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ロジックモデル作成奮闘記(#施策評価2)

 みなさん、こんにちは。施策評価担当です😀
 中期計画の施策に紐づく事業約1,300事業について、令和5~6年度にかけて、段階的にロジックモデルを作成しています。173施策中、5年度は81施策を、そして、6年度は残り92施策で実践中です。
ロジックモデルを作成を通じて、「事業の目的を改めて確認」するとともに、「事業の実施効果をどのように検証するか」といったことも考えていきます。この結果を翌年度予算の事業計画に反映し、市民のみなさんの期待に応える施策・事業に取り組みます。
 各事業所管課のロジックモデル作成にあたり、5年度に引き続き、EY新日本有限責任監査法人(以下、EY)のみなさまには相談会やメールによる質問対応など伴走支援していただいています。
 相談会や質問対応が一段落したので、記憶の薄れないうちに、昨年度からの変化など、EYのみなさまに4つの質問に答えてもらいました!
 特に、「作成のヒント」は、ロジックモデル作成でお悩みの全国のみなさん、必見!ぜひ読んでくださいね。



昨年度からの変化

昨年度の相談会と今回を比較し、市職員の取組姿勢に変化がありましたか?(昨年度から引き続き相談対応された方が対象)

■Aさん

  • 昨年度は、ロジックモデルを事前に準備せずに臨む所管課が大半でしたが(【施策評価担当補足】相談会開催までにロジックモデルを事前作成することを評価担当から依頼していました)、今年度は、全ての所管課が、少なくとも作成可能な箇所はロジックモデルを用意し、作成できない部分についても事前に直面している課題や迷いを言語化するなどの準備をして相談会に臨まれていました。そのため、わたしたちも、事前に作成済のロジックモデルや課題をチームで検討した上で相談会に臨むことができ、ロジックモデルの理解の深化や課題のその場での解決につながったと考えます。

  • 昨年度は、ロジックモデルの作成の意義自体に懐疑的で、EYが「事業仕分け」の手先なのではないかと疑うような目線を向けてきた所管課も少数ながら見られましたが、今年度は、ロジックモデル作成の意義自体は理解されていて、建設的な議論ができたと思います。

■Bさん

  • 事前に試行錯誤していただき、真剣に取り組まれていました。ただ「わからない」だけでなく、「こう考えたが、ここがわからなかった」とおっしゃっていただけたので、お互い有意義な相談会になったと思います。

■Cさん

  • 昨年度は、ロジックモデルについての理解も十分なされていない担当課も多く、相談会に際して、アウトプットやアウトカムについての案を事前に考えてこられない担当課も結構ありました。今年度は、アウトプットやアウトカムについて事前に検討して、何らかの案を準備して相談会に臨まれる担当課も増えたと感じております。そのような場合は、ロジックモデルに対する理解のレベルも総じて上がっており、事業の短期、中長期的成果を具体的にどう考えるか、事業の実施を通してどのように課題を解決していくかを、相談会において積極的に検討し、考えを出し合う姿が多く見受けられました。

  • 当社からの提案に対しても、そのまま受け入れるのではなく、提案をより発展させる案を出していただいたり、代替案を出していただくなど、自分事としてしっかりと検討していただくケースも増えてきたという印象があります。

  • 全般的に、市職員の成果導出に対する意識が高まったとともに、取組姿勢がより積極的かつ本質的(形式的ではないという意味で)に変化してきたと思われます。

■Dさん

  • 昨年度に比べ、アウトプットとアウトカムの違いを明確に意識されているなど、ロジックモデルの理解が深まった印象です。また、事業にふさわしいアウトカムについて、深く検討して頂いていることが伝わってきました。

■Eさん

  • 昨年と比較して皆様、部署内でしっかりと検討した上で提出くださったように思います。そのため、ロジックモデルとは何か、というところからのスタートではなく、どのようなアウトプット、アウトカム、アウトカム指標の設定がいいのかといった中身の話がしっかりできたと感じています。

■Fさん

  • 昨年度よりも、前向きにロジックモデルを検討される方が多いように思いました。また、昨年度は、アクティビティからアウトプット・アウトカムをされる方が多かった印象ですが、今年は、逆にインパクトからバックキャストでアウトカムを検討されておられる方も多くいらっしゃいました。

