【横浜市EBPM座談会①】データ利活用について横浜市職員×研究者×ビジネスパーソンが熱く語る会。
皆様こんにちは。
横浜市政策局データ・ストラテジー担当(広報チーム)です。
横浜市ではデータ利活用を取り入れた政策形成を推進する取組を進めています。本市の取組をご紹介するとともに、データ利活用によって目指す方向性についてみなさんと考えるきっかけになればと思い、noteを立ち上げました。さまざまな関係者にお話を伺いながらデータ利活用の将来像について深掘りしていきたいと思います。
まず初めに、昨年11月に開催した『データを基軸とした政策デザイン』をテーマとして行った座談会をご紹介します。
各分野のプロフェッショナルから充実したお話を伺うことができました。
座談会の記事は全3回に渡ってお届けします。
座談会を開催した背景
横浜市データ・ストラテジー担当(以下、デタスト)は庁内のデータ利活用を推進するため2023年4月に設置され、各区局のデータ利活用に関する支援や、職員の人材育成、データ環境の整備を行っています。
こうした中で更にデータ利活用を進めるためには、外部の視点、それもデータ利活用を推進する専門家の視点を取り入れたほうが良いのではないかと考え、データ活用に取り組んでいる方々にお声掛けし、今回の座談会開催に至りました。
なお、EBPMという言葉が「どこまでを範囲とするのか」には議論がありますが、本座談会では広くデータ利活用全般を捉えると設定して議論しています。ご承知おきください。
参加団体のご紹介
データ利活用の知見をお持ちの3団体の皆様にご参加いただきました。
アクトインディ株式会社
国内最大級のファミリー向けお出かけ情報サイト「いこーよ」を運営。全国のお出かけ施設、ファミリー向けサービス事業者の発展や市場の活性化のため、お出かけや家族、子どもの学びなどに関わる様々な調査・分析データも提供株式会社サイバーエージェント
デジタルマーケティング全般に関わる幅広いAI技術の研究開発を目的として「AI Lab」を設立。大学・学術機関との産学連携を強化し、ビジネス課題の解決だけでなく学術的貢献を目指し研究開発に取り組む成育こどもシンクタンク
国立の研究機関。こどもたちの身体的な健康だけではなく、心理的・社会的な部分も含めた包括的(bio-psycho-social)な支援に取り組むため、医療や研究で得た科学的根拠に基づく政策提言・社会実装を目指す
「第1回 オープンデータ利活用の実際」
横浜市としても展開を進めているオープンデータの活用について、民間企業、アカデミアからお話を聞きました。現在EBPMを推進している自治体の皆様や自治体との連携を検討している民間企業、アカデミアの皆様にとって何かの参考になれば嬉しく思います。
1.オープンデータの活用
オープンデータの活用のディスカッションについて紹介します。
地方自治体は「官民データ活用推進基本法」に基づき、保有するデータの公開、いわゆるオープンデータに取り組むことが義務付けられています。横浜市ではポータルサイトでおよそ500のデータセットを公開していますが、より活用してもらうため、実際に地方自治体のオープンデータを使用する視点としてアクトインディにお話を伺いました。
(1)オープンデータの活用で、利用者の情報収集をより快適に
アクトインディ:
「地方自治体によるオープンデータの取組は民間事業者にとっても、非常に重要です。お出かけ情報サイト『いこーよ』では、およそ10万の全国お出かけ先情報を掲載しており、一部の情報には自治体等のオープンデータを活用しています。これらの情報は全国の利用者に閲覧され、1か月に1度も閲覧されないものはほとんどありません。」
地方自治体が公園やイベント情報などを市のSNSや紙媒体だけで発信するだけではなく、オープンデータとして公開して、民間サービスの情報サイトから発信することで、より多くの市民にそれらの情報を届けることができます。これは地方自治体がオープンデータを民間企業に対して公開するメリットというお話が特に印象的でした。
(2)オープンデータの活用の鍵は、標準フォーマットでの提供
アクトインディ:
