵で、青春そのものを表現したような爽やかなギターソロになっている。銀蝿一家の曲では珍しい早弾きフレーズが入って清々しいほどの爽やかさに満ち溢れている。

ピアノとストリングス、加えて女性コーラスがこの曲のバックトラックの骨格を作っているが、間奏でのギターソロがより一層この曲の爽やかさを演出しているのだ。


■Johnny/太陽のツイスト
横浜銀蝿でのJohnnyといえばドライブ感のあるギターがお馴染みだが、横浜銀蝿の活動とは違った一面を見せ、自由度の高いソロでのギタープレイはロマンティストなJohnnyのイメージにぴったりなセクシーで色気のあるフレーズを多用している。

横浜銀蝿ではなかなか聞くことのできないハーモニクスを使ったギターで始まるこの曲はイメージにぴったりな単音の艶っぽいフレーズが数多く登場する。そして、この単音のフレーズによる間奏のギターソロがなんとも色気のあるプレイだ。歌詞にも出てくるが、まさにギターが泣いているようなプレイだ。

ソロシングル「みにくいアヒルの子」でもこのような色気のあるギターが聴けるが、この色気のあるJohnnyのギターが個人的には凄く好きだ。「みにくいアヒルの子」同様この「太陽のツイスト」でのJohnnyギターソロは曲のイメージを崩すことなく曲の深みを増している。またこのギターが、Johnnyの甘いボーカルに抜群に合っていてたまらない。


■紅麗威甦・紅麗威/翔んでるセブンティーン
横浜銀蝿が原曲で紅麗威甦がカバーしたこの曲。紅麗威甦のバージョンの方が単純にテンポが早いということもあるがギターソロのキレがいい。もしかしたら銀蝿一家の曲の中で一番好きなギターソロかもしれない。さらにそれを紅麗威がカバーしたライブバージョンはさらにテンポが早い。それもあってかとにかくドライブ感がとんでもない。かなり演奏は荒いがLeerの弾くギターソロは聴いていて痛快で、これぞライブ!という感じの疾走感だ。もしオレが銀蝿一家のコピーバンドをやることがあるなら絶対この曲でギターを弾きたい。なにげにこのギターソロは難しいとは思うが。

横浜銀蝿のこの曲はリズムを意識したプレイとなっているが、紅麗威甦及び紅麗威のカバーはとにかく勢い重視、ノリ一発な雰囲気が強い仕上がりとなっている。


■横浜銀蝿40th/Johnny All Right!
せっかくなので現役バンドから1曲。この曲のJohnnyのギターは本当にいかしている。弾いているフレーズはもちろん、鳴っている音がとにかくリアリティがあって聴いていてワクワクするのだ。これはJohnnyが帰ってきて4人で演奏することの楽しさみたいなものがメンバー間やスタジオ内に詰まっていることが大きいと思う。

実はこの曲を聴いているとたまに涙が出そうになることがある。それは悲しい涙ではなく、Johnnyが帰ってきたオリジナルメンバーによるロックンロールに再び出会えた喜びによる涙だ。

翔くんの歌と絡みつくようなJohnnyのオブリガート部分はまるで翔くんとJohnnyが久々の再会を喜び、会話しているかのようだ。Johnnyがギターを弾いている姿が浮かぶほどのリアリティでライブ感のあるサウンドも最高だ。


というわけで、ギタープレイの素晴らしい曲を何曲か挙げてみた。もちろんこの曲以外にもギターが素晴らしい曲はいくらでもある。今回は意外性のある曲を挙げたので選ばれていないが、誰もが唸るギターが聴ける曲といえば、横浜銀蝿「羯徒毘璐薫'狼琉 」のエンディングのJohnnyのギターや、嶋大輔「暗闇をぶっとばせ」の疾走感満載のイントロや間奏のギターソロ、紅麗威甦「Yukiko」でのドラマティックなギターフレーズなど。これらは選ぶまでもない程の殿堂入りのギタープレイであるため今回はあえて選んでいない。

当時中学生だった自分にとって、銀蝿一家のギターサウンドやプレイは刺激的でとにかく憧れたものだ。その後アルバイトをしてギターを買ってバンドを組むことは自然な流れで、そういった若者が当時は日本中にいたことだろう。銀蝿一家がロックとの出会いであり初期衝動となったのだ。

大人になった今改めてじっくり聴くとまた違ったイメージに聴こえたり、あの頃は気がつかなかった部分が見えてきたり、当時の血が燃えたぎるような興奮を思い出したりもする。何年経っても銀蝿一家の音楽は人生に寄り添ってくれているのだ。

残念ながら、おそらくJohnnyのギターが聴けるのは今年が最後となるだろう。だからこそ、春のツアーは実現して欲しいし、一曲でも多く新曲を聴きたいと思っている。まずは3月のニューミニアルバムの発売とzeppツアーで思う存分Johnny渾身のプレイを楽しもうではないか。
というわけで、2021年もこの銀蝿一家考察コラムをよろしくお願いします。


Happy New Year
it's only Rock'n Roll

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