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横浜市が「めざす未来」を実現する政策とは。地域幸福度指標(ウェルビーイング指標)の可能性について考えました。

皆様こんにちは
 横浜市政策局データ・ストラテジー担当(広報チーム)です。
 今回はデジタル庁が主催する「地域幸福度(Well-Being)指標活用1Dayセミナー」に参加し、ウェルビーイングについて学ぶ機会がありました。その様子をお伝えするとともに、後半では横浜市立大学黒木先生よりウェルビーイング指標の活用について実践で役立つヒントや今後の方向性について伺いましたのでそのインタビューの様子をご紹介します。



1 政策検討において、都市を俯瞰的に捉えるプロセスが大切。

“ウェルビーイング”とは測定可能なのでしょうか?
言葉の印象からは「個人の主観や価値観しだい」と感じられる方もおられるのではないでしょうか。国が提唱する「デジタル田園都市国家構想」では、「心ゆたかなくらし(Well-being)」と「持続可能な環境・社会・経済(Sustainability)」の実現を目指すとしており、デジタル庁ではその実現のために「地域幸福度(Well-Being)指標」の活用を推奨しています。
「地域幸福度(Well-Being)指標」とは客観指標と主観指標のデータをバランスよく活用し、市民の「暮らしやすさ」と「幸福感(Well-being)」を数値化・可視化したものです。自治体においても政策検討のために活用を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

横浜市においては2040年ともにめざす都市像の1つとして「暮らしやすく誰もがWELL-BEINGを実現できるまち」を掲げています。
今回2023年12月10日にデジタル庁主催の「地域幸福度指標活用1Dayセミナー」に参加し、自治体におけるウェルビーイングの考え方や指標の活用方法等をワークショップ形式で学びました。


セミナーが開催されたNANA Lv.(横浜市西区 ランドマークタワー内)

1dayセミナーの目的・研修内容

地域幸福度(Well-Being)を活用し、市民の幸福感や暮らしやすさの実感を向上させることを目指す政策立案ができるようになることを目指し、実践的なワークショップを実施。
ワークショップではダッシュボードを使って実際の都市の特徴を把握し、その都市の強みに着目した政策コンセプトを仮想的に作成しました。

今回のセミナーに参加された他の自治体職員からは、「市の総合計画と事業の評価方法が繋がらないところがあり課題に感じていました。このワークを通して、市民の暮らしに立ち返りデータを活用し客観的な議論ができる政策デザインの有効性を感じました。」といった声が聞かれました。

2 ウェルビーイングに関する指標は発展途上。政策効果を評価する指標としての可能性について

ウェルビーイングに関する指標を政策で活用する際の注意点や今後の方向性について、今回のセミナーの共催である横浜市立大学 黒木教授にお話しを伺いました。

黒木 淳 教授(横浜市立大学)

(1) ウェルビーイングの世界的潮流

戦後、世界的に経済成長が重視されるなかで、行政政策や行政施策の目標設定や評価において、主にGDP(Gross Domestic Product)や市内総生産を中心に行われてきました。これらは一定期間内に国内で生産された財(モノ)・サービスの付加価値の合計額であり、経済活動を包括的に示す指標であるといえます。経済的な豊かさ=幸福度の高さと捉えられた議論も存在しますが、一方で、2011年からOECDで“豊かさ”の指標としてウェルビーイングの測定手法について検討が始まり、国際連合も「身体的・精神的・社会的にウェルビーイングな社会」をめざすことを述べた上でSustainable Development Goals (SDGs)を公表しています。たとえば、ニュージーランドではウェルビーイング指標を予算編成プロセスに取り入れた仕組みづくりが始まっていると聞きます。

地方行政においては、個人、社会、環境等いろいろな側面でウェルビーイングの指標をとらえることができます。ウェルビーイングは測定対象となる個人が幸福で、充実していることを示すだけでなく、それ以外に地域社会や地球環境等についての視点も必要になります。たとえば、子育て世代の方々にとってのウェルビーイングは、自らの幸福感だけでなく、こどもや家族、さらには地域社会などの多様な側面からとらえることができます。ウェルビーイングは心理学、医学、経済学・経営学、政策科学等、多様な学問で注目を集めておりますが、多様かつ観測可能な共通の指標として活用できる可能性があり、今後もウェルビーイング指標に対する議論が活発になり、さまざまな指標や活用方法が社会に提示されることになるのではないかと思います。

(2) ウェルビーイングに関する指標を活用する上で必要なこと

今回の研修では、デジタル庁とこの指標を開発した(一社)スマートシティ・インスティテュートが、デジタル田園都市国家構想の公式指標とされている指標を用いて研修を行いました。地域ごとに重要な政策や市民からの要望は異なると思います。このような国内外で定型化された指標を参考にしながら、政策立案や評価において目標と適合する形で地方行政の政策と目標を見直し、整理していくことも重要であると思います。

また、ウェルビーイングに関する指標を活用する場合には、いくつかの指標の組み合わせが必要になりますが、どのような指標を用いることが妥当であるのか、高い指標と低い指標のどちらに注目することが効果を高めることができるのか、議論していくことが必要であると思います。さらに、各指標には測定誤差が生じますので、定量的に測定しながら、実際におきている課題や現象に照らし合わせて理解を深めていくことも必要です。この指標の活用には、地方行政の目標や地域社会の実情に適合する指標や政策デザインに関するスキルが伴うことも重要な課題となります。地方行政で良い政策・施策・事業を作るために、参照可能なひとつの診断ツールとして、また関係者が活発に議論するための土台や基礎として機能することを期待しています。

(3) ウェルビーイングに関する指標活用に向けた体制構築

令和5年度3者(横浜市、横浜市立大学、(一社)スマートシティ・インスティテュート)で「ウェルビーイング指標に基づく政策形成を目的としたデータ活用に関する連携協定書」を締結しました。データの集計、分析等を3者が協力し、政策的な議論できる場はとても価値があると考えています。本大学には国際商学部と医学部がありますので、議論を展開するだけでなく、組織内外での指標の活用方法の検討や、メンタルヘルスの視点からとらえたウェルビーイング低下の予防・改善のアプロ―チも得意とするところです。今後、国内外の行政や企業の方たちも巻き込んで、ウェルビーイングに関する知識の獲得から分析、検証までできる体制を整えていきたいと考えています。


今回の研修や黒木先生のインタビューを通じ、全体像を客観的にとらえる指標として「地域幸福度(Well-Being)指標」は幅広く活用できるものとして可能性を感じました。横浜は共創マインドが活発な都市です。行政だけでなく、アカデミアや企業の方と連携して事業を進めることは珍しくありません。立場が違えば見える世界が異なる。産学官と共通の指標を基に意見を交わし、共有していくことがとても大切だと感じました。

(参考)


問い合わせ
今後データ活用に興味関心のある他自治体の皆さんや民間企業の皆さんとも意見交換や連携を図りたいと考えていますので、ご興味のある方は以下のメールアドレスへご連絡ください。

mail: ss-ds@city.yokohama.jp

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