■Gさん

  • 昨年度よりも相談会前の検討が深まっているように感じました。

    1. 1つの例として、「事業の成果とは何か」、「それに対してどのように指標を立てられるか」ということについて色々検討して臨まれている方が多かったです。

    2. 別の例として、相談会に担当課の方が複数名で来られた事業がありました。ロジックモデルの作成や成果指標の設定は、担当者を1名決めてその人がとりあえず考えるペーパーワークと化してしまうことが世の中にはあります。横浜市の取組では、課の皆さんで検討されているところが素晴らしいと思います。この取り組みが、成果を考えるきっかけになっていることを実感しました。

初参加の感想

今回はじめて相談会を経験しての率直な感想をお聞かせください。
(今年度はじめて相談対応された方が対象)

■Hさん

  • 横浜市職員の皆様は、どの課の方も大変な熱意を持って所管業務に臨まれていることが非常によくわかりました。ロジックモデルシートに定量的な指標を入れられていない部署でも、実際に話をすると、課内でかなり議論されたことがうかがえ、大変感動いたしました。

■Iさん

  • ほとんどの部署が、どのように指標として図れるかを試行錯誤しながら検討されてきていることが非常に伝わってきました。

■Jさん

  • 全事業がロジックモデル作成の対象になっていることは理解しつつも、なかにはロジックモデル作成の必要性について疑問に思う事業もあり、現行の事業単位で取り組むことの難しさを感じました。ただ、そのような気づきが得られたことは、今後この取組みを持続的なものとしていくための課題を把握し改善につなげるという観点からは一定意味があったように思います。

  • ロジックモデルと事業計画書を拝見しただけだと、実際の事業内容が異なっているケースもあり、事業の実情を事前に把握することが困難でした。そのため、担当課様に事業概要をご説明いただき、当方からの質問も交えながら事業の実情を理解したうえでロジックモデルに落とし込んでいくことが非常に重要であり、このプロセスを省いてしまうと、我々の助言が実情に沿ったものにならず、担当課様としても腑に落ちない、余計に混乱してしまうということも起こりかねないように思いました。ブレストペーパー(後述)のようなものを事前に共有いただけると当方としてもよりよい助言ができるように思いました。

作成のヒント

ロジックモデル作成のヒントについてアドバイスをお願いします。

■Kさん

  • 一般論として、事業のアクティビティと事業目的が所与とされている中で、アクティビティから生じるアウトプット、アウトプットの充実により実現されるアウトカム、という具合に、因果関係を流れでイメージしつつ、第三者に言語で説明できるようなストーリーを意識して作成されている所管課は、総じて、問題なく作成されていた印象です。

■Lさん

  • ロジックモデルは1人で考えないことが重要です。複数人で考えられるアウトカムとそれらの因果関係を検討・整理し、その中から重要なアウトカムに絞り込んでいくというようにするとよいと思います。

  • 時間があれば、例えば、考えられる事業のアウトカムをそれぞれ付箋(ポストイット等)に記載し、因果関係を確認しながら、ホワイトボードや模造紙の上に並べて、最終成果につながる主要なアウトカムを絞り込む、という方法が考えられます。

  • 重要なことは、事業を実施してから最終成果が導出されるまでの流れ・全体像を考えること。直接アウトカムと最終アウトカムは考えやすいですが、中間アウトカムを考えることが難しいので、複数人で検討することで、ロジックモデルをブラッシュアップしていくことが重要です。

■Mさん

  • 今回、ロジックモデル作成マニュアルを配付できたことはとても良かったように思いますが、いきなりロジックモデルを作成しようとすると、型にはまり発想が限定的になってしまう、ロジックモデルの文言(横文字であることもあり)にひっぱられてしまうように感じました。また、担当課様としてはロジックモデルに記載するほどの内容ではないと感じておられる業務内容が、第三者の立場からみると、実は事業の目的達成に重要な役割を果たしているように感じたことも多々ありました。そのことから、ロジックモデルに落とし込む前に、一度ブレストペーパーのようなものを作成いただくとよいように思います。ブレストペーパーのレイアウトには、例えば、「アクティビティ:日々取り組んでいる業務内容を具体的に羅列する」、「アウトカム:その業務は何を目的としているのか、何のためにやっていることなのかを思いつく限り羅列する」というような分かりやすい説明を一文入れるなどする。一旦そのように文字化して整理していただくと、ロジックモデルが作成しやすくなるように思います。

■Nさん

  • 初めから1行に納めることを考えながらロジックモデルを検討(【施策評価担当補足説明】本市のロジックモデルは単線フローチャート型です)するのは、特にロジックモデルに馴染みのない方には難しいのかもしれません。しっかりと箱を書いてツリーを組み立ててみたうえで、既定のフォーマットに納めていく、ということが、頭で考えているだけでなく実際に手を動かして検討する方法もあるのではないかと感じました。