「情報を『いこーよ』に掲載するために、自治体のオープンデータ担当の方には公開予定のデータは、できるだけ自治体標準オープンデータセットに統一してほしいとお願いしています。」
オープンデータの作成・公開においては、実際に利用する人の視点を考慮する必要性があるという重要な指摘でした。さらに、次の提案もいただきました。
アクトインディ:
「いこーよユーザーが利用する場面を想定すると、例えば「トイレの数」や「その場の情景がわかる写真」もサイトにまとまっていたりすると、閲覧者の利便性が向上します。実際に写真を掲載している施設の閲覧者が多いことはアクセス解析結果にも出ています。これらの学びは連携先である個々の自治体に伝えておりますが、多くの自治体で対応していただけると市民の方にとっては有益な情報提供となると思います。公園利用や自治体のイベント入場者数が増加することも期待ができます。自治体が独自で情報発信することも重要ですが、すでに民間の中では高い集客力を持つサイトやノウハウが存在します。それを活用する方法を検討いただけるとよいと思います。」
サイバーエージェント:
「市民に対する情報公開の責任を果たす、という観点だけではなく、観光の呼び込み効果という点で自治体側へのメリットは大きいと感じています。(ビジネスでは当たり前と感じられるかもしれませんが、)情報を公開することが目的になりがちなオープンデータですが、データ公開の先にある”市民をはじめとした多くの人へ波及するメリット”に目をむけられるようにすることが重要かもしれません。」
成育こどもシンクタンク:
「オープンデータ自体の運用経費の中でアップデートに要する観点を盛り込めるかというと、財源が限られている中、実際は中々難しいのでしょうね。今回見えてきた成果と改善も踏まえた継続的な取組みにできると、研究者や民間事業者とのコミュニケーションも活性化し、今以上に市民の方へ還元できるようになるのかもしれません。」
2.異なるセクター同士の対話の重要性
オープンデータの活用をテーマにしたセッションでは、以下のご意見を参加団体の皆様からいただくことができました。
横浜市は今後もオープンデータの推進に対して意欲的に取り組んでいきたいと考えていますが、それには、ただデータの公開作業にだけ焦点を当てるのではなく、実際に利用する相手の視点や目的を理解して推進する重要性を再確認できました。ほんの数十分の議論をしただけでも多くの気づきを得られましたので、こうしたセクターを超え、前向きに対話できることの有効性を改めて感じられました。
次回の記事では、具体的な事例を交えながら、「子育て分野のEBPM推進におけるデータ利活用の取り組み」について様々な角度から議論した様子をお届けします。
問い合わせ
今後データ活用に興味関心のある他自治体の皆さんや民間企業の皆さんとも意見交換や連携を図りたいと考えていますので、ご興味のある方は以下のメールアドレスよりご連絡ください。
mail: ss-ds@city.yokohama.jp
参加者一覧
横浜市政策局政策課
大山 紘平
横浜市政策局政策課
データ・ストラテジー担当課長
小野 瑠里
横浜市政策局政策課
データ・ストラテジー担当係長
嶋田 誠太朗
横浜市政策局政策課
データ・ストラテジー担当係長
アクトインディ株式会社
宮川 健太
アクトインディ株式会社 取締役
鎭目 美代子
いこーよ子どもの未来と生きる力研究所 所長
上野 祐一朗
子育て支援事業部
大縄 典子
子育て支援事業部
株式会社サイバーエージェント
竹浪 良寛
株式会社サイバーエージェント
AI事業本部 AI Lab
経済学社会実装チーム
松木 一永
株式会社サイバーエージェント
AI事業本部 AI Lab
経済学社会実装チーム
森脇 大輔
株式会社サイバーエージェント
AI事業本部 AI Lab
経済学社会実装チーム
国立成育医療研究センター
竹原 健二
国立成育医療研究センター
研究所 政策科学研究部 部長
成育こどもシンクタンク 戦略支援室 副室長
千先 園子
国立成育医療研究センター
成育こどもシンクタンク 企画調整室 副室長
こころの診療科 医員