【犬の問題行動】身近な人間に対する攻撃行動
犬の問題行動には40種類以上ありますが、その中でも最も問題になりやすいのが攻撃行動です。今日はそのうちの一つ、身近な人間に対する攻撃行動についてご紹介します。
1.「身近な人間に対する攻撃行動」ってなに?
そもそも攻撃行動とは「うなる」「吠える」「歯をむく」「歯を当てる」「空噛みする」「突進する」「咬む」などの行動を指します。こういった行動が見えたらまず攻撃行動かどうか、ということをまずは疑ってみてください。
特に上記の行動が、犬が気に入っているおもちゃ、食べ物などのリソースに近づいたときや、それを取り上げようとしたときに飼い主やその家族に対して生じるようであれば、攻撃行動である可能性が非常に高いです。
2.どういう特徴があるの?
どの犬種でも発症しやすいのですが、スパニエル、テリア、ロットワイヤーなどに多く、また護衛犬として活躍してきたグループの犬種ではよく発生します。特に社会的成熟を迎える12か月~36か月ごろに顕著になるといわれています。さらに雄犬に発現しやすいといわれています。
また、この攻撃行動の対象は犬がともに暮らしている身近な人間に対して生じ、縄張り性攻撃行動、食物関連性攻撃行動、所有性攻撃行動などとも同時に発生します。
3.どうしてひどくなるの?
そもそもこうしたリソースを守るという行動は動物本来の正常な社会行動パターンの範疇ですが、環境、学習、遺伝によって影響され、飼い主やその家族の許容ができなくなることも多いのです。特に要因としては
・ともに暮らす家族と犬の間に明確なルールや日課がない
・犬とリソースを争った結果、人間が負けたことがある
・不適切な罰を使用している
・人間がリソースを管理するのではなく、犬に管理、あるいは選択させている
などの飼い主側の問題も見受けられます。
4.どうやって改善していくの?
以下のStepにわけて改善を行っていきます。
Step1:安全対策
Step2:環境操作
Step3:行動修正
Step1では家族に危険が及ばないように、怪我をさせないようにする、ということが大事です。Step2では犬がこれ以上その行動を学習しないよう、行動自体を生じさせないように予防します。その行動が有効であると学習すると、どんどん程度も頻度も増えていってしまいます。そのために犬が過ごす環境を操作していきます。
Step3では問題行動改善のための行動修正を行っていきます。ただしこの行動修正は問題行動が起こらないように管理することで、「完治」させることではありません。この問題行動修正は一生涯行っていく必要があります。
また、どちらのStepでも、家族全員が一貫して行うことも非常に重要です。
Step1:安全対策と環境操作
まず第一に重要なことは人間が怪我をしないということです。これが最優先です。特に幼い子どもや高齢者、障碍者などが家族にいらっしゃる場合は、この問題行動がある場合は、犬を手放すことも視野に入れる必要があります。一方、里親への譲渡というのも、危険が高くお勧めはできません。
次にどのような状況で発生したか、すべてリスト化します。よくあるのが
・ソファの上、ベッドの上(休息場所)
・ガムのような長時間食べ続けられるおやつ(食べ物)
・お気に入りのおもちゃ
・その他犬にとって資源(ご褒美)となりうるものすべて
こういったものを取り上げるときに発生しやすいですね。こういったものはすべて飼い主が管理し、犬に与えっぱなしにしないようにします。またおやつなど使わなくてもすむものは与えないようにします。
また、体罰や叱責といった罰も使わないようにしていきます。
どうしても犬が持っているものを取り上げたい(返してもらいたい)ときは、犬に「オスワリ」などの別の行動を指示したり、フードとの交換を行うようにします。
必要があれば、マズルを使って犬に咬傷事故を起こさせないようにするということも、飼い主さんの重要な務めです。
Step2:環境操作
Step1では犬が攻撃行動を起こさないようにしていきましたが、次に寄与因子をなくしていきます。これは、飼い主さんと犬が何気なく行っている行動に問題があることが多いので、「飼い主さんとその家族の生活習慣」を変えて「犬との関係性」を変えていく必要があります。
まず、犬との関係性の再構築のために、いつどのようにして犬と関わるのか、というルールを決めていきます。重要なポイントは
・犬と遊んだりトレーニングするときは犬の求めではなく、飼い主から始める
・犬とのかかわりを終了するときも、犬が止める(飽きる)前に飼い主から止める
・無意識のご褒美を一切やめる
・「オスワリ」「静かにしている」などの良い行動をしたときにだけご褒美を与える
・撫でたり、犬に直接触れることは避ける。犬に愛情を与えるときは、計画的にする
ということです。意外と犬の要求するままにおもちゃ、フード、自由時間、飼い主のアテンションなどのご褒美を与える方が多いのですが、これは一切行ってはいけません。犬が良い行動をしたときにだけ与え「稼ぐ」ようにしていきます。また、計画的にボディタッチを行うために、タイムスケジュールを作成していきます。
Step3.行動修正
ここまで準備ができたら、いよいよ行動修正を始めていきます。まず行動修正を行う際は、この攻撃行動を適切な行動に置き換えていく必要があります。例えばおもちゃを返してもらうとき、「吠える」かわりに「オスワリ」してもらいたいので、ベーシックトレーニングを徹底的に行います。トレーニングというのは「飼い主が何をしてほしいのかを伝える」という、犬とのコミュニケーション方法です。
トレーニングができている犬に対しては
・拮抗条件付け
・脱感作
を使って、今まで問題となっていた状況でも、適切な行動がとれるよう、何度も練習を重ねていきます。
Tips
これは行動の消去でご紹介している方法です。
5.まとめ
こうやって見ていくと、問題行動が発症してから改善していくのは非常に大変だということがわかっていただけるんじゃないかと思います。そのため早急に問題行動の芽を見つけて、ひどくなる前に改善すること、それから寄与因子となる環境や飼い主のかかわり方を避けるということが非常に重要です。
また、攻撃行動が出ているようであれば、早急にプロにご相談いただくことをお勧めします。いろんな飼い主さんのお話を伺うと、何がいけなかったのかがわかっていない、生活習慣のどこを変えなきゃいけないのかがわからない、なんてことがよくあります。なので、第三者に客観的にチェックしてもらうことをお勧めしています。お近くのトレーナーやビヘイビアリストの方にぜひご相談ください。
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