■Oさん

  • アウトカムやその指標の設定には、外から押し付けられる正解があるわけではありませんので、時には「言ったもの勝ち」で自由な発想でアウトカムの案を設定し、後から確からしさを検討する、という手法もあると思います。

■Pさん

  • ロジックモデルにおいて「指標が設定できるものをアウトカムにする」という考え方は望ましくありません。まずは、「実現したい状態を具体的に表現する」ということを心がけて下さい。そのうえで、その達成状況を測る指標の有無を検討するという順序です。指標の設定が困難なアウトカムもありますが、まずは何を実現したいかということを明確にすることから始めてください。

  • アウトカム設定の手がかりがないときには、次のような点からも考えてみてください。

    1. この事業がなかったならばどのような困りごとが生じるか

    2. (粛々とこなすことが必要な事業の場合)どのようにしたら市民に喜ばれるか

    3. どのようなポイントが事業改善を考えるきっかけになるか

    4. 日々、何を大切にして事業を行っているか

■Qさん

  • ロジックモデルの作成においては、複数人で議論をしながら作っていくことが望ましいと考えます。事業の性質や目指す将来の姿などを改めて見直すことで、アウトカムや指標の設定ができるのではないかと思います。事業を実施している自分たちは当たり前だと思っていても、第3者からすると当たり前でないことは大いにあると思いますので、まずは第3者の目線に立ってみることも良いのではないかと思います。

ロジックモデルで施策・事業の質を高める

ロジックモデルを使って、施策・事業の質向上につなげるための工夫として考えられることを教えてください。

■Rさん

  • 「計画策定」や「資金拠出」だけの事業は、進捗率等を定量的な指標とすることはできますが、こうした指標設定にとどまらず、この定量的な評価を以てより良い事業にしていく視点での議論に繋げていくこと、市全体の仕組みとしてそういった流れを構築していくことが大切だと感じました。

■Sさん

  • 事業者支援の業務を外部委託している事業で、支援対象先の成果をきちんとフォローアップできていないケースがいくつかありました。事業所管課からは、「市としてどこまで成果導出にかかる情報を支援対象者から、事業実施後に複数年、継続的に出してもらえるか悩ましい」というコメントがありました。不特定多数の支援対象者であればフォローアップは難しいですが、支援対象者が分かっているのであれば、中長期的に成果をフォローアップしていく必要があると考えられます。成果導出に時間を要する事業は、短期間でタイムリーに効果検証ができないため、中長期にわたる成果を検証して、事業の見直しにつなげていくことが重要だと考えられます。

  • 成果導出に時間がかかる事業や間接的に支援する事業など、成果評価に必要なエビデンスの取得が難しい(時間がかかる)、または、成果評価に工夫が必要な事業については、事前に効果検証の方法をよく検討した上で、効果検証をきちんと行うとともに、成果に応じた事業の見直しの意識を組織として醸成していくことが望ましいと思いました。

■Tさん

  • 過去からずっと実施してきており、利害関係があるため廃止できないという事情があっても、事業の必要性や有効性という観点から、本当に必要な事業なのかということを改めて検討された方がよいと感じました。


この他、お一人から、以下のコメントをいただきました。

全局課を対象(【施策評価担当補足説明】中期計画対象事業を所管する全部署です)に、2年連続で実施することで、確実にマインドの変化があったと思います。

最後に

 ロジックモデル作成に全庁的に取り組むことに対し、当初、「やっても無駄」「負担が大きい」「作ることが目的化される」など否定的な意見をいただくことが度々ありました😥
 しかし、必要な施策の推進と持続可能な財政運営に向けて、既存事業について、「自分たちが行っている事業の目的は何か」「目的達成に効果的な手段・手法となっているか」「事業効果をどのように検証できるか」を再確認し、施策や事業の質向上につなげていくには、ロジックモデル作成はとても役立つコミュニケーションツールだと施策評価担当では考えました。
 ロジックモデル作成2年目を迎え、庁内のマインドの変化について、大きなうねりになっているとの実感は正直まだまだありません。しかし、それでも、ロジックモデル作成体験を通じて、様々な気づきを得て、事業改善につなげていこうとする職員たちが少なからず現れている兆しは、施策評価担当もひしひしと感じ取っています🙂
 こうした動きが庁内の至るところで当たり前にみられる市役所への変革に向けて、施策評価担当もしっかり後方支援していきます💪


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