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ひと駅分の物語。 「夕虹」

 「夕虹」


カミナリ くわの実 すっぱい笑顔
雨つぶ あぜ道 折れた傘

遠くから ひびく電車の警笛に
遠くまで つづく夕焼け空山々

 いつから富士が見えなくなった
 いつから湯気が立たなくなった

夏の終わりの芙蓉の花が
独りぼっちを気付かせて

手もとに空の虫カゴと
足もと寄り添う影法師

家の裏木戸通り過ぎ
泣いてる野いちご
乗らない自転車
お祭り金魚の慈悲墓石
睨みをきかすミョウガの頭

小さなおでこに夕日を浴びて
友の呼ぶ声ふり返る
高き空には夕虹の門



あとがき
子どもの頃は、ビルもなく、空も広く、遠くまで見えて、もっと静かで。
そうそう駅の近くではアドバルーンもたびたび上がっていた。夕方になると、家々からは夕飯の支度を始めた合図として湯気も見られた。
その頃を思い出すと、なぜだか深呼吸をしたくなり、そして、その空気がとても美味しく感じられる。

小樽。
朝焼け。